その3
エリオ達は、出迎えてくれた駐スワンウォーリア法国の大使であるローグ伯と合流した。
「閣下、お待ちしていました」
ローグ伯はエリオを目の前にすると、そう言って一礼した。
だが、すぐにあれ?と言う表情になって、
「いえ、『お待ちしていた』は変ですな」
と自分にツッコミを入れるように言った。
「……」
エリオは、ローグ伯の1人ツッコミを見て、力なく笑う他なかった。
とは言え、ローグ伯が直々にデウェルに来たのだから何かあるのだろうか?と勘繰ってしまってはいた。
だが、まだ他人の目がある。
なので、エリオは何も聞かない事にした。
「ローグ伯、兎に角お久しぶりです」
エリオは気持ちを入れ替えるように、ローグ伯に手を差し出した。
「そうですな、お久しぶりです」
ローグ伯はエリオの手を握り、握手した。
取りあえず、臣下同士の固い信頼感は見せ付ける事が出来ただろう。
「まあ、こんな形でしかお目に掛かれないのは残念ですけど……」
エリオは歩き始めると、そう言った。
「それは致し方ないのでは?
お互い、そういったお役目を仰せつかっておりますし」
ローグ伯は、エリオの横を歩きながら柔やかにそう応えた。
軍の統括責任者かつ外交の責任者のエリオ。
海外在住の外交官のトップである大使のローグ伯。
かつて、隣同士に住んでいた時とは違い、互いの友好関係の為に会うという訳には行かないのは明白だ。
「まあ、そうですね」
エリオは、ローグ伯の言葉に同調するほかなく、苦笑いを浮かべた。
「それはそうとして、閣下、この度はおめでとうございます」
ローグ伯は、改めて畏まった。
「はい?」
エリオは、何を言われているのか分からなかった。
まあ、これだけで何を言われているか分かる人は少数派だろう。
「嫌ですなあ、おめでたい事と言えば、陛下と閣下とのご婚約に決まっているじゃありませんか!」
ローグ伯は、柔やかにそう言った。
「あ、ああ……」
エリオは、急に現実に引き戻された気分になった。
おかしな展開である。
(確かに、婚約中だよな?)
エリオは首を傾げながら、現実の確認を行った。
取りあえず、ラ・ライレの墓を始め、歴代国王の墓にその旨の報告をしに、リ・リラと行った。
ちなみにクライセン家の代々の墓はない。
クライセン家は、基本的には水葬であり、葬儀も一般と比べると簡素すぎるものであった。
海から生まれ、海に還るという発想のものであり、決して死者を蔑ろにしている訳ではなかった。
まあ、それはともかくとして、フォーマットに則った一応の儀式は済ませている。
なので、リ・リラとエリオは婚約中という事になる。
自覚があるか、ないかは別としてだ。
こう書くと、エリオは酷いヤツだと思うだろう。
でも、まあ、エリオはこう言った人物であり、特に驚くべき事でも、非難されるべき事でもないかも知れない。
それに相手のリ・リラもかなり暴走気味であり、エリオの相手としてはある意味相応しいのやも知れない。
とは言え、果たしてこの2人が上手く行くかどうかは、この先の本人達次第である事は言うまでもない。
「???」
ローグ伯は、エリオの反応がおかしいので怪訝そうな表情になった。
照れる訳でもない。
他の事案のように、現状分析を始めてしまった表情になっていたからだ。
そんなこんなのやり取り(?)をしながら、エリオ達一行は迎えの馬車に乗り込むのだった。




