その12
「やれやれ、閣下、それでは、陛下があまりにもお可哀想です」
シャルスは、珍しくそう口にした。
感情が乏しいことは分かっていたが、暗躍した立場としては盛り上げていきたい所である。
と言うか、各方面から何故か突き上げを受けていた本人としては、このまま済ます訳には行かなかった。
「う~ん、別に蔑ろにしている訳ではないのだが……」
エリオは、困った顔でそう言った。
普段済ましている人間がこういう顔をすると、何だかいじりたくなってくるのは誰もが持つ感情だろう。
まあ、悪趣味ではあるが……。
「もう少し、ストレートに感情表現なさっては?」
シャルスは、珍しく口が達者であった。
これには、エリオは兎も角、マイルスターは驚いていた。
まあ、いつもの和やかな表情だったので、その違いはよく分からないが……。
「お前さんみたいにか?」
エリオは、調子に乗ってきたシャルスに逆に問い掛けた。
「えっ?」
シャルスは、珍しく表情が変わった。
思わぬカウンターを受けたという感じだった。
これには、流石のマイルスターも表情に出して、驚いていた。
それを目敏くエリオが発見した。
「シャルスは、婚約者がいるのさ」
エリオは、反撃の狼煙を上げた。
「初耳ですが……」
マイルスターは、和やかに驚いていた。
「まあ、秘密主義だからな、シャルスは」
エリオは、ニヤリとした。
意趣返しのつもりなのは明らかだ。
流石に、『漆黒の闇』、肝っ玉が小さい。
「最近のことですし、私如きの事は誰も気にしないでしょう。
特に、言いふらしたりする必要もないでしょうし」
シャルスは、いつもの表情に戻っていた。
この程度の揺さぶりには動じないと言った感じだった。
「そうなのかい?」
マイルスターは、シャルスに問い返してみた。
特に、何かが引っ掛かった訳ではないが、そんなものなのかなと言った感じの問いだった。
「……」
シャルスの方は、あまりにも純粋に聞かれたので、却って答えに困ったのは言うまでもなかった。
「こいつは、自分が上手く行っているからって、それを俺に当てはめようとしているんだ」
エリオは、シャルスに追い打ちを掛けるつもりでそう言った。
「閣下の方は、上手く行っていないのですか?」
マイルスターの問いは、今度はエリオに向かった。
別に、言葉尻を捉えたという訳ではなかった。
単純に、あれ?と感じただけだった。
「えっ……」
エリオは、そう聞かれて答えに窮した。
恋愛の達人ではないので、攻守共に直ぐに綻びがでる。
「……」
シャルスは無言にて、エリオをやれやれ顔で見るのだった。
実にたわいないというか、自分の罠に引っ掛かったというか、兎に角、やれやれと最後に感じるのだった。
「上手く行っていないという訳ではない……」
エリオは、今までの経緯を考えながら、何とかそう答えた。
頭の中をフル回転させた結果である。
とは言え、状況を鑑みると、そう言えなくはないのではなくはない。
「とは言え、現在の状況は周りが動いた結果ですよね」
マイルスターは、和やかにそう言い切っていた。
「!!!」
ズバッと切られたエリオは、絶句する他なかった。
それを見たシャルスは笑いを堪えていた。
まあ、こんな性格のエリオが結婚できそうなのは、理由があるのは言うまでもなかった。
リ・リラは女王で、エリオはクライセン家の惣領である。
この2人が好き合っていることは周知の事実ではあるが、放っておくと、いつまで経ってもくっ付かないのも周知の事実である。
そうなると、国が傾きかねない。
なので、周りが動いたのだった。
そして、今回、クルスがトップに立ったのは、リ・リラとエリオ以外では一番の被害を受けそうな人物だったからだ。
次の王位に就く人物の結婚相手として、まず選ばれるのは、順番からすると、ロジオール家である。
現在、今年三歳になる第一子がいる。
展開次第では、更に増やす必要があるのだった。
色々な思惑が乱れていて、それはどれも2人をくっ付けようとするものばかりである。
つまり、リ・リラが女王で、エリオがクライセン家の惣領ではなかったら、捨て置かれていたのは言うまでもなかった。
それは、エリオにとって、幸運だった?




