その17
「リーラン王国リ・リラ女王陛下に伺います」
ローア伯は、2人が並んで立ったのを確認してからそう尋ねた。
婚儀の始まりだった。
2人の介添人達は、やや離れた所に陣取っていた(?)。
「はい、何なりと」
リ・リラは、女王の威厳たっぷりでそう答えた。
「本日は、クライセン公エリオ閣下とのご婚儀で相違ございませんか?」
ローア伯は、続けてそう尋ねた。
「相違ございません」
リ・リラは、今後は飛びっきりの笑顔でそう答えた。
胸の高まりが抑えきれないと言った感じだった。
これには、会場のご婦人方も同調せざるを得なかった。
「承りました」
ローア伯は、リ・リラに一礼した。
そして、ローア伯はエリオの方に向き直った。
「!!!」
これには、いくらエリオでも緊張せざるを得なかった。
「クライセン公エリオ閣下に伺います」
ローア伯は、今度はエリオにそう尋ねた。
「はい、何なりと」
エリオは、リ・リラと同じ言葉を発した……。
「本日は、リーラン王国リ・リラ女王陛下とのご婚儀で相違ございませんか?」
ローア伯は、リ・リラへと同じ事を尋ねた。
「相違ございません」
エリオは、心臓が飛び出ると言った気分を初めて味わった。
戦場でのどんな修羅場でもこれ程緊張した事はなかった。
それが伝わってのか、会場の面々からはホッとした空気が漂ってきた。
勿論、リ・リラは、完全に勝ち誇った笑顔を浮かべていた。
「承りました」
ローア伯は、エリオに一礼した。
そして、姿勢を正した。
「では、結い紐の儀を」
ローア伯は姿勢は正したが、笑顔でそう言った。
これは、そういう儀式である。
リ・リラとエリオは、それぞれ持参してきた紐を手にした。
勿論、紐の色はリーラングリーンである。
リ・リラが左手を差し出すと、エリオは持ってきた紐をリ・リラの左薬指に結んだ。
リ・リラは、その間、笑いが、じゃなかった、笑みが溢れていた。
結び終わると、今度は、エリオが左手をリ・リラに差し出した。
リ・リラは、持ってきた紐をエリオの左薬指に結んだ。
この時、エリオは漸く実感が持てたという顔をした。
鈍ちんである。
会場と共に、息を呑んで見守っていたローア伯は、会場と共にホッとしていた。
そして、ローア伯は再び姿勢を正した。
「本日、リーラン王国リ・リラ女王陛下とクライセン公エリオ閣下の同意により、ここに2人は結婚した事を宣言いたします。
おめでとうございます」
ローア伯は、誇らし気にやり切ったと言った顔をしていた。
「リーラン王国万歳!」
間髪入れずに、音頭を取ったのはロジオール公だった。
これまでは、音頭を取るのは貴族筆頭のエリオだったが、この瞬間から変わったのだった。
エリオは、貴族筆頭から王配になった為である。
因みに、ロジオール公は貴族筆頭代理という事になるので、これからはこう言った音頭を取る事となる。
「リーラン王国万歳!」
ロジオール公の音頭により、会場の皆が一斉に万歳をした。
「リーラン王国に栄光あれ!」
ロジオール公の音頭が続いた。
「リーラン王国に栄光あれ!」
会場の面々が公の言葉を復唱した。
その声が鳴り止むと同時に、リ・リラとエリオは、会場の方に向き直った。
それを見たロジオール公は、ひな壇中央の下に歩みでた。
そして、跪いた。
会場の面々もそれに合わせるかのように、跪いた。
「臣下の代表として、ロジオール公フルスが申し上げます」
ロジオール公は、恭しくそう始めた。
貫禄があり、流石に様になっている様子だった。
「本日、この良き日に、お二人の新たな門出に参列できた事、誠に歓喜の極みであります。
臣下一同、お祝いを申し上げます」
ロジオール公の恭しさは更に強まっていた。
「皆様、ありがとうございます」
リ・リラは、女王スマイルでそれに応えた。
それにより、会場の熱気が一気に高まった。
「これからは、夫婦として、リーラン王国の発展に寄与していきたいと思います」
リ・リラは、短い言葉だが今後の抱負を述べた。
あ、まあ、そのぉ、やっぱり、勝ち誇っての事だった。