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乙女ゲームに異物混入  作者: 岩切 真裕
【第6章】乙女ゲームのシンカ

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大陸の隠し事

 いきなり、金髪美女から……。

「オレのこと、どう思っている?」

 と、聞かれました。


 あなたはどう答えますか?


1.大好き!

2.は? 何、言ってんの? 正気?

3.世迷言を言うなよ

4.ごめん、聞こえなかったからもう一度言って?


 そんな謎「選択肢」が頭を過(よぎ)った。


 こんな所で乙女ゲームっぽさを発揮されても困るし、2と3の選択肢(こたえ)は似ている上、答え方としてはかなり酷い。


 そんなわけで選んだのは……。


「それはどういう意味で聞いてる?」


 選択肢5を創り出す!


 何にしても、質問の意図が分からない以上、下手な答えは地雷でしかない。


 まず彼の問いかけが漠然としすぎていて、「LIKE」や「LOVE」的な意味であるかどうかも分からないのだ。


 いや、普通の乙女ゲームだったら告白につながるフラグを立てるものだろうけど、生憎と、これはゲームではない。


 そして……、アルズヴェールは確かに乙女ゲームのヒロインであるが、中の人はそのプレイヤーですらないのだ。


「ああ、見た目の話だ」

 アルズヴェールは、その綺麗な金髪を何故か乱暴に掻きむしる。


 髪の毛が痛む! と思ってしまうのと同時に、背後に、茶色の髪の男の人の姿が見えた気がして、彼女の後ろを凝視してしまった。


「見た目? 外見って話?」

「そう、外見。ハルナの眼には、この世界のオレの姿はどう映っている?」

「金髪の美女。『すくみこ! 』のメインヒロインが4年経過した姿」


 わたしが覚えている「すくみこ! 」も、15歳スタートから、ヒロインたちの立ち絵はちゃんと成長した覚えがある。


 女性の成長と言うこともあって、その差は僅かではあるけれど、背が伸びたり、痩せたり、胸が成長したり、分かりやすいのは髪型が変化したり、と様々だった。


「美女……」

「ヒロインが男性だといろいろ問題だよね?」


 世の中には「男の娘(こ)」と呼ばれる存在もあるらしいが、純粋な乙女ゲームである「すくみこ! 」にはいなかった。


「ヒカルの眼には、わたしは『ラシアレス』。つまり、小柄で愛らしい女性が映っているのでしょう? それと同じだよ」

「……あ? ああ、なるほど」


 残念ながら、「宮本陽菜(現実のわたし)」はこんなに小柄で胸が大きくて可愛らしくはなかった。


 元の世界にいた「宮本陽菜(現実のわたし)」は、どこまで行っても平均、並の女でしかない。


 少しだけ変わった所と言えば、左腕の黒子の並びが北斗七星に見えなくもない……、ぐらいだった。


「でも、なんで、そんな今更な質問をするの?」

 鏡を見ればすぐに分かることだ。


 それにこの世界に来て5年目。既に4年は経過している。


 そんな決して少ないとは言えない年月。

 ずっとその姿で過ごしてきたのに、何故、確認するのだろうか?


「オレの……火の大陸の神官が何かを隠している気がするんだよ」

「はあ……」


 神官たちは、それぞれの大陸で生きる人類と、神様の力を借りる「神子」の仲立ちをしてくれている存在だ。


 だけど、大陸育成の手伝いをしているだけの「神子」様に、人類の全てを話してくれるとはわたしも思っていない。


 特に人類たちの犯罪など、神様たちに見せたくもないものは隠そうとするだろう。

 誰だって臭い物には蓋をしたいだろうから。


「そのことと、あなたの外見がどんな関係があるの?」

 問題はその繋がりだ。


 アルズヴェールに隠し事することと、その容姿になんの関連性も見いだせない。


「若い女たちの死因を……、『神子』であるオレに伝えない理由だよ」

「ああ、なるほど」


 若い女性が以前より多く亡くなっている。


 その理由、原因を同じ年代に見える若い神子様に、神官が伝えないのは何か理由があるのではないか?

 アルズヴェールはそう考えているのだろう。


 確かにその死因によっては、普通の女性ならショックを受けないとも限らない。


 アルズヴェールは中身、男性だけど、見た目はしっかり女性なのだから、それを知らない神官が気を使う可能性は否定できないね。


 だけど……、気のせいだろうか?


「ヒカルは……、その原因に心当たりがあるの?」

「え?」

 なんとなくそんな気がして尋ねてみた。


 だけど、彼にとってその質問は意外だったのか、目を見張ってわたしを見る。


「いや……、さっきの話って、自分が『女性』の外見をしているから、神官が若い女性の死因を話せないって考え方だよね?」


 だけど、「神子」なんて神様に仕える人間相手に死に繋がる「穢れ(死 因)」を話したくないって神官の心遣いという可能性もある。


 でも……、彼の口ぶりはそんな感じではなかった。


「それって……、ヒカルがその死因について何か知っているんじゃないかなって思ったんだ」

 そう例えば……、「原作」にそんな感じの表記があった……、とか。


 時系列がどうなっているのかはともかく、「すくみこ! 」は、もともと原作の遥か昔の話という設定だったはずだ。


 原作の主人公たちが生まれるずっと前。

 一度は滅びかけた世界を救った7人の「神子」たちの物語。


 確かに「原作関係ねえ! 」という話だったけれど、本当に全く関係なくはなかったと聞いている。


 ところどころ、原作を思い出させるような設定が匂わされていて、それを探すのも楽しみの一つだったらしいし。


「……心当たりは……、ある」

「あるの!?」

 戸惑いがちに答えたアルズヴェールの言葉に、驚きを隠せなかった。


「だけど、その核心が持てない」

「それは……、原作の話?」

 アルズヴェールは何故か辛そうに頷いた。


「原作でも賛否が分かれた場面(シーン)だ。オレも、あれは納得できなかった」

「何? 病気じゃないの?」


 原作にもそんな描写があった?

 しかも、読者が賛否両論となるような話?


「もし、オレが考えている通りのことが原因だったら……、女たちの死因は、恐らく、自殺だ」

「自殺!?」


 思わぬ理由につい叫んでしまった。

 病死ではなく、寿命でもなく、若い女性が自らの意思で死を選んだと言うこと?


「それなら……、若い女が多く死んでいる理由も納得できるんだよ」

「ど、どういうこと!?」


 どれだけのことがあれば、そんな事態になるのか?

 そして……、それなら周囲にいる人間は何故、止めないのか?


 多くの若い女性が死を選ぶと言うのなら、なんらかの形でその予兆があったはずだ。

 理由もなく集団自殺と言うのなら、洗脳を疑うレベルの話だろう。


「原作では『神の意思』とされていた」

「『神の意思』? 女性たちの自殺が?」


 でも、それはおかしい。


 今回、「神子」たちが集められたのは、人口減少に向かっている人類を救うためだったはずだ。


 それが、「神の意思」というよく分からない事象によって、出産率を上げるために不可欠な若い女性を死に追いやるなんて、矛盾しているだろう。


 まさか……、「人類滅べ! 」という、別の神の存在が……。


「いや、女の自殺は間接的なものだ」

「へ?」


 わたしの暴走を始めた思考を、彼は中断させた。


「神が、『神子(オレ)』たちの方法とは別の手段で人類を増やそうと画策したこと。それが……、今、各大陸の人類たちの身に起きている可能性がある」

「別の手段……?」


 そんな曖昧な表現ではよく分からない。


 確かに、神たちも様々な手段で人類の人口を増やそうとしていた……と説明はあったけど、それが結果として若い女性の自殺に繋がるって……なんか変じゃない?


「ただ……、それがハルナの大陸で起きていないことは逆に不思議でもある」


 確かにわたしがお手伝いをしている風の大陸は、人口の極端な増加もないが、若い女性の死が突出もしていない。


 それって……、わたしの大陸には「神の意思」が働いていないってこと?


「その別の手段って……、はっきりとしたものがあるの?」

 神の意思……、不思議な力……、って目に見えなかったら、分からない。


「もし、本当にオレが考えていることが原因なら……」

 アルズヴェールは、顔を伏せて……、小さく、呟くような声を絞り出した。


「原因は『発情期』だ」

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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別視点
『少女漫画に異質混入』
別作品
『運命の女神は勇者に味方する』も
よろしくお願いいたします。

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