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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
28.アメット海海戦

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その17

「これが名将の戦い方なのか?」

 いつもの台詞を言うフランデブルグ伯がそこにはいた。


「……」

 サズーは、黙って見守る他なかった。


 今回は、お互いまだ1発も撃っていなかったからだ。


 神域という事もあり、お互い、手を出す気はないようだ。


 バルディオン王国とシーサク王国は、スワン教が民衆に多く浸透している地域である。


 なので、どちらとも、教会の権威には敏感な方であるので、こういった状態になっている。


 でも、まあ、今の状態は、困っているようで、困っていない状況である。


 と言うのは、伯にとっては、出撃を命ぜられたから来ただけであり、間違っても戦いたくはなかった。


 今回も、当代一の提督、『銀色の魔女』が相手である。


 前回と違って、正面切っての戦いになる。


 そんな戦いをするのはとても正気とは思えなかったからだ。


 しかも、監視役として、『漆黒の闇』とリーラン最強の西方艦隊も来ている。


 戦端を開けば、下手すれば、この艦隊ともやり合わなくてはならない。


(早く引き上げたいよな……。

 こんなんじゃあ、命がいくつあっても足りやしない……)

 フランデブルグ伯は、愚痴りたいがぐっと堪えていた。


 流石である。


 こういう性格なので、ここまで出世できたのだろう。


 長いものには巻かれろと思いながら、その中で、絶対に騒動には巻き込まれないようにする。


 額のしわが、その絶妙さを物語っていた。


 そして、艦隊は絶妙な距離を保ちつつ、オーマ艦隊を追撃しているかのように見せていた。


「参謀長、命じられた作戦は実行できているような?」

 伯は、いつもながら妙な質問をしてきた。


「はい、仰る通りかと存じます」

 サズーも回りくどいような言い方をせざるを得なかった。


「国際慣例上、我が艦隊は間違った行動をしてはいないよな?」

 伯は、更に切羽詰まったように質問を重ねていた。


 言うまでもないが、切羽詰まっていたのは、目前の敵にではない。


 当代一の提督を目の前にしても、それは違うのである。


「はい、間違ってはいないと、私には思えます」

 サズーは、どうしようもないのでそう言い方をした。


 伯爵の懸念はよく分かっている。


 ワタトラ攻防戦では、戦略目標を達成できたとお褒めの言葉があった。


 だがしかし、それは、「当初は」である。


 ラロスゼンロ攻略の失敗と共に、お褒めが吹っ飛んでしまった。


 表向きには、非難されなかったが、攻略失敗は、後方攪乱の甘さがあったという認識に変わっていった。


 つまり、伯の功績がなかった事になっていた。


 今回も同じ流れに乗っているのではないかと不安になるのは言うまでもない。


 とは言え、サズーにはどうしようもなかった。


 無論、伯爵にもどうしようもなかった。


 ……。


 なので、この会話の中、2人は重く沈んでしまった。


「ルディラン侯の艦隊が、南へ転進!」

 イーグが、何故か落ち込んでいる2人のそう報告した。


 まあ、話を聞いていたので、その理由は大体は分かるが、副官としての務めは果たさない訳にはいかなかった。


「動いたな……」

 伯爵は、自分の思いもあるが、目の前の変化に関心を向けた。


「と言う事は、あちらも動いたと言う事でしょうか?」

 サズーは、艦隊参謀長らしい思案を巡らせていた。


 そして、それを確認するかのように、イーグに視線を向けた。


「!!!」

 イーグは突然、話題を振り向けられたのでびっくりはしていた。


 だが、報告を受けていないので、首を横に振った。


 シーサク艦隊は、艦隊規模としては立派ではあるが、情報戦には弱かった。


 とは言え、情報戦を重要視しているのは、リーラン王国、バルディオン王国、謀略戦の副産物としてのウサス帝国であった。


 その為、この3カ国とは、情報伝達速度を始め、質・量とも負けていた。


「恐らくそういう事だな」

 伯爵は、司令官らしく現状分析を述べた。


 こう言う所は、貴族らしい。


「して、どうなさいますか?」

 サズーは同意見になった所で、伯爵に決断を促した。


「艦隊間の距離を維持しつつ、追撃を続行……」

 伯爵は直ぐに決断を下したが、当然のように、歯切れが悪かった。


(本当は、もう撤退したい……)

 伯爵は、本音は口にはしなかった。


「了解しました」

 サズーは伯爵の様子を察しながらも、決断を肯定した。


 すると、イーグは直ぐに、伝令係を通じて、関係各所に通達を行った。


(今回も作戦通り、遂行している……。

 なのに、後でまた文句を言われそうなのは、何故なんだろうか?)

 伯爵は、眉間にしわを寄せながらそう考えていた。


 伯爵の思いとは別に、命令通り、艦隊は南へ転進し、オーマ艦隊を追撃していた。


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