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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
30.事後処理

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その6

 ネルホンド連合のグラリッチとトパーズは、エリオが乗った馬車を見送った。


 手を振ったりはしていなかったが、凝視していた。


「最強の敵だな……」

 グラリッチは、遠ざかる馬車を見ながら思わずそう言ってしまった。


「……」

 隣にいたトパーズは、無言で頷いた。


 グラリッチは、口走った時には余計な事を言ったと思った。


 だが、トパーズが頷いていたので、その考えを改めた。


「ある程度の事は覚悟していたが、そんな想定など無意味だったな……」

 グラリッチは、この際だから感じたままに言葉を続けた。


 その表情は強張っており、この先の事が思いやられるといった感じだった。


「ああ、正に『漆黒の闇』の2つ名にふさわしい人物だった」

 トパーズもグラリッチと同じような表情をしていた。


 ここでも便利な2つ名である。


「それにしても、海戦とはあんなに力量差が出るものなのだな」

 グラリッチは、渋い顔をしながらも感心していた。


「どうだかな……」

 トパーズの方は苦み走った表情を浮かべていた。


「ん?」

 グラリッチは、あまり見ないトパーズの表情を見て、興味が引かれた。


「まあ、私は素人だから何とも言えないが、素人から見てもはっきりと分かる戦いの帰結だった」

 トパーズは、表情を変えずにそう言った。


 思い出すだけで、悪寒が走る感じがしたからだ。


「……」

 グラリッチは、黙ってトパーズの次の言葉を待った。


「我々は一方的に砲撃されていた。

 それが突然、敵艦、いや、シーサク艦隊の旗艦が沈められたのだ。

 こんな事は誰もが出来るものではないと思う」

 トパーズにとっては悪夢を思い出しているのだろうか、言葉の端々に恐怖が混じっていた。


 とは言え、あの時は生命の危機を感じていた。


 なので、その危機から解き放たれたのだから安堵の感情が湧いてくる筈である。


 だが、それはなかった。


 呆気の後の恐怖だった。


 それを思い出していた。


「クライセン公の力量という事か……」

 グラリッチは、深刻そうにそう言った。


「それに加えて、その後の停戦。

 あまりにも見事すぎた」

 トパーズは、少し興奮気味にそう言った。


 情報担当としては、あるまじき行為だと言う自覚はあった。


 だが、抑えきれなかった。


「あの停戦は、クライセン公にとって良かったのだろうか?

 どう見ても、あのまま戦い続けた方が良かったと思う。

 敵を殲滅できる好機だったのだから」

 グラリッチは、疑問に思っていた事を口にした。


「いや、どうなんだろうな……」

 トパーズは、グラリッチの意見には賛同しなかった。


「と言うと?」

 グラリッチは、意外そうな表情でトパーズの意見を求めた。


「私には寧ろ、クライセン公にとっては、取るに足らない敵だと見たのではないかと感じだよ」

 トパーズはもう笑うほかないと言った感じで、苦笑いした。


 それが、却って恐れの感情を助長させた。


「おいおい、40隻の艦隊だぞ!」

 グラリッチは、更に続いた意外な言葉に驚いていた。


「いや、言い方はあれだったかも知れないが、何だかそう思ってしまってな……」

 トパーズは、何だか気分が落ち込むような感覚になっていた。


「……」

 グラリッチは先程は反論しようとしたが、トパーズの姿を見て何だか納得してしまい、言葉が出てこなかった。


「そもそも、あの戦いに関しては、最初からクライセン公は本気で戦う気はなかったのでは?

 そう考えると、全てが合点が行く」

 トパーズは今までの出来事を、頭をフル回転させて再構築していた。


「確かにそう考えると、合点が行く。

 停戦は、当初の流れに則ったものと言えるな……」

 グラリッチは、考え込むように腕組みをし、目を瞑った。


 そして、

「となると……」

と結論に至ったように、トパーズの方を見た。


「ああ、考えれば、考える程、クライセン公は恐ろしい敵だと思われる」

 トパーズは、グラリッチと同じ結論に至ったと確信した。


「こうして2人が同じ結論に至ったとは言え、まだまだ表面的なものとしか思えない」

 グラリッチは、絶望的な気持ちに陥る半面、ワクワクするものがこみ上がってきていた。


「ああ、更なる考察が必要だ」

 トパーズもグラリッチと同じ気持ちだったのは言うまでもなかった。


 こうして、人それぞれのエリオ像が造られていくのだった。


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