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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
30.事後処理

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その9

「猊下、クラセックは我が配下ではございません」

 エリオは、きっぱりとそう言い切った。


(クラセックゥ!!)

(クラセックゥ!!)

 マイルスターとローグ伯は、あまりの事に彼の名を同時に心の中で叫んでいた。


「……」

 流石の法王もエリオのこの態度に唖然としていた。


「商人という者は、利を求めてさすらう者達です。

 とても、配下などに出来ません」

 エリオは、清々しい表情でそう言った。


 ……。


 当然、その場の空気がおかしくなったのは言うまでもなかった。


 そして、誰もが反応に困った。


 反応に困ったのは冗談ではなく、本気で言っているからだった。


 これは、エリオの商人に対する考えを述べたとも言える。


 エリオは、商人に対して自分の才覚で生き抜くという点で尊敬はしていた。


 それ故に、利害に敏感である。


 それは、時として回避できない対立へと発展する。


 利益を与えられ続ければ問題がないのだが、それが途切れた場合は敵対関係にも成り得る。


 そう考えると、一線を引いて対応すべき相手である。


「今回、クラセックは法国の旗の下に商売を行っていました。

 よって、我が国の意向ではなく、猊下の意向によって、事を処理するのが適当だと思います」

 エリオは、誰も口を開かなかったのでそう続けた。


 ……。


 エリオが比較的まともな事を言ったので、誰もが口を開く機会を再び失ってしまった。


「成る程、貴公の言う事は尤もである」

 法王が一番先に口を開いたのは、法王故なのだろう。


 とは言え、エリオ以外のリーラン側の人間は、納得していいのか?という風に考えていた。


 穿った見方をしているようだが、妙な理屈を付けている過ぎないと感じたからだ。


 ま、要するに、我々は責任を負いたくありませんという事を遠回しに言っているに過ぎないと感じていたのだった。


 まあ、そうだよね……。


 あっ、もっと言えば、エリオが責任を負いたくはありませんという事なのだろう。


「ならば、法国としては、現在、軟禁状態になっている商人達を全て無条件で解放する事とする」

 法王はある意味エリオの言質を得たと解釈し、逆に自分達の主張を通す事にした。


「畏まりました。

 理に適っている以上、我が国としても賛同いたします」

 エリオは、恭しくそう言った。


 ま、当然、責任を全て法国に押しつける事に成功したと思っていた。


 面倒事が嫌いなエリオは、ホッとしていたのは言うまでもなかった。


「それにしても、貴公には世話になりぱなしであるな」

 法王は、少し柔らかい表情でそう言った。


「???」

 エリオは、口を噤みながらあれ?と感じた。


 法王の口振りだと、エリオの責任分担が決まった口振りだったからだ。


 まあ、稀代の策略家もこんなものなのだろう。


「後は、シーサク王国側がどう出てくるかだが、貴公の意見をまず聞こうかな?」

 法王は、少し険しい表情に変わった。


「……」

 エリオは、呆けた表情をしていた。


 まあ、デフォルトの表情なので、特に不審がられたりはしなかった。


「……」

 法王は黙って、エリオの返答を待った。


 ……。


 エリオと法王が黙ってしまったので、変な沈黙が流れてしまった。


「クライセン公?」

 法王は、意外にも長い沈黙に確認するようにエリオに声を掛けた。


「ああ、失礼しました」

 エリオは声を掛けられて、漸く先程のダメージから抜け出たように、ハッとした。


 そして、

「予測するのは難しいですが、こちらとしては正論を述べて、説得する他ないと思われます」

と当たり障りのない答えをした。


「そうのようだな」

 法王は、安心したようにそう言った。


 法王としては、自分の意見が通ったと感じたのだろう。


 一方のエリオとしては、面倒事から逃れる事が出来ない事が確定した。


 まあ、流石に、それは虫が良すぎるだろう……。


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