その後、2人は……
大変、長らくお待たせいたしました。
あれからの2人です。
▶ 【To Be Continued】
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わたし「宮本陽菜」は、何の特別な能力もないどこにでもいる普通のOLだった。
だが、ある日、突然、何の前触れもなく、異世界に意識だけ飛ばされることとなる。
そして、その世界で選ばれた神子の身体に入り、衰退に向かっている人類を救うために奮闘し、やがて後の世に「救いの神子」と呼ばれるほどの「聖女」となってしまった。
……それだけ聞くとイタい妄想癖を持つ女だ。
そして、自分でもイタいと思う。
26歳にもなって、何、言ってんだ? こいつって思う。
でも、仕方ない。
これは本当にあった出来事と言うしかないのだから。
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「一番、簡単なのは『アルズヴェール』なのか。いろいろ複雑だな」
目の前にいる黒髪、黒縁眼鏡の青年は眉間に皺を寄せながらそう言った。
「主人公その1である『アルズヴェール』は元からハイスペックだからね。全体の能力が高いから、いろいろ上がりやすいんだよ」
「主人公その1って言うなよ」
「主人公候補が7人もいたら、そう言いたくもなると思わない?」
「分かるけどさ~」
この青年の名前は、「境田光」。
彼も、その「救いの神子」の身体に入り込んでしまった一人である。
「彼」という言葉通り、見た目も性別も「男性」。
それなのに、女性の身体に意識だけが入ってしまったのは、彼にとってもいろいろ複雑な状況だったらしい。
何せ、その世界は乙女ゲーム「救いのみこは神様に愛されて!」、略して「すくみこ! 」に類似していたのだから。
さらに、入り込んだ身体は乙女ゲームの主人公の一人によく似ていたわけで、恋愛対象はどうしたって男性となる。
しかも、誰が見ても納得の美少女だった。
つまり、見た目が魅力的な美少女である以上、殿方から日常的に口説かれることは避けられなかったらしい。
その当時、その口調はともかく、外見は立派に美少女していたから、そこまで深く考えなかったけれど、こうして、実際の彼を見ていると、確かに気の毒だと思う。
そして、彼のおかげで、わたしはあの世界のことを思い出すことができたのだ。
彼と再会しなければ、あの世界の出来事を夢と思うことすらなく、記憶からも綺麗さっぱり消去していたことだろう。
彼とは、自分の誕生日に再会した。
その仕組まれたかのような偶然は、まるで、「すくみこ! 」の元となった少女漫画の原作主人公のようである。
その主人公も、自分の誕生日に幼馴染と再会し、様々な運命に導かれて「聖女」となるのだから。
いや、原作主人公の方はある意味、その再会は仕組まれていたみたいだけど。
そして、この目の前にいる青年は、一応、その、わたしの、……彼氏……らしい。
いや、違う!!
まだお互いに交際宣言をしていない。
この世界に来てから、「好き」とも「付き合ってください」とも、まだ言っていないのだ。
ちょっとそれっぽいことは言われた気はするけど、わたしはちゃんと返事をしていないし、何より、あれを告白とは認めない!!
つまりは、友達!!
あの再会から二ヶ月。
たまに、わたしの家に来て、かなり古い乙女ゲームの話をしていようとも、勢いで買ってしまった長編少女漫画を語り合おうとも、この状態を男女交際しているとは言い難いのだ!!
確かに「会いたかった」と言われた。
そして、「可愛い」とも言われている。
それでも、わたしは「互いにフリーだから何も問題ないよな? 」という言葉を告白と見なさない。
喪女も26年やっていると、警戒心と猜疑心だけが無駄に強くなってしまう。
何も夢と浪漫に満ち溢れた少女漫画のような告白をして欲しいわけではない。
それでも、ちゃんとした形を求めたくなってしまうのはおかしいだろうか?
うん。おかしい。
それぐらい分かっている。
いい年して、何、乙女ぶってんのかとも思う。
自分の中に、微かながら残っている乙女成分と、冷静に現実を見ようとしている26歳の女がいつも、こんな感じで喧嘩をしていた。
「随分、違うよな。神さまの外見とか」
「そうだね。実際、会った人たちはもっと……目に痛かった」
フルCGのキラキラしさを凌駕するほどの立体感。
やはり二次元と三次元世界は大きく違うと思う。
「それに……原作では大陸の守護神って、確か、無性なんだよな」
「むせい?」
「変な想像するなよ?」
「変な想像?」
「……いや、オレが悪かった」
彼との会話は時々、こんなことがある。
この点に関しては、ネット用語とか、若者言葉にそこまで詳しくない不勉強なわたしが悪いのだろうけど。
こんな時、5歳の壁の厚みを感じてしまうのだ。
彼は、バイトをしているけど、まだ大学生である。
年下かつ年齢の差はあっても、ちゃんと成人はしているから、青少年保護育成条例には引っかからない点だけは良いかもしれないけれど、やはり5歳差って大きいと思う。
しかも学生と社会人。
わたしから踏み出すことができないのはこの辺りにあるのだ。
「大陸の守護神には性別がないって表記がどこかにあった気がする」
「性別がない?」
ああ、「むせい」って、「無性」のことか。雌雄の区別がないってやつ。
あまり、日常的に、しかも人型には使わないからすぐには出てこなかった。
「でも、ヤツら、生えてたよな?」
「生えてたって、……毛?」
男女の別なく、髪の毛や眉毛、睫毛などは生えていてもおかしくはないだろう。
でも、わたしが入った身体は、19歳という年齢を越え、20歳を目前としても、腕や足やその他の部分に産毛すらなかった。
脱毛要らずのあの身体は酷く羨ましい。
「違う」
そう言って耳打ちされる。
さらに続く、その耳を擽る囁き声から発せられた、日常的に使うはずのない言葉に、思わず、顔が羞恥で赤く熱をもったことだけは分かった。
「この変態!!」
もしくは小学生か。
いや、これはもう幼児扱いでも良い。
「いや、男としてはかなり重要なモノだぞ?」
「知らんわ!!」
26年生きてきて、父親以外のモノを見たことなんかない!!
「見なかったのか?」
「見てない!!」
なんてことを言うんだ、この男は……。
「それなら、良かった」
「へ?」
わたしはみっともなくも叫んでいたと言うのに、何故か、安心された。
「あの時、オレはちゃんと間に合ったってことだからな」
そう言って微笑まれて……、また一つ。
あの世界での出来事を思い出す。
「あ……」
わたしの身体に震えが走った。
彼が言う「あの時」。
それは、間違いなく神子がその務めとして、神と交わらなければならなかった日のことだろう。
ほとんどの神子がその務めを果たしたらしいが、わたしともう一人の神子だけその務めを果たすことができなかった。
だけど、それを受け入れることができなかったわたしは、その状況が怖くて、神さま相手に抵抗して、そして……、彼によって助けられたのだ。
彼自身は、男性でありながら、その運命を受け入れたのに……。
「まあ、あの時は真っ暗過ぎて、どちらにしても見えなかったか。見えてたら、いろいろ、無理だったよな」
彼自身は、何でもないことのように言っているが、そんなに単純な話でもなかった。
あの日は、世界が完全に闇に閉ざされた。
原作にも、「すくみこ! 」にもない話。
そんな中で、彼はわたしの所へ来てくれた。
あの時の彼は……姿が見えなくて、わたしへ呼びかける声も高かったのだけど、間違いなく世界中のどんな男性よりもかっこよかった。
贔屓目、欲目?
上等である。
あれほどの状況で、我が身よりもわたしの方を優先してくれるような男性に、心を動かされないはずがない。
「だけど、あの日、オレが言った言葉に嘘はないぞ」
「言った言葉?」
何を言われたっけ?
「オレは、お前が好きだ」
その言葉に発火するかと思った。
一瞬で、脳が沸騰したのか、頭がくらくらする。
でも、それは仕方がない。
望んでいた言葉を、何の前置きもなく言われてしまったのだから。
「その時、陽菜が言った言葉を覚えているか?」
「へ?」
わたし……、何を言ったっけ?
「『いつか、元の世界に戻ると思うから、その時にもう一度、考えて』と言われたんだ」
そんなこと、言ったっけ?
わたしは、彼ほど明確にあの世界のことを覚えていないのだ。
逆に……、何故、彼はここまで覚えているのかが不思議でならない。
でも、わたしならそんなことを言いそうな気はした。
現実で、わたしとまた出会っても、同じ気持ちでいてくれるとはどうしても、思えなかったのだろう。
「オレはこの世界に戻ってからは、陽菜ともう一度会うことしか考えられなかった」
そう言って、ヒカルは微笑む。
「それがオレの答えだ、陽菜」
ごん。
目の前のテーブルで思いっきり頭を打った。
「は、陽菜!?」
ヒカルが慌てる声が聞こえるが、こんな茹でダコ状態になってしまった顔をあげることなんかできるはずがない。
26歳にもなって、5歳も年下の大学生の言葉なんかに振り回されるなんてどれだけ、耐性がないのだろうか。
でも、仕方ない。
好きなものは、好きなのだ。
年齢とか、立場とか、外見とか関係なく、その中身が好きなのだ。
そうでなければ、外見美少女だった青年に、異世界でも現実でもここまで振り回されることもなかっただろう。
熱をもったままだが、ちゃんと顔を上げて、彼をまっすぐに見た。
そして、素直に認めよう。
「わたしも、好きだよ、光」
彼からそう言わされてしまうほどには、深みに嵌められた自分の心を。
だけど、ここで綺麗に終われないのがわたしたち。
「本当か?」
「本当だよ」
「嘘偽りないか?」
「こんなことで偽ったことはないね」
何故か、何度も妙に確認される。
そして……。
「それなら、陽菜も今のオレの姿に慣れたようだし、そろそろ、もう一つの宣言を果たして良いか?」
「へ?」
彼の目に肉食獣の光が宿ったのは気のせいか?
「オレは、『もし、会うことができたら、オレは滅茶苦茶、抱くからな』と言った」
「はいっ!?」
そ、そんなこと言われた覚えが……、ある。
また記憶が上書きされたみたいだ。
でも……。
「加えて、『ここで、お預けさせたことを後悔するぐらいに、抱きまくるからな』とも言った」
「なんで、そんなに細かく覚えてるの!?」
「男だから!!」
「そんなところで胸を張るな!!」
わたしは顔を真っ赤にして叫ぶしかなかった。
その後、わたしたち2人がどうなったかは……、誰にも、何も語るまい。
だから、当事者たち以外は、神のみぞ知る話となった。
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【To Be Continued】
▶ 【Happy End?】
【Read Again】
これで、一応、本作品は完結となります。
少しだけ、この2人については、書き足りない部分はある気がしますので、もしかしたら、またしれっと、投稿する可能性はありますが……。
ここまで、長く続けられたのは、ブックマーク登録、評価をしてくださった方々、感想をくださった方々とお読みくださっている方々のおかげです。
本当にありがとうございました!!




