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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
31.2つの終わりと2つの始まり

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その12

「やれやれ、閣下、それでは、陛下があまりにもお可哀想です」

 シャルスは、珍しくそう口にした。


 感情が乏しいことは分かっていたが、暗躍した立場としては盛り上げていきたい所である。


 と言うか、各方面から何故か突き上げを受けていた本人としては、このまま済ます訳には行かなかった。


「う~ん、別に蔑ろにしている訳ではないのだが……」

 エリオは、困った顔でそう言った。


 普段済ましている人間がこういう顔をすると、何だかいじりたくなってくるのは誰もが持つ感情だろう。


 まあ、悪趣味ではあるが……。


「もう少し、ストレートに感情表現なさっては?」

 シャルスは、珍しく口が達者であった。


 これには、エリオは兎も角、マイルスターは驚いていた。


 まあ、いつもの和やかな表情だったので、その違いはよく分からないが……。


「お前さんみたいにか?」

 エリオは、調子に乗ってきたシャルスに逆に問い掛けた。


「えっ?」

 シャルスは、珍しく表情が変わった。


 思わぬカウンターを受けたという感じだった。


 これには、流石のマイルスターも表情に出して、驚いていた。


 それを目敏くエリオが発見した。


「シャルスは、婚約者がいるのさ」

 エリオは、反撃の狼煙を上げた。


「初耳ですが……」

 マイルスターは、和やかに驚いていた。


「まあ、秘密主義だからな、シャルスは」

 エリオは、ニヤリとした。


 意趣返しのつもりなのは明らかだ。


 流石に、『漆黒の闇』、肝っ玉が小さい。


「最近のことですし、私如きの事は誰も気にしないでしょう。

 特に、言いふらしたりする必要もないでしょうし」

 シャルスは、いつもの表情に戻っていた。


 この程度の揺さぶりには動じないと言った感じだった。


「そうなのかい?」

 マイルスターは、シャルスに問い返してみた。


 特に、何かが引っ掛かった訳ではないが、そんなものなのかなと言った感じの問いだった。


「……」

 シャルスの方は、あまりにも純粋に聞かれたので、却って答えに困ったのは言うまでもなかった。


「こいつは、自分が上手く行っているからって、それを俺に当てはめようとしているんだ」

 エリオは、シャルスに追い打ちを掛けるつもりでそう言った。


「閣下の方は、上手く行っていないのですか?」

 マイルスターの問いは、今度はエリオに向かった。


 別に、言葉尻を捉えたという訳ではなかった。


 単純に、あれ?と感じただけだった。


「えっ……」

 エリオは、そう聞かれて答えに窮した。


 恋愛の達人ではないので、攻守共に直ぐに綻びがでる。


「……」

 シャルスは無言にて、エリオをやれやれ顔で見るのだった。


 実にたわいないというか、自分の罠に引っ掛かったというか、兎に角、やれやれと最後に感じるのだった。


「上手く行っていないという訳ではない……」

 エリオは、今までの経緯を考えながら、何とかそう答えた。


 頭の中をフル回転させた結果である。


 とは言え、状況を鑑みると、そう言えなくはないのではなくはない。


「とは言え、現在の状況は周りが動いた結果ですよね」

 マイルスターは、和やかにそう言い切っていた。


「!!!」

 ズバッと切られたエリオは、絶句する他なかった。


 それを見たシャルスは笑いを堪えていた。


 まあ、こんな性格のエリオが結婚できそうなのは、理由があるのは言うまでもなかった。


 リ・リラは女王で、エリオはクライセン家の惣領である。


 この2人が好き合っていることは周知の事実ではあるが、放っておくと、いつまで経ってもくっ付かないのも周知の事実である。


 そうなると、国が傾きかねない。


 なので、周りが動いたのだった。


 そして、今回、クルスがトップに立ったのは、リ・リラとエリオ以外では一番の被害を受けそうな人物だったからだ。


 次の王位に就く人物の結婚相手として、まず選ばれるのは、順番からすると、ロジオール家である。


 現在、今年三歳になる第一子がいる。


 展開次第では、更に増やす必要があるのだった。


 色々な思惑が乱れていて、それはどれも2人をくっ付けようとするものばかりである。


 つまり、リ・リラが女王で、エリオがクライセン家の惣領ではなかったら、捨て置かれていたのは言うまでもなかった。


 それは、エリオにとって、幸運だった?


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