チグハグな記憶
「あら、簡単な話よ。私が生き返らせて上げたのよ。吸血鬼として。」
シン、と静まり返る大広間。
「・・・・・全っ然意味が分かんねーんだけど。」
「生き返らせるっていうのかしら?上手く言う言葉が見つからないわ。」
魅麗は扇子で扇ぎながら首を傾げる。
「というより、僕達はその前の話、何が有って死ぬ事になったのかが知りたいんだけどね。」
「残念だけど、私は朱蘭の過去を知らないわ。教えてくれないの。あの子、強情だから。」
魅麗はクスリと笑った。
「朱蘭の事は、私より其処の蛇妖怪さんの方が詳しいんじゃない?」
一斉に楓雷に視線を向ける一同。
楓雷は俯く。
「話してくれないかしら?」
楓雷は静かに首を振った。
「実は・・・・私も・・・・あの日・・・何が有ったか・・・・ハッキリと覚えていないのです。」
「どういう意味だ?」
吋土は心配そうに尋ねる。
「あの日の部分だけ記憶が抜け落ちているんです。けれど、琥蝶が居なくなったという事実は頭に残っていて・・・」
「意味が分かんないんですけど・・・何が有ったか覚えていないけど、琥蝶さん、でしたっけ?その人が居なくなったっていう事実は解かるんですか?」
梨亜はキョトンとしている。
「っていうか、オメー、さっきあの吸血鬼の最期を見たって言ってたじゃねーか。」
「その部分の記憶は、有るんです。」
「はぁ??」
ますます訳が判らなくなる怜川。
「つまり、何の事件が有ったかは解からない。けど、貴方の中には死んだ場面だけがくっきりと在って、あの子が死んだというのは自覚している。そういう事かしら?」
魅麗の問いに楓雷は頷く。
「随分と興味深いじゃないか。それで、君はどうしたいんだい?」
「記憶を・・・思い出したいんだ。辛いモノかもしれないが、それでも良い。」
「と言っても、朱蘭さんが話してくれないと私達、解からないじゃないですか。」
梨亜が困ったように呟く。
「知る方法なら有るわよ。地獄の魔界図書館に行けば良いの。」
「魔界・・・・図書館・・・?」
皆、顔を見合わせる。
「知らないの?有名なのに。魔界図書館には全てを知る『過去の書』『未来の書』『真実の書』が存在していて、その書を見ればこの世の何もかもを知る事が可能なの。」
「全てを・・・・?」
「し、信じられません・・・」
「それって事実なのか?」
「胡散臭いね。」
「ああ・・・」
半信半疑の面々。
「図書館の事なら華蓮の方が詳しいと思うわよ?華蓮は魔界図書館の司書さんと仲が良いらしいから。もしかしたら、見せて貰えるかもよ?」
「それなら・・・・・!」
頷きあうと梨亜と怜川は、外に飛び出した。
「今すぐ華蓮さんに会いに行きましょう!」
「おう!」
「全く、あんなに走って転ぶんじゃないかい?」
「せっかちだからな・・・あの二人は。」
蝋火と吋土も出て行く。魅麗は不思議そうに楓雷を見る。
「貴方は、行かないの?」
楓雷は不安げに言った。
「・・・・・琥蝶は・・・・大丈夫なのか・・・・?」
「平気よ。私に任せて貴方は行きなさい。お仲間も待ってるわよ?」
魅麗は扇子を口元に当てた。
吋土と蝋火が楓雷を開けっ放しの扉の前で待っている。
楓雷は一礼すると、出て行った。
「頑張ってね・・・・・貴方の“チグハグ”な記憶・・・・ハッキリさせるのよ・・・・」
魅麗のそんな声が楓雷は聞こえた気がした。




