その14
さて、リンク艦隊である。
目まぐるしく視点が変わっているが、上手く記述できているのだろうか?
かなり不安である。
「総旗艦艦隊、転進しました」
ラルグが、リンクにそう報告した。
まあ、視認できているので、見ていれば、分かる事ではある。
そして、それを見たリンクとヴェルスはニヤリとした。
どうやら、エリオの意図が分かったからだ。
と同時に、2人は感嘆の表情を浮かべていた。
「なんとまあ、見事ですな……」
ヴェルスは、そう言う他ないといった感じで口を開いた。
「ああ、なんでこんな芸当が出来るのだろうか……」
リンクもヴェルスに賛同していた。
「閣下、ご命令を」
ラルグの方も分かってはいたが、報告をしている分、客観的に考えられるのだろう。
次の行動を促してきた。
「全艦、進路そのまま。
砲撃準備」
リンクは、命令を下した。
ラルグは敬礼してから、伝令係にその旨を伝えるように指示を出した。
「しかし、安心しました。
ちゃんと我が艦隊も頼りにしてくれているのですな」
ヴェルスは、苦笑いしながらそう言った。
「……」
リンクは、何も言わずに同調するように苦笑いした。
リンク艦隊の進路はこのまま行くと、ワルデスク艦隊と正面衝突する。
未来予想図にするとこんな感じである。
LCLC
ECW
F
EC:エリオ艦隊、LC:リンク艦隊、W:ワルデスク艦隊、F:フランデブルグ艦隊
エリオ艦隊が側面攻撃を実行している内に、リンク艦隊は正面から激突しつつ、左翼を伸ばしていけば、ワルデスク艦隊を半包囲下に置けるという作戦である。
やはり、頭がおかしいと思わざるを得ない。
ワルデスク艦隊が突っかかってきたのは、衝撃的な事実であった。
あ、まあ、エリオにとってだけだが……。
更に言えば、それは、自分が煽ったという自覚がないだけの衝撃なだけなのだが……。
これだと、エリオがまるでアホな子のように見えるが、事実から見るとそれは間違いが無いだろう。
ただ、そのアホな子はこう言う状況に陥っても、こうやって切り返してしまう。
しかも、未来予想図のとおり、タイミングが絶妙である。
そう始末の悪い事に、ないだろうと思いながらも予測と対処法を準備していたのである。
そして、その通りに、敵艦隊の集結前に、味方と合流して、半包囲下に置こうとしていた。
実際、現在のワルデスク艦隊は止まるに止まれない状況である。
なので、未来予想図は完成するのは間違いが無いだろう。
事がここに至って、その異常性を改めて感じざるを得ないリンクであった。
勿論、アホな子とは思っていないだろう、たぶん……。
「閣下、敵旗艦の撃沈を確認しました」
ラルグは、極めて事務的な口調でそう報告した。
「へぇ?」
「へぇ?」
リンクとヴェルスは、同時に何とも言えない声を上げて、何とも言えない表情になった。
報告は信じられなかったが、何を言っているかは認識した。
だが、さあ、これから戦いが始まるという時に、終わってしまったという感が芽生えてしまったからだ。
「脆すぎますな……」
ヴェルスは、何とか感想を絞り出したといった感じだった。
それを聞いたリンクは一気に現実に引き戻された。
「全艦、進路そのまま、砲撃準備を続行。
戦闘はまだ続いているぞ!」
リンクは、慌てて艦隊の士気が落ちないように、気を配った。
「了解しました。
命令を徹底させます」
ラルグは、リンクの意図を察してそう言った。
そして、改めて命令をの徹底を図った。
こうした配慮により、緩もうとした空気がそのまま緊張感を保ったようだ。
「今、言うべき事ではないが、こうした状況を見ると、ハイゼル侯ルドリフは、良将だったのだな。
総司令官閣下と何度も戦火を交えられたしな……」
リンクは、急に変な事をしみじみと言った。
「はぁ……、まあ、そう言う事になりますな」
ヴェルスは言っている事は分かるが、どうしてこのタイミングでと言った表情だった。
リンクにしてみれば、エリオの異常さを少しでも理解する為の行為であった。




