episode.137 共に
戦いは終わった。
今、私は、クイーンズキャッスルにて皆と共に同じ時間を生きている。
「フレイヤちゃんさん、生きていて、本当に良かったです……!」
「ありがとうございますアオさん」
杖のプリンセスのおかげで、ヨクとの交戦によってできた小さな傷は回復した。元々それほど派手な傷はなかったからかもしれないけれど、私の身は綺麗に元通りになった。
「あ、あの!」
「何でしょう?」
「実はお願いが……あるのですが」
アオはもじもじしている。
何か言いたいことがあるのだろうか。
「私の姉妹たちを、一体でも良いので、クイーンズキャッスルにて引き取ってくださいませんか……?」
「え?」
戸惑っていると、アオが一人の青髪女性を連れてくる。
「彼女なのです」
アオの隣には、彼女にそっくりな容姿を持つ青髪女性。
ただ、表情はまだ薄く、顔を眺めているとアオとは明らかに違う。
「たくさん余ってしまった彼女たちなので、どうか、そちらでも引き取っていただきたいのです。勝手を言って申し訳ありませんが……フレイヤちゃんさん、お願いします」
アオは頭を下げる。
「もちろん! 良いですよ」
断る理由はない。
アオより表情は薄そうだけれど、でも、それでも害を与えてくることはないだろう。
「よろしくお願いします」
青髪女性が挨拶をしてくる。
「こちらこそ。よろしくお願いしますね」
「はい、一生懸命働きます」
その後聞いて驚いたのだが、あの時こちら側に寝返った青髪女性らの多くが、森のプリンセスによって引き取られたそうだ。彼女は女性らを集めることを望んでいたそうで、ハーレムを作りたいわなどと冗談を言いつつ張り切っていたらしい。ちなみにウィリーは、これからその女性たちの森のキャッスルの掟を指導しなくてはならないそうで、準備をしているところだとか。彼もまた忙しくなりそうだ。
形は変わってゆく。
そこにある者たちも。
それでも、プリンセス・プリンスの役割は続き、キャッスルもまた引き続き世のために動き続けるのだろう。
しばらく経ったある時、盾のプリンスから連絡があって、彼がいるキャッスルへと向かってみると。
「クイーン、君に紹介したい者がいる」
盾のプリンスはそう言って一人の女性を示した。
「え……み、ミクニさん!?」
思わず声をあげてしまった。
というのも、その女性というのが、明らかにミクニそのものの容姿をしていたのだ。
黒に近い色みの長い髪も、大人びた整った目鼻立ちも、どこからどう見てもミクニその人であった。
「ミレニアよ、よろしく」
「え? え?」
手を差し出されるけれど、戸惑うことしかできない。
ミクニではなかったの? 似ている別人? いやいや、でも、他人とはとても思えないほど似ているし。でも違う名を言った? ならやはり他人?
戸惑いが大きくて手を握り返すことさえできずにいると。
ミレニアと名乗る女性は顔を私の耳もとへ近づける。
「ただいま、クイーンさん」
彼女はそう囁いた。
はっとして彼女の顔を真っ直ぐ見つめると、彼女は微笑みを浮かべる。
「ミクニさ……あ、いや、違った、ええと……」
「今は、ミレニア、よ」
「ああはいえっと……ミレニアさん、お久しぶり? です」
そこへ、盾のプリンスが口を挟んでくる。
「彼女は盾の遣いだったらしい」
「ええ! そうなんですか!」
思わず大きな声を出してしまって、慌てて口を押さえる。
笑ってごまかす。
「だが、母の日記に書かれていないことを思うと、かなり前に遣いとして働くことはなくなっていたのだと思う。遥か昔、いつか、あちら陣営へ行っていたのかもしれないな」
「そうでしたか……でも、確かにそうですね。今思ってみたら、武器も盾みたいなものがついていましたし、無関係ではなかったのかもしれません」
ミクニは消えてしまったものと思っていた、だからこんな形で再会できるとは思わなかった。
「……良かった、また会えて」
改めて、彼女の方を向く。
「そう言ってもらえると嬉しいわ」
そして、手を握り合う。
闇を抜けた先で、私たちはまた会えたのだ。
だが、ミクニ改めミレニアと再会を喜び楽しくじゃれあっていたところ、盾のプリンスにヌガーのような視線を向けられてしまった。
「交ざります?」
「いや、いい。三人ではしゃぎたいわけではない」
一応言ってみたが彼は乗り気ではない。
どうやら楽しく遊ぶのに参加したいわけではないようだ。
けれど、それからも、ミレニアと喋っていると盾のプリンスからの湿り気を帯びた視線を感じて。どうすればこの視線から逃れられるのか分からず、ただ、じっとり見つめられる外なかった。
「盾のプリンスさん、先ほどからこちらばかり見ているようですが……何かご用でしょうか」
「いや、その、ただ楽しそうだなと」
「入りたいのですか?」
「違う……」
何か言いたげだが、なかなかはっきりと言ってはくれない。
何というか、はっきりしないので、どうしてももやもやしてしまう。言いたいことがあるなら言えば良いのに、と思ってしまって。
「プリンスさん、何か言いたいことがあるならはっきり言ってください」
つい、口調を強めてしまう。
「……し、しかし」
「言いたいことがあるなら躊躇わないでください」
そう言うと。
「これからも、盾として、共にいさせてほしい」
彼はそう言葉を発した。




