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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
31.2つの終わりと2つの始まり

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その6

「そこで、提案なのだが……」

 国王は、ちょっと勿体ぶっていた。


(ごくりんこ……)

 オーマは、固唾を呑んでその言葉に対して構えていた。


「もう一階級上げて、准将としようと思う。

 さすれば、将官。

 バランスは取れるだろうよ」

 国王は一旦溜めたものを一気に吐き出すように、すらすらと自分の意見を述べた。


「……」

 身構えていたオーマは、ポカーンとなっていた。


「異例ではあるが、婚礼の祝儀であり、まあ、昇進の前渡しという事で、決めたいと思っている」

 国王は、ニコニコしながら続けた。


「……」

 オーマは色々頭によぎっているので、黙ったままだった。


 次兄ロンデリックにしてみれば、今回、階級を抜かされると嘆いていた。


 それに加え、長兄ヘンデリックも、これで抜かされる。


 実際、愚弟と思われていたバンデリックは、兄達に比べると出世が早かった。


 まあ、サラサの下についているせいではあるのだが、その任はきっちりと果たしていた。


 なので、2人の兄達は表面上、何も言わない。


 とは言え、セッフィールド島沖海戦の功績により、少佐から中佐へ。


 そして、今回のトット連盟への命懸けのお使いにより、中佐から大佐へではなく、更に上の准将となる。


 そうなると、義父となるオーマは、バンデリックの事が心配になる。


「私の娘の結婚の時も、娘婿を昇進させて頂いた。

 1階級であり、慣例的には全く問題がない。

 況してや、家の跡継ぎの婚姻、形式はきちんと整えなくてはならない」

 シルフィラン侯は、黙っているオーマに対してそう言った。


 迷って固辞するのではないかと思われたのだろう。


 ちなみに、シルフィラン侯の娘は、サラサより1つ年下だが、去年、婚姻を済ましていた。


 その時、相手方は、2階級の昇進を果たしていた。


 跡継ぎではないにもかかわらず、そういった配慮が行われる。


 それだけ、上級貴族の婚姻は形式が大事なのである。


 とは言え、オーマはそう言った事をシルフィラン侯の懸念を考えていた訳ではなかった。


 親バカの範囲が拡大しただけであった。


「なあに、将官になったからと言って、天狗になったりはしないだろう」

 国王の方は、オーマが何を心配しているかを察したようだった。


(確かに……)

 オーマは国王にそう言われて、頭の中にバンデリックを思い浮かべていた。


 バンデリックは、愚直で実直な人間である。


 奢ったり、威張り散らす所は想像が出来なかった。


 そして、何よりもサラサを愛し、守ってきた人間である。


 先の任務でも、命懸けでサラサを守り抜いてきた。


 そういった人間は、サラサに迷惑を掛けるような行動をする訳がなかった。


「私が受けるのではないのですが、今回のお申し出、謹んでお受けいたします。

 本人も殊の外、喜ぶ事でしょう」

 オーマは、国王の提案にそう返答した。


 尤も、これはオーマの本心ではなかった。


 2階級上がって喜ぶバンデリックの姿は想像し難かったからだ。


 寧ろ、当惑するだろう。


 だが、一つ確実な事がある。


 それは、サラサが大喜びする事である。


 バンデリックの功績が、漸く世の中に認められる事に繋がるからだ。


「よし、ルディラン侯も同意した。

 直ちに、その運びで、事を進める事にしよう」

 国王はそう言うと呼び鈴を鳴らして、秘書官を呼び出した。


 国王の政治能力は凡庸だが、人を見る目や気遣いの仕方は長けている。


 そう言った事を示すエピソードである事は間違いなかった。


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