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episode.30 援護二人組

 私はコンパクトを使い森のプリンセスに連絡を取った。

 彼女なら力を貸してくれるだろう、と考えて。


 近くで戦闘が起きているということもあり、私は上手には説明できなかったように思う。だがそれでも森のプリンセスは話を聞いてくれて。おおよその状況を察し、味方を派遣すると言ってくれた。


 そしてその時はすぐにやって来た。


「フレイヤ様! 参りました!」

「あーもう! 先に言われて腹立つのよ!」


 蝶と妖精が風を切りながら勢いよく飛んでくるのが視界に入った。


 通信から数分くらいしか経っていない。


 少し早く接近してきた蝶は人に姿を変えながらふわりと地面に降り立った。そしてその左肩に妖精が腰を下ろす。


 ウィリーとフローラ、もう見慣れた顔。


「あれが敵なのね!?」

「そうなんです」

「愛のプリンセスが危機的状況なの! 助けるのよ!」


 交戦する愛のプリンセスを見て、フローラはウィリーの肩から飛び立つ。

 その手もとにはいつの間にか弓が現れていた。


「愛のプリンセスさん! 援護するのよ!」


 フローラは勇敢だった。

 何の躊躇いもなく戦いの場へと突き進み、敵が射程距離に入るや否や連続で矢を放つ。

 フローラが放った矢はミクニではなくもう一人の女性に命中。女性は舌打ちをして一旦動きを止める。それによって、愛のプリンセスはフローラたちの存在に気づいたようだ。


「あーっ! 森プリの手下さんっ!」

「言い方っ……」

「加勢してもらえると助かりまーっす!」

「むむう……ま、まぁいいの。もう安心していいの! 援護するのよ!」


 心強さを感じてか、愛のプリンセスは表情を明るくする。

 そんな彼女に迫るミクニ。

 しかし愛のプリンセスはミクニの動きを読んでいたようで、武器が届きそうな距離まで接近するほんの一瞬前にピンク色の光線数本を一斉に放った。

 ミクニを援護しようと動きかけた女性にフローラの矢がぶつかる。


「行かせないのよ!」

「ちっ……、余計なことを……」

「させないのよ! 何ならアタシが相手してあげるの!」


 フローラは弓を構えたまま勇ましい言葉を並べる。

 女性の意識を逸らそうとしているのかもしれない。


「妖精ごときが……!」


 刺激するような言葉を浴びたからか女性は不快感に顔を歪める。そして視線をフローラの方へやる。今、女性の意識は、完全にフローラの方へと向いている。数秒の間の後、女性はフローラに向かって駆け出した。フローラは宙に浮いたまま矢を放ち続ける――が、そこへ女性の爪の武器が迫る。


 フローラは慌てて逃げる。

 しかしその背中に爪が命中した。


「きゃーっ!!」


 私は思わずフローラの方へ駆ける。そして合わせた二つの手のひらを差し出せば、背に傷を負ったフローラがふらふらと頼りなく飛びつつ降りてくる。手のひらの器に縋りつくフローラは青い顔をしていた。


「フローラさん! しっかり!」

「うぅ……痛いの……」


 四枚あるフローラの半透明の羽根は半分くらいが裂かれている。また、攻撃は背中にまで届いていたようで、華奢な背中にも傷ができ赤いもので濡れていた。


 見ているだけで痛いような状態だ。


 爪の武具を着用している女性は私の方へ向かってきている。彼女は私に対してでも躊躇なく攻撃するつもりだろう。いや、むしろ、それが目的で近づいてきているとも言える。

 攻撃されるなんて考えるだけでも恐ろしいことだが、今はとにかく怪我したフローラを守らなくてはならない。


「お覚悟を!」


 女性が私を狙ってくる。


「……っ!」


 手もとのフローラをドレスの中へ入れ、咄嗟に曲げた両腕を身体の前に出す。無傷でいるのはさすがに無理かと思われたが――想定外のことが起こった。腕の辺りにバリアが張られでもしたかのように、敵の武具が当たるのを防いだのである。


 私も女性もほぼ同時に驚いた顔になる。

 お互いこの展開は想定していなかった、ということだろう。


 女性の動きが止まった。この隙は逃さない。私は前方へ両腕を伸ばし、手のひらを向こうへ向けるようにして女性へかざす。空気で何かを押すような感じで動かすのだ。


 すると女性の身体は後方へ飛んだ。


 女性は狼狽えずすぐに対処してきた。靴と地面を擦り合わせるようにして後ろ向きに働く力を消す。


 しかし距離が取れたことは事実。

 その直後、付近にいたウィリーが杖の先を女性に向け、葉を大量に飛ばす攻撃を繰り出した。


「ウィリーさん……!」


 私と女性の間に入るウィリー。

 今はその背中がとても頼もしい。


「お任せを!」


 ウィリーは顔だけを振り返らせて眩しい笑みを浮かべる。


「あ、ありがとう。助かります」

「こういう時は頼ってください! 力になりますよ!」

「助かります……!」


 その時、鎖骨の辺りの僅かな隙間からフローラが顔を出してきた。胸もとの辺りで何かがもそもそと動く感覚があると思ったが、それはどうやら彼女の動きだったようだ。


「フローラさん、大丈夫なんですか?」

「ま、まぁ、ね……。一応生きてる、のよ……」


 フローラはその華奢な身体を引きずりながら、ゆっくりと私の体表を移動してくる。

 なぜだろう、引き裂かれていた羽根は若干だが元の状態に戻っている気がする。


「こう見えて……アタシちょっとだけ治癒能力もあるの……」

「そうなんですか」

「完治させるにはかなり時間がかかるけど……」


 そういうことなら、羽根の状態が変化したように感じたのもあながち間違いではなかったのかもしれない。


「良かった。飛べますか? もし飛べそうなら、ここは一旦退いて治療を」

「そ、それは嫌なの……! こんなことで退くのは悔しいのよ……!」

「でも」

「嫌なの! 逃げたくないのよ!」


 強く訴えてくるフローラ。

 頷きたいところだが今だけは頷けない……と考えていた、その時。


「フレイヤ様、こちら、一人片付きました!」


 ウィリーが女性を倒したことを報告しにきてくれた。

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