第二十四話 恥ずい勘違い
今日はガディバースフェスティバル。
ガディが人を大人と認め仕えてくれる日。
だから街はお祭りだ。スラムにいた頃からこの祭りは俺も楽しみにしていた。平民街でも出店が出てうまいものがたくさん並んでいた。金を払ったことはないが。
今日は俺にもガディが付くらしい。どんな奴か楽しみでもあり、怖くもある。
そしてG B Fの対象者は自動転移で”叡智の泉”にランダムで飛ばされる。時間もいつになるかは誰にも分からない。その為、対象者は自宅でその時が来るまでジッとしているのが常識らしい。
そんな中、俺は。
「痛っ!」
「またじゃ。淀んでおる」
「こんなもんやって見せてもらうわけでもねぇのにできる訳ねぇだろ」
「お主。センス無いのぅ」
クソがっ!
地下室の中央で俺は座禅を組まされ、謎の魔力とやらと格闘している。何がダメなのか知らねぇが、何かがダメだと棒で叩かれるおまけ付きで。
何をしているかというと。
魔力を体内循環させて身体能力を更に向上させるというもの。
そもそも俺には周りの人族とは一線を画すほどの魔力量が備わっていると耳にタコが出来るくらいに言われた。それは魔族をも超越するのではないかと言うほどであるらしい。
それを、上手く有効活用する方法がコレなんだそうだ。
魔力をトルクさせて筋肉とは別の力を発揮する。そうすると瞬発的身体能力、更には耐久力を底上げする事が可能なのだと言う。
控えめに言って意味が分からない。
だが、分からないじゃ仕方がない。だから無理やり自分に理解させる。
一口に魔力を体内循環させる。といっても一朝一夕に出来る訳ではない。
まず魔力を自覚して、その魔力に流れを作り身体中に均等に回してやる必要があるという。
よってジジィはこの修行を三段階に分けた。
まず、魔力を自覚する。
これが最初の難関だった。
普通の人間はそこまで難しくないらしいのだが、いかんせん俺が持つ魔力量が大きすぎた。大きすぎる魔力は身体の中から拾うっていうよりも、俺の感覚的に引っ張り出すってのがクソ難儀だった。
俺は自覚するのに丸々一週間かけてやっと出来るようになった。
次に、魔力に指向を持たせて体全体へ流す訓練。
現状俺はここである。
やっとの事で魔力の自覚ができたのだが、しっかりとした魔力のイメージを持つことがまだ出来ていない。
これも邪魔をするのが莫大な魔力量。大きすぎるが故に動かすのが難しい。魔法じゃなくても、物理的に考えて大きいものを動かすのはしんどいのと同じ感覚だ。
そして最後にそれを均等に回す訓練
これが一番の難関らしい。
ただ単純に流すだけならジジィ曰くバカでも出来るらしいんだが、そうすると身体の力に偏りが出来るんだと。
そうなるとまともに走ることすら出来なくなるらしい。
それどころか魔力を体内で偏らせて暴発させてしまうと、身体を内側から爆発させてしまうっていう……
え、これを俺に教えるってバカなの?殺したいの?
つうかそもそも思ったんだが、これだけの魔力量俺にいらなくねぇか?すげぇ大魔法どころか魔法すら使うことが出来ない俺には邪魔にしかならない気がする。
だが、そんな事言ってても仕方ねぇ。他に俺を強くさせる方法も知らねぇし、ジジィを信じると決めた俺が悪い。
やり遂げてやる。
ていうことで午後は第二段階の魔力に指向性を持たす修行をひたすら続けている。
……やはり正直ストレスだ。
俺はどっかの金髪イケメン皇子と違って、身体を動かすことの方が得意であり、ジッとしているのは性に合わない。
だからここだけの話ラナの調教、もとい稽古の方が百倍マシだ。
そんな事を考えながら午後の修行を終える。
湯浴みをサッと済ませ汗を流し、その足でダイニングへ向かう。
今日の晩飯はなんだろうな。午後の修行に入った瞬間からモチベーションは晩飯だった。
もう、そんな小さな心の拠り所が無いと俺の中の何かがキレて暴れてしまいたくなる。それくらい修行が上手くいっていなかった。
ダイニングに入ると、この時間いつもなら食器が並べられているテーブルに何も置かれていなかった。
おかしいな。早く着きすぎたか?
仕方ねぇ少し待つか。
てゆうか疲れたな。眠い。少し寝るか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「寝顔だけ見てると確かにまだ少年ですね」
「可愛いじゃろう?目を開けば目つきもは悪く口を開けば口も悪い。じゃが、寝ておる時はなんと可愛らしい」
気持ち悪い話声で目が覚めた。だが、今起きるのは違う気がして、テーブルから顔を上げられない。
「その可愛いさは私には分かりかねます。私はゼルバトス様との時間を削るこの子が嫌いですから。ただ、多少同情はしますね」
ん?同情?
このクソエロメイドがジジィに心酔してることは知っているし、俺の事を疎ましく思ってる事も分かってる。
そんなエロメイドが俺に同情だと?
「うむ。ラナ、お主にも分かるじゃろうな。オーカと似た境遇じゃったからの」
エロメイドと似た境遇?
「えぇ。ですが私は自分の年齢は知っていました」
年齢?
「よもや、まだ十五歳未満とは、な。恐らくオーカのGBFは来年じゃろうの」
「はっ!?」
今なんて?
は?十五歳未満?誰が?俺?まだ十五歳未満?いやいやいや。
バカ言っちゃいかんよジジィ。ボケてんのか?
そうだ。今日G B Fだったのすっかり忘れてた。
「起きておったのか」
「不憫な」
「不憫じゃねぇよ!っつうことは俺今日ガディ貰えねぇのか」
「この時間まで転移が起きぬという事は、そうなるのぉ」
なんだよ。
ガディが貰えりゃ明日からの修行も、そのガディを含んだものになる。だから少しは楽しくなると思ったのにな。
ま、いいか。
ん?ちょっと待て。パルキアは今年、十五歳だよな。
あ、俺パルキアより年下なんだ。
……年下なのに兄貴。
うっわ、はっず。
「居候。これを着なさい」
「なんだこれ?」
軽く打ちひしがれているところで、エロメイドに差し出されたのは黒い綺麗なローブだった。
「ゼルバトス様にこれ以上迷惑をかけない為の物です」
「は?」
「これラナ、子供に意地の悪い事を言うもんじゃない」
「子供ではねぇぞ!」
なんだこいつらめんどくせぇな。
とりあえずラナからローブをひったくってそのまま羽織る。
「ほっほっほ。怒るでない。それは認識阻害の魔術式を埋め込んであるローブじゃ。周りの人らは儂らの事を仮に知ってても、気付きにくくなるというもんじゃな」
「かくれんぼ最強的な?」
「これを着てれば最強じゃのぅ」
「エロメイドが鬼か?」
「かくれんぼをするわけではないわ。出掛けるんじゃよ」
「どこに?」
「今日は祭りじゃ。夜店に繰り出すぞい」




