その10
とは言え、儀式はこちらが先である。
と思う……。
どうにもこうにも、こんだけ、人任せでいいのかという不透明感がある。
いや、不透明感ではないですねぇ……、何て言ったらいいのか?
まあ、ただ、ラブコメ史上、類の見ない展開なのは間違いがないだろう。
とは言え、2人に任せて放っておくと、多分、一生このままであろうという不安点がある。
まあ、周りが動く事で、上手くい事は現実世界のでもある事はあるので、良しとしておこう……。
それにしても、『漆黒の闇』が2つ名としてしっくり来る。
そして、文武両道の才女の方も、まあ、弱点がない訳ではないという事だろう。
実に人間らしい?
「さて、本日の議題ですが……」
緊急御前会議で、主導したのはクルスだった。
メンバーは、リ・リラ、ラ・ミミ、エリオ、ロジオール公、ヤルス、クルス、そして、マサオの現時点でのフルメンバーである。
いつも通り、リ・リラとラ・ミミが上座、左右に、海軍府、陸軍府、対面に中務府の配置になっている。
そんな中、クルスの指示で今回の議題の資料が配られた。
議題の内容は、リ・リラとエリオには当然知らされてなかった。
そして、勿論、他のメンバーは知っていた。
緊急性が高いと知らされ、いざ出席したリ・リラとエリオ。
「!!!」
「!!!」
資料に目を通すと、愕然として、お互いの顔を見合わせたのは言うまでになかった。
渡された紙は一枚。
そこには、今日からの日程が書かれていた。
一目瞭然だった。
「ご覧頂ければ、お分かりになると思います。
今後、このような日程で進めていきたいと考えています」
クルスは、意見を聞かずにそう締めくくると、席に着いた。
「……」
「……」
リ・リラとエリオは、紙を穴が空くのではないかと言った感じで見続けた。
……。
2人が全く発言しないので、会議室は静まり返っていた。
(やれやれ、どうしたもんですかねぇ……)
母親は、息子を見た。
(これ、どうするんだ、我が息子よ!)
父親も、呆れながら息子を見た。
(いやいや、ちょっと待って下さいよ、お二人共)
息子の方は、余裕綽々で対応していた。
そして、楽しそうに、本日の主役である2人を、交互にキョロキョロと見ながら観察していた。
「……」
「……」
リ・リラとエリオは、それでも沈黙を続けていた。
これ程、2人を黙らせる事が出来たのは初めての事だった。
それだけに、クルスは自分の優位性を楽しんでいた。
とは言え、このまま放っておく訳には行かなかった。
両親からの無言のプレッシャーがあり、ヤルスとマサオの気まずそうな視線も気になってきた。
(やれやれ……)
クルスは、残念に思いながらも2人に助け船を出す事にした。
「勿論、お2人にはこれを拒否する権利がございます」
クルスは、仕方がないと言った感じでそう言った。
これは助け船になっているのだろうか?
とは言え、クルスの発言に2人はきちんと反応した。
エリオは、何か希望を持った表情になった。
それに対して、リ・リラは、険しい表情になった。
無論、エリオの表情が目に入ったからだ。
「とは言え、そうなると、もう、我々の手には負えなくなります」
クルスは、お手上げとばかりに両手を上に上げた。
その言葉に、リ・リラとエリオ以外はうんうんと頷いた。
もう、これは御前会議という崇高なものではなかった。
単なる井戸端会議である。
親戚同士の家族会議であった。
「……」
リ・リラは、それでも無言だった。
「うっ……」
エリオの方は思わず、声が漏れてしまった。
流石に、稀代の策略家である。
この先の展開が一瞬で分かってしまった。
「まあ、我々はどちらでもいいのですが、どうなさいますか?」
クルスは、自分の優位性を前面に出して、尋ねてきた。
無論、勝ちを確信しての事である。
まあ、負ける訳には行かないという思いもあるので、強気で押している側面もある。
「分かりました。
お願いします」
ヘタレなエリオは早々に降参した。
「……」
リ・リラの方は、それでも頑なに無言を続けていた。
「陛下はどうなさいますか?
お2人が賛同しないと、流れますが……」
クルスは、ダメ押しとばかりにリ・リラに迫った。
「!!!」
リ・リラは、無念そうに周りを見渡した。
味方はいない事を確認したに過ぎなかった。
「分かりました。
そのように進めて下さい」
リ・リラは、不満そうにそう言った。
とは言え、胸のドキドキは隠せないでいた。
(やれやれ……)
リ・リラとエリオ以外のメンバーは、同時にそう思いながらも安心したのだった。




