表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レッド・ムーン  作者: 翡翠蝶
5/12

琉錨VS怜川

「はあ?居ない?またかよ?」

怜川は呆れたように言う。

「ええ。今回はお一人で・・・」

需浬は苦笑する。

一度は帰ったもののやはり解決した方が良いという事で、楓雷を連れて来た妖怪達。しかし、またもや不在という。

「何処に行ったか分かるのか?」

吋土は聞く。

「冥界だと思うよ~?」

眞李が眠そうに答える。

「そうね。朱蘭がミッドナイトを連れて行かない時は、大抵冥界に行くもの。」

華蓮が魔術の本を捲りながら顔も上げずに言った。

「冥界って・・・」

梨亞は絶句した。

「行こうと思えば行けるよ。死んだら行く事になるけどね。」

蝋火はニヤリと笑った。




と、いう事で巫女と妖怪四人は冥界へと足を踏み入れた。

「何だか嫌な所ですね。」

梨亞は辺りを見回す。

「居心地悪いな。」

怜川も顔をしかめる。

「当たり前だ。ここで居心地が良いと感じるのは死人だけだからな。」

吋土がもっともなツッコミを入れる。

「確か吸血鬼は一番奥の大きな神殿に居るって言ってたよねぇ?」

蝋火は冥界に来ても緊張感を感じていないらしい。

「神殿には冥界を取り仕切る呪術師じゅじゅつしが住んでいると聞きました。」

楓雷がそう言った瞬間、梨亞と怜川は凍り付いた。

楓雷は言わない方が良かったと激しく後悔する。

「馬鹿だね、君達。そんな事も知らずに来たのかい?」

蝋火はやれやれと肩を竦める。

「命を取られても知らんぞ。」

吋土は冷たく言い放つと先に行ってしまう。

「待ってよ!」

「措いてくな!」

慌てて後を追う梨亞と怜川。

楓雷と蝋火も苦笑いを浮かべつつ歩いて行く。




「魅麗様、侵入者が入ってきました。」

紅茶を啜る二人に琉錨が報告する。

「あら、珍しいこと。自分から冥界に来る様な物好きさんがいるのね。」

魅麗は笑う。

「どうしましょう?」

「帰らせなさい。言う事を聞かなかったら強制排除なさい。殺さない程度にね。冥界で死んだら成仏出来ないから。」

琉錨の問いに魅麗は扇子を揺らしながら言った。

御意ぎょい。」

琉錨は姿を消した。




「あれ?」

梨亞は驚いて声を上げる。

「どうした?」

「あそこに白い虎が・・・」

梨亞は指差す。

目の前には、一頭の白い虎が待ち構えている。

五人は用心しながらも近づく。

「去れ。」

近づくと白い虎が喋ったので、梨亞はギョッとしたが妖怪達は驚かなかった。

「吾輩達は用が有って来た。通してくれぬか。」

「此処は生命有る者が来てはならぬ場所。すぐさま立ち去るが良い。」

「私達、朱蘭さんに会いに来たんです!」

梨亜は訴える。

「朱蘭様にお会いする事は許しません。」

「どうしても通さないって言うなら実力行使だぜ!」

怜川は一歩前に踏み出し、拳を構える。

「愚かな。この冥界という地で戦えば命を削るだけなのに・・・けれど仕方ありません。排除します。」

琉錨は、怜川に飛び掛かる。

怜川はそれをヒラリとかわし、水の術を放つ。

琉錨の瞳がアイスブルーに輝く。

その途端、琉錨の体からはもの凄い冷気が発せられ水は凍ってしまう。

「マジかよ?!」

怜川は、思わず叫ぶ。

琉錨は鋭い爪で怜川を引き裂こうとする。

怜川は、必死に避けながら勝つ方法を考える。

「そうだ・・・!」

怜川は琉錨と距離を取ると必殺技を使う。

「“水神 清龍の舞”!」

水が龍の形に成り、琉錨に向かって行く。

「・・・・無駄です。」

琉錨はその水の龍さえも凍らせてしまう。

「・・・・・・・・俺には無駄じゃないぜ!」

怜川は、凍った水の龍の上を走って琉錨に接近した。

「・・・・・・・!?」

驚いて動けないでいるその体に拳を叩き込む。

琉錨の体は吹っ飛ばされた。

「・・・ま、こんなモンかな。」

怜川は余裕の顔でニッと笑った。

「へぇ、君にしては上出来じゃないか。」

蝋火が吹っ飛んだ琉錨を眺めながら言う。

「貴様が必殺技を使った時は自滅する気かとハラハラしたが・・・」

吋土は溜め息を吐く。

「どうなるかって凄く不安でした~。」

「ああ。負けるんじゃないかと心配したぞ。」

梨亞と楓雷も安心したように口々に話す。

「何か、俺って信頼されてないみたいじゃないか・・・」

怜川は少しシュンとなる。

「それよりも・・・」

吋土は琉錨の方を向く。

「虎よ。神殿まで案内して欲しいのだが?」

琉錨は苦しげに息をしながら弱々しく立ち上がる。

「分かりました・・・・・こちらです・・・」

琉錨に付いて行く。すると、見事な神殿が見えて来た。

「あれが・・・・」

「そうです・・・・『魂の神殿』です・・・・・」

神殿の扉の前に琉錨が立つとゆっくりと扉が開く。

中に入ると、二人の女性が待っていた。魅麗と朱蘭だ。

楓雷は朱蘭の姿を見て唇を噛む。

「フフフ、琉錨。貴方が此処まで役立たずだとは思わなかったわ。」

魅麗が妖艶な笑顔で言う。口は笑っていたが目には怒りが見える。

虎は震えながら後ずさる。

「・・・・・・魅麗様・・・・っ・・すみませんっ・・・・」

「私は言い訳は聞きたくないの。下がりなさい。」

琉錨は姿を消した。

「・・・・・・・・さてと。」

魅麗は妖怪達に視線を戻す。

「・・・・オメー、誰だ?」

怜川が警戒しながら尋ねる。

「私?私は白櫻魅麗。以後お見知りおきを。」

それから朱蘭の方を向く。

「朱蘭、もう、いい加減全部話した方が良いんじゃないの?妙な意地張ってないで。」

楓雷は悲しげに朱蘭を見詰める。

「・・・・・お前は・・・・琥蝶・・・・そうだろう?」

「・・・・・・その名で呼ばないで・・・!」

朱蘭は、ギュッと胸元を握り締める。

「なぜ・・・・お前は死んだはず・・・それは私が見ていた。」

楓雷は朱蘭に尋ね掛ける。

「・・・・・・・・」

「どうして・・・どうしてなんだ・・・?教えてくれ、琥蝶!」

「嫌!」

朱蘭は耳を塞ぐ。

「止めて・・・・私は・・・・自分の記憶を封印したの・・・お願いだから・・・思い出したくないの!

それ以上、言わないで・・・・!」

魅麗は、静かにその様子を眺めていた。

「蛇妖怪さん。朱蘭を虐めないで?」

それから朱蘭に言った。

「朱蘭、奥の部屋で休んだ方が良いわ。」

朱蘭は小さく頷くと歩いて行った。

「謎は深まるばかりだねえ~。」

「ああ。俺もサッパリ話が見えて来ない。」

「楓雷、大丈夫か?」

「・・・・・はい。平気です。」

楓雷は朱蘭が歩いて行った方向を見ていたが、溜め息を吐く。

「蛇妖怪さん、貴方は朱蘭の事が好きなのね。だから、そんなに必死になって。」

「あの、魅麗さんは知ってるんですか?朱蘭さんの過去を?」

梨亞がおずおずと問う。

「そうね。大まかな事は知ってるわ。とはいえ詳細は聞いてないけど。」

「なぜ、琥蝶は生き返った?」

楓雷は魅麗に言う。

「あら、簡単な話よ。私が生き返らせて上げたのよ。吸血鬼として。」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ