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乙女ゲームに異物混入  作者: 岩切 真裕
【第6章】乙女ゲームのシンカ

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ゲームとの違いが……

この話から第6章です。

よろしくお願いいたします。

 気が付けば、4年が経過していた。


 長い夢から覚めたかのように、いきなり元の世界に戻れるかもとどこかで期待していた一年目。


 気が付けば、身近にいる見た目美少女、中身はチャラそうな男性に惹かれている自覚をした二年目。


 乙女ゲームの世界と、現実の齟齬と合致に戸惑いつつもなんとか受け入れようと頑張った三年目。


 いろいろ悩んだ所で仕方ないと悟りを開いた四年目。


 そして……、今、5年目に入った。


 乙女ゲーム「救いのみこは神様に愛されて! 」、通称「すくみこ! 」の最終年度でもあり、7人の「みこ(ヒロイン)」たちが、それぞれ20歳になる年でもある。


 この世界では、時間的な制限はないと説明されていたけど、わたしはゲームの設定と同じように、この年で終わる可能性が高いと思っている。


 でも、その後、どうなるのかが分からない。


 素直に元の世界に戻されるのか?

 それとも……、このまま、「救いの神子」として、この世界で生きていくことになるのか?


 7人の神子のうち、既に相方の神様と仲良くなってしまった「神子」たちは、元の世界に未練がない人もいるだろうし、5年経ったら「バイバイ」と分かっているから、ゲーム感覚で楽しんでいる人もいるだろう。


 わたしは……、元の世界に未練はある。

 溜まっていた仕事も気になっているし。


 でも……、元の世界に戻って……、あの人以上の出会いがあるだろうか?


 自分の理想とは程遠い人。


 だけど……、最初の衝撃的な出会いから何度も繰り返し、会話をしていくうちに、少しずつ「ただの軽い男」から、「軽い言動だけど実は真面目な男性」に変わっていったことはよく分かる。

 それでも、この身体にしたことは簡単に許せることでもなかったのだけど。


 でも、あれから4年以上経っているのだ。


 わたし自身はそこまで傷つかなかったこともあって、彼との出会いを思い出す時ぐらいしか気にならなくはなっていた。


 それでも、借り物の身体である以上、今もどこかに申し訳なさはある。


 さて、五年目が開始された。

 果たしてどうなるのだろうか?


 乙女ゲーム「すくみこ! 」なら、恋愛ルートを選んでいたなら、追い込みの如く攻略対象とのイベント盛りだくさんの年である。


 育成ゲームとしても、そこそこイベントがあった気がするが……、その辺りの記憶はさっぱりない。


 いや、乙女ゲームなら素直に恋愛ルート選ぶよね?

 しかも、ヒロインごと、攻略対象ごとにCGもシナリオもあるわけですよ?


 そりゃ、全部見たければ気合入れて頑張りますよね?


 その結果……、初期にやった育成ルートシナリオを綺麗さっぱり忘れてしまうのも已む無しというやつで……、それも、10年以上……、いや、15年以上昔の話ですよ?


「だから、仕方ない!」

 わたしは拳を握ってそう叫んだ。


「まあ、オレも、15年前のRPGのシナリオの詳細を思い出せと言われたら困るけどさ」

 目の前の美少女はどこか呆れたように溜息を吐いた。


 うん。

 出会ってから何年経っても美少女……、いや、美女だよね、アルズヴェールって。


 でも……、それにちゃんと磨きがかかっている気がするのは、決してわたしの気のせいではないだろう。


 自然に任せず、髪も肌も手入れしていることがよく分かる。


 付き人であるロメリア嬢の努力の賜物か。

 それても、本人自身の努力なのか?


 わたしは……、多分、アイルが手を入れてくれなければ、できていない気がする。

 もともと、元の世界でも最低限の身だしなみしか整えてなかったのだ。


 出勤前に化粧品をいくつもとっかえひっかえとか、そんな余裕があるか!!

 そんな暇があれば、できるだけ疲労回復させるための睡眠時間に使っとるわ!!


「でも、ゲーム上ならこれが、最終年度……、なのか」

「そうだよ。いろいろ、結果が出る年だね」

「結果なあ……」

 アルズヴェールがポツリと呟いた。


「どうしたの?」

 その様子に少しだけ違和感を覚える。


 どこか彼らしくない気がしたのだ。


「昨年から少し、人口の伸び方が変わったんだよ」

「ああ、火の大陸は一気に増えたね」

 正しくは、風の大陸と闇の大陸以外の大陸の人口が増えていた。


 それこそ、どんな魔法を使ったのか? と言うほどに……。


「あなたたちの努力が実を結んだ結果なのでは?」

「それなら、良いんだよ。だけど……、気になることがあってだな」

「気になること?」


 わたしたちは協力体制であるが、それでも、育成内容についてはそこまで深く話さないし、聞くこともない。


 勿論、相談されたら、その相談内容に対して返答はするけど、直接的な大陸の人間たち人口増加方法……、大陸の育成に関しては、互いにノータッチだった。


 まあ、この辺りは「すくみこ! 」知識が役に立たなかったということもある。


 ゲームでは、神様たちに頼み込んで、必要なその力を大陸に送る……という、どこか曖昧な表現法だったからだ。


 美麗な立ち絵カットインCGが入った後、きりっとした顔のディフォルメキャラの神様たちが、それぞれの属性の力を目的の大陸に向かって送るその姿は、綺麗……、と言うよりちょっと面白かった。


 赤羽様は赤い羽根が下からゆらゆらと燃え盛るように。

 橙羽様は橙の羽が竜巻のように巻き起こって画面の左端から右端を横切っていた覚えがある。


 つまり、背に持つ羽の色がそれぞれの個性に合わせたような動きで画面に一杯に散りばめられていたのだ。


 個人的には紫羽様が好きな効果だった。


 上から雪が舞うようにゆっくりひらひらと紫の羽が落ちていくそれは……、わたしの友人に言わせれば、「赤紫蘇の落ち葉」に見えるらしい。


 なかなか酷いコメントだ。


 でも、現実(?)のこの世界では、そんな効果もなく……、神官からエネルギーを送る場所の相談を受けて、さらにそれを「神子」が相方の神様に伝え……、その場所に相方の神様が力を送るというような感じだったのだ。


 そして、「すくみこ! 」との違いは、他の神様が使う不思議な力なんて必要としなかった点だろう。


 わたしの大陸はズィード様の力だけしか必要としなかった。


 一度、そのことについてズィード様に確認してみたけど、他の神様の力を混ぜるのは、あまり大陸にとって良くないそうだ。


 でも、「すくみこ! 」との一番の違いは、その不思議な力は人類を発展させても、繁栄をさせるわけではない点だったと思う。


 不思議な力は、エネルギー……、資源の一つであって、子供を増やすことに直接結びつかないらしい。


 勿論、豊かになれば子育ての余裕に繋がるのだから、間接的には繋がっているのだろうけど。


 大陸にエネルギーを補給させつつ、神官たちに人口を増やす提案をしていくこと。

 それこそが、わたしたち「神子」の役目だと思っている。


 そこまで、「すくみこ! 」から離れた育成システムだと、ゲームの知識などほとんど役に立たない。


 だから……、どの大陸もそれぞれの「神子」たちが頑張った結果なのだと思う。


 闇の大陸と呼ばれる場所を除き、一年目に2倍以上。

 そこから順調に二年、三年と増やしていった。


 普通ではありえない速さだが、人類たちの世界と時の流れが違うため、10年単位だと思えば、そこまで爆発的な規模ではない。

 元が、少なすぎたわけだし。


 だが、四年目に入った直後から、その伸び率に変化があった。


 わたしの風の大陸以外、各大陸の人口が急激に上がったことが、資料で報告されているのだ。


 ただ個人的に気になっているのは……、確かに出生率は上がったのだが……、これまで以上に適齢期の、特に女性が若くして亡くなる確率が上がっていた。


 だから、男性の比率がかなり上がっていることになる。


 わたしの関わっている風の大陸はやや男性が多いけど、それは体力的な問題で、そこまで気になるほどではない。


 この世界でも、出産するのは女性だ。

 そして、子供を一人生んだだけでは、当然ながら、人口は増えない。


 同じ女性、それも未婚の身で言うのはアレだが、少なくとも二人は産まなければ、人口は再び減ってしまうのだ。


 それを思えば、長期的に見て、この人口比率がおかしな変化をすることは予想されることだろう。


 アルズヴェールが言いたいのは多分、その話のことだと思う。


 だけど……、協力関係にあっても、競争関係にもあるわたしにそれを告げるかどうか迷っているのだろう。


「気になることって何?」

 だから、わたしは再び、彼に次の言葉を促した。


 それでも悩んでいた彼は……、少し迷いながらも……、口を開く。


「あまりにも若い女が死に過ぎているんだよ」


 絞り出すような悲痛な声で。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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別視点
『少女漫画に異質混入』
別作品
『運命の女神は勇者に味方する』も
よろしくお願いいたします。

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