【第50話】収納鞄解体術のその後
「うわ!うわ!なんですかこのスープ!いつも以上に味が複雑で美味しいですね!!」
「サーシャ様、もう少し落ち着いたら如何ですか?あ、ススム様おかわり頂けますでしょうか?」
「私もおかわり下さいー!」
腹ペコ残念三美人達はすっかり旨味を効かせたスープの虜のようだ。
『ススム様!この干した果物も美味しいです!』
「ああ、ドライフルーツか。美味しいよね。ゆっくり食べな。」
『甘くて美味しいのー!』
フィルルとポチはドライフルーツがお気に入りのようだ。
「確かにこのドライフルーツも美味しいですよね・・・!こう何ていうか美味しさがぎゅっとなってるっていうか・・・!」
「まあ、手間がかかってますからね。」
「手間ですか・・・。」
そう言ってサーシャはドライフルーツを眺めている。
「そういえばサーシャさんは頻繁に手紙の魔道具使ってましたよね?あれ僕も欲しいのですが何処で手に入りますか?」
「誰にお手紙ですか!?ぐう・・・!」
最高潮に興奮しているサーシャをセリルが顔面を掴み抑え込んだ。
「確認したいことが合って、ミストヴェイルのカイエンに手紙を出したかったんですよ。」
「ああ、なるほど。でしたらお譲りします。」
「でしたらって・・・。仮に相手が女性だったら?」
「手紙1枚100万ミラルですね。」
ニッコリと微笑んでいる。
「はあ・・・。折り返し用の手紙を同封させることは出来ますか?」
「それは必要ないと思いますよ?ギルマスなら手紙の魔道具位持っているはずですし。」
「なるほど。」
「ではこれです。ちなみに内容は?」
「機密なので話せないですねえ。」
「ぐぬぬー。」
サーシャ達が帰る際手紙代金としてドライフルーツを幾つか渡すと非常に喜ばれたが「食べすぎると太る」と忠告すると三人がびくぅ!っとしてたので即食べるつもりだったのかも知れない。
俺はサーシャから貰った手紙に早速カイエン宛に「収納鞄解体術はどうなったか?」と書き送る。
返信は遅れるかと思ったらそんなことはなく直ぐに帰ってきた。
「オーロ・ヴァレンツのギルマスに直接聞け。俺の名前を出せば会ってくれるだろう。」との非常に短い文章が返ってくる。
これは相当面倒くさい事になったのかなあ?
翌朝俺は早速冒険者ギルドに出向き受付嬢にギルマスに会いたいとアポを取り付ける。
「大変申し訳有りません。当ギルドは副ギルドマスターまでしかご案内できないんです。」
「なるほど。一応ミストヴェイルのギルドマスターのカイエンより手紙でここのギルドマスターより話を直接聞けと書いてあったんですが、それでも無理でしょうか?」
「お手紙をお預かりしてもよろしいでしょうか?一応確認してまいります。」
「お手数おかけします。」
暫く待ちながら依頼書などを眺める。
相変わらず薬草類の買取は時価で行っているらしい。
今度暇な時にハーブ取りのついでに薬草類を取ってきても良いかもなあなんて考えていると受付嬢より声を掛けられる。
「ススム様。大変お待たせ致しました。ギルドマスターが直接お会いになるそうです。」
「あ、そうですか。」
「ご案内致します。」
そうして案内された待合室はミストヴェイルの待合室よりも遥かに広く豪華だった。
座って暫く待っていると一人の女性が現れた。
「貴方ですか?ミストヴェイルの問題児さんは。」
開口一番そう言われムッと来たがここは大人の対応を取ることにする。
「初めまして。お忙しい所失礼します。ススムと言います。」
「良く存じています。私は当ギルドマスターのアウレリアと申します。よろしくお願いしますね。」
「アポも取らず急なお話になりすみません。本当はカイエンに話を聞こうと思ったのですが、なんせ手紙の通りでして。」
「まあ、しょうがないでしょう。それにあの人は面倒くさがりですからね。全く。いつになっても変わらない。」
「カイエンとは知り合いで?」
「腐れ縁というやつですね。」
「なるほど。」
「それで今日のお話は、恐らく収納鞄を利用した新たな解体術でよろしかったですかね?」
「ええ、その通りです。カイエン曰く扱いが一ギルドマスターの管理を超えているので全冒険者ギルドに確認してからということだったんですが、その後どういった扱いになったのかわからなくて。」
「なるほど。ではお話しますがこの件はもう暫く伏せていて下さい。今日より丁度10日後に冒険者ギルドより全世界に向けて一斉に公式声明が全冒険者ギルドを通じて発布されます。」
「公にするんですか?秘匿するのかと思っていました。」
「この情報の有用性は非常に高いですからね。それに秘匿するというのはどこから漏れ出るかわからないんですよ。それならばいっそ公言してしまったほうが良いという判断ですね。」
「確かにそれは言えていますね。」
「それと今回の事案の大本となる貴方には、申し訳ないですが『何もしない』ということが公式に決定しました。本来であれば金銭や地位の向上等様々なことをして然るべきだと思うのですが、発議者のカイエンにより逆に一切何もしないし名前も残さない事のほうが望ましいという要望がありました。事実ですか?」
俺はそれを聞き、流石に俺のことを良く知ってるカイエンらしい配慮だと思った。
「ええ、それが一番良いですね。僕は目立ちたくないのです。細々と生きていければそれでいいと思っています。」
「はあ、本当に欲がないのですね。」
「はい。無いですね。」
「全く変わっている・・・。ですが一応本人の口から了承を得られたということで報告しておきます。」
「必要なら一筆描きますが?」
「そうですね。その方が良いでしょう。」
ということで俺は今回の件に関し一切の権利を放棄し関与しない、またその見返りに今回の一件に関し俺の名前の一切を消去する事を依頼した手紙を書く。
「確かに。ではこれは私が責任を持ってお預かり致します。」
「よろしくお願いします。あ、そうだ。」
「・・・まだ何か?」
「薬草類って必要ですか?必要なら摘んできますけど?そこら辺もカイエンから聞いてるんですよね?」
「そうですね。薬草類については聞いています。可能ならお願いしたいですが?」
「扱いはミストヴェイルと同じでいいですか?」
「そうですね。商業ギルドと錬金術師ギルドには話を通しておきましょう。」
「分かりました。時間があるときにでも摘んできます。では失礼しますね。」
早々に用事を済ませ帰宅するとフィルルが客人が待っているということで案内してくれる。
どうやら早くもベッドが完成し、浴槽も出来たようだ。
「おお!もう出来たんですか!?」
「元々作り置きの会ったものを手直しさせていただいただけですので。」
「特急料金も払わないといけませんね。感謝致します。」
「これはこれは。本当にありがとうございます。それとこちら、依頼のあった入浴道具一式になりますがこちらは今後の為ということで勉強させていただきます。」
「助かります。いやあ、嬉しいなあ。」
そうして俺は二人の職人たちを見送りフィルルが用意してくれたベッドにまず寝転がってみる。
うーん、やっぱしスプリング製ではないため寝心地はイマイチだがそれでもこの世界の物で考えれば最上級品だろう。
そして問題の風呂だ。
俺はこの数日、風呂に張るお湯について考えていたが、これも収納鞄を利用してしまえと思った。
収納鞄は液体でも収納できる。
そのためドラム缶で一気に温めた後それを一度収納鞄に収納して浴槽に移してしまえば一気に湯が張れるという事だ。
俺は早速風呂近くに用意していた特製のドラム缶で一気に湯を沸かす。
そして熱々になった湯をドラム缶ごと収納してしまい、風呂に湯を入れ更に水を加えることで温度調節をする。
「バッチリだ!!うおおおおーー!!」
俺は今までの汚れを落とすかの如く石鹸を泡立て汚れを落とす。
自分でも引くぐらい汚れていたようだ。
『御主人あわあわー』
「ポチ、お前も洗ってやる!」
『わー!』
ポチは狼のくせに珍しくこうした風呂などを嫌がる素振りはない。
ポチも大分汚れていた様だがこれで真っ白な狼になった。
「ふーーー。」
俺とポチはゆっくりと温かい湯船に浸かる。
『気持いいのー。』
「極楽だなあ。」
こうしてまた一つ、俺の生活のクオリティがランクアップした。




