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乙女ゲームに異物混入  作者: 岩切 真裕
【番外編】主人公たちの結末

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あの後、2人は……

大変、お久しぶりです。

あの直後の2人です。

▶【To Be Continued】


****


 わたし「宮本(みやもと)陽菜(はるな)」は、何の特別な能力もないどこにでもいる普通のOLである。


 だが、ある日、突然、何の前触れもなく、異世界に意識だけ飛ばされることとなった。


 そして、その世界で選ばれた神子の身体に入り、衰退に向かっている人類を救うために奮闘し、やがて後の世に「救いの神子(みこ)」と呼ばれるほどの「聖女」となったわけだが……、現実世界に戻った後もその縁が続いている。


「タイミングが悪すぎる……」


 そう項垂れるのは、同じ異世界憑依仲間、「境田(さかいだ)(ひかる)」。

 彼も、その「救いの神子(みこ)」の身体に入り込んでしまった一人である。


 「彼」という言葉通り、見た目も性別も「男性」。


 それなのに、乙女ゲーム「救いのみこは神様に愛されて!」、略して「すくみこ!」に類似する世界のヒロインの一人の身体に意識だけが入り込んでしまったのだ。


 そんな彼は、今、落ち込んでいる。

 ()()()()()()で。


「えっと……、ごめんね?」

「いや、この場合、陽菜は何も悪くない。強いて言えば、タイミングが悪かっただけで、誰も何も悪くない」


 そうは言うものの、その表情から気にしていないとは、とてもではないが思うことができなかった。


 いや、同じような状況になったら女性が一方的に責められることもあると聞いたことがある。

 それと比べたら、わたしはかなり恵まれているのだろう。


 理解のある、か、彼……、彼氏がいることは幸運だとも思う。


 ああ、駄目だ。


 未だに彼氏というものに慣れない。

 心の中で思うだけでも照れがある。


 わたしの方が年上なのに。


 でも、仕方ないではないか。

 彼氏なんて、恋人という存在なんて、生まれて26年で初めてなのだ。


 先ほどまで読んでいたあの少女漫画の主人公のように、わたしの男女交際の参考資料は、漫画や小説である。


 いや、その少女漫画の主人公は、モテモテだったから、わたしと状況が違い過ぎるけど。


 ほぼスパダリと言って差支えのない兄弟から二十四時間年中無休で守られている自称平凡な女なんて、現実世界には存在しないと思う。


 それだけの主人公ってこともあるけど、あの主人公って、本当に自己評価が低くて、何度かイライラしたのはわたしだけだろうか?


 いや、それは本当にどうでもいい。

 今、問題なのは、わたしたちの間にある、この何とも言えない空気だ。


 だけど、わたしには本当にどうしたら良いか分からないのである。


 こんな問題に直面したことがないのだ。

 男女交際の経験がないために、こんな時、彼になんと言葉をかけるのが正しいのかも分からない。


 何故なら……。


「こんな時に、生理になってごめんね」


 わたしが生理になってしまったからである。


 いや、健康な女なのだから、月に一回3日から一週間ほどの間隔で、身体の中からドロリとした血液が出てくることはおかしな話ではない。


 そんなことは中高生を超えた男女なら一般常識として備わっている知識だろう。


 問題はタイミングだ。


 つい先ほど、互いに「好き」だと伝えあい、めでたく正式な彼氏彼女という関係になった。

 友達付き合いのような曖昧だった関係に、ついに終止符が打たれたのだ。


 そうなると、お年頃の、それも成人を超えた男女なら、そういった関係になってもおかしくはない。

 婚前交渉に眉を顰められる時代は終わっている。


 まあ、デキ婚……、授かり婚に関しては、今もいろいろ言われるけど、それでも親世代ほどの嫌悪感はないだろう。


 順番が違うだけだ。


 だから、その……、経験はなかったし、口ではいろいろ抵抗していたけれど、わたしとしても吝かではなかった。


 気持ちを口にし合ってから、その日のうちにそんな関係になろうなんて、軽いとか身持ちが悪いと思われるかもしれないが、彼との付き合いは、現実世界はともかく、感覚的には5年もある。


 それも、意識だけが、異世界に行って5年も競い合い、協力するという稀有な体験をし合った仲だ。


 だから、わたしも本当に覚悟を決めたのだ。

 こういうのはタイミングだとも思っていたし。


 それなのに、生理。


 それでも、そういったことはできるかもしれないけど、初心者にはかなりハードルが高い話である。


 あの少女漫画の主人公ではないけれど、全国の妙齢の女性に聞きたい。

 こんな時、どんな対応が正解ですか!?


「まあ、なってしまったものは仕方ない。身体を(あった)めておけ」

「へ?」


 季節は春を過ぎ、初夏と言える時期である。

 大分温かくなってきたので、身体を冷やすことはまずないだろう。


「陽菜は温かい茶か? 白湯か? ココアも良いらしいぞ。陽菜の好きな珈琲と濃いお茶はカフェインが多いから止めとけよ」

「詳しいね?」


 生理中ってカフェイン良くないのか。


「生理中にイライラした()()()()()()()()()()()()()()、我が身を守るために調べるし、嫌でも詳しくなる」


 ……その言葉にムッとした。


 これまで男女交際というものをしたことがないわたしと異なり、彼は男女交際経験があると聞いている。


 もう21歳だ。


 絶世の美形ではないけれど、そこそこモテそうな容姿と性格を持つ人だから、これまでに付き合った女性は、1人や2人ではないだろう。


 だけど、それを一応、今の彼女となったわたしの前で言うのは無神経じゃないかな!?


「すっげ~、()()()()()()()なのは分かるけど、般若って姉貴のことだぞ?」

「へ? あねき?」


 あねきって何だっけ?

 兄貴とは違う生き物。

 それが姉貴。


「姉貴って……、お姉さん?」

「そう。5学年上の姉貴。2学年下の妹もいるぞ」

「なんで学年単位?」

「オレが早生まれだから、その時点の年齢差で説明すると、姉貴がうるせえんだよ」


 心底、嫌そうにそう言った。

 どうやら、お姉さんは気が強い系女子らしい。


 そして、その学年差からわたしと同年代だ。

 5学年差で早生まれの弟。


 うん。

 いろいろ言いたくなるお姉さんの気持ちはよく分かってしまう気がした。


「まあ、その姉貴がいたから、オレは陽菜に会えたのかもしれんとも思う」

「そうなの?」

「オレが()()()()()()()を読んだのは、姉貴が持っていたからなんだ」


 それがなければ、わたしたちの出会いはなかった?


 どうだろう?

 いや、確かになかったかもしれない。


 少なくとも、この少女漫画の影響を受けた青年には会えていないだろう。

 先ほどまで読んでいた少女漫画に目を向けながらそう思った。


「じゃあ、お姉さんに感謝だね」

「あの女に感謝なんかしなくて良い」


 不機嫌な声。

 でも……。


「お姉さんがいなければ、あなたは()()()()()()()()()()()()()()()()()んでしょう? その可能性を潰してくれたんだから、やはり感謝しても良いと思うよ」


 少なくとも、わたしはそう思っている。


「陽菜」

「ん?」


 彼がじっとわたしを見た。

 自分に向けられたその黒い瞳に、胸が大騒ぎを始めた。


 ロックバンドのドコドコ音楽のように早くて力強い音に、自分の方が驚いている。

 激しい運動した後でもないのに、胸ってこんなにも騒ぐことができるものなのか。


「キスしたい」

「突然だね!?」

「突然だから、伺いを立てているんじゃねえか。いきなり強引なのは陽菜にとって()()()()んだろ?」


 そこで、また一つ思い出した。

 わたしと彼があの世界で初めて会った時のこと。


 初対面のわたしはいきなり彼に唇を奪われてしまったのだ。


 いや、「わたし」も「彼」も、ちょっと違うな。

 魂はともかく、()()()()()()()()()()のだから。


 そして、現実のわたしたちは、まだキスもしていなかったりする。

 いや、だって、さっき「好き」って言われたばかりなんだよ?


 無理でしょう?

 喪女(もじょ)、なめんな!!


 年齢=キスもまだ……ですが、何か!?


「駄目か?」


 上目遣いに弱いのは男性だけではないことをわたしは今、初めて知りました。


 何? これ?

 可愛い!!

 

 21歳に使う言葉ではないと思うけれど、5歳も年下の彼なら問題ないと判断する!!


 え?

 でも、なんて、返事すれば良いの?


「駄目……じゃない……です……」


 そして、何故か敬語になってしまった!?


 ああ、わたしは今、かなり発熱している。


 恥ずかしい!!

 すっごく、恥ずかしい!!


 だけど、羞恥の余り顔を伏せたそんなわたしを見て……。


「耳、真っ赤」


 彼は揶揄うようにそう言う。


「そんな言い方……」


 わたしが抗議しようと顔を上げた時……。


「んっ」


 見事に口を封じられてしまった。

 文字通り。


 凄く近くに二ヶ月もの間、決して少なくない頻度で見てきた彼の顔がある。

 いや、ここまで近いと顔なんてよく分からないけれど。


 あれ?

 キスする時、わたしの方は目を閉じなくても良かったの?


 そんなどうでもいい感想が最初にあった。


 そして、この人は、いつも、すぐ思い立ったら行動する人だったことを思い出す。

 あの世界で、何度もソレを見てきた。


 一生懸命で、努力家で、真っすぐで、行動的で、わたしが迷った時もぐいぐい引っ張ってくれる見た目は乙女ゲームのヒロインなのに、まるで少年漫画のヒーローのような青年(男性)


 初めてのキスは衝撃的だったけど、その後、ちゃんと謝ってくれた。

 最後のキスはよく覚えていないけど、ラシアレス(わたし)は凄く幸せだったことだけは、忘れていない。


 そして、今。

 お互いに本来の身体で、初めてキスをしている。


 そのキスが長かったのか、短かったのか。

 よく分からない。


 ただ、はっきり分かることは……。


「あ……」


 彼の唇が、わたしの唇から離れたことが分かった時、少しだけ淋しく思ってしまっただけ。


「そんな顔をするなよ」


 顔こそ見えるものの、まだ近い距離で、そんなことを言われた。


「そんな顔? どんな顔?」


 物欲しそうな顔でもしてしまっただろうか?

 それは恥ずかしい。


 でも、淋しいと思ってしまったのは事実だ。


「すっげ~、可愛くてオレがこれ以上、()()()()()()()()()()


 そんな台詞を彼は嬉しそうに口にした。


 そんな言葉、少女漫画だけはないんだね。

 いや、彼は少女漫画の愛読者だったっけ。


 それなら、本来は女性にとって言われて嬉しい言葉もいっぱい知っているのだと思う。

 この少女漫画だけでも、本当にそんな台詞で溢れていたから。


「陽菜が生理中じゃなければ、もうとっくに押し倒している」

「酷い言葉」


 それでも、彼はそんな言葉を吐く。


 本当に酷い。

 そして、品もない。


 だけど、そこにはわたしに対する気遣いはある。


「押し倒した方が良かったか?」

「それは困る」


 まだ初日だけど、生理中はいろいろ気になることが多いのだ。

 正直、この距離も、血を含めた生理中の独特な臭いとかが伝わりそうで嫌なのに。


「まあ、一週間ぐらい我慢するよ」


 一週間しか我慢してくれないらしい。


 違う。

 これは予告だ。


 一週間後、覚悟しておけという()()

 わたしは、それまでに心の準備をしておかないといけないらしい。


「光。一応、言っておくけど……、わたし、未経験だからね?」

「それについては、聞いたから、知ってる。キスも陽菜の身体では初めてだろ?」


 あの世界で言ったことがあるらしい。

 わたしはそこまで覚えていない。


 彼は、なんで覚えているのだろう?

 自頭の違い?


 彼はエッチだけど、頭は絶対、良い。

 エッチだけど。


「オレも言っとくけど、普通の男に、その少女漫画に出てきた護衛弟のような鋼の精神と理性を期待するなよ? 十代から二十代の男なんてほとんどサルだからな?」


 確かに例の少女漫画に出てきた主人公の護衛をしていた青年は、本当にとんでもない理性の塊だったとは思う。


 経験が全くないわたしでも、あの青年が鋼の精神でいろいろ耐えきっていたことが分かるぐらいだったし。


「だから、一週間後、覚悟しておけよ?」

「お、お手柔らかにお願いします」


 わたしとしては、そう返事するしかなくて。


 まあ、その後の話については、また機会があれば……、かな?


*****


 【To Be Continued】

▶【Pure End?】

  【Read Again】

 久しぶりにこの2人を書きました。


 この作品については、既にもう「乙女ゲーム」から外れているので、書くのはともかく、投稿することについては躊躇う部分はあったのですが、今もブックマーク登録をしていただいている心の広い方々のために投稿しました。


 続きについては、まあ、本当に機会があれば……ですね。

 またしれっとなんでもない日に投稿するかもしれません。

 別視点の方が完全に止まっておりますが、こちらはもう少しお待ちいただければと思います。


 今もブックマーク登録を続けてくださる方、これまでに評価や感想をくださった方、そして、今回お読みいただいた方、本当にありがとうございました!!

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別視点
少女漫画に異質混入
別作品
運命の女神は勇者に味方する』も
よろしくお願いいたします。

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