その8
さて、話から消えていたシーサク艦隊である。
別に、筆者が忘れていた訳ではない。
このタイミングで、話すべきだと思ったから、こうして書き始めたのだった。
今回のシーサク艦隊の総司令官はワルデスク侯爵である。
シーサク王国では、名門の一族であり、ぽっと出のフランデブルグ伯爵とは訳が違った。
一族は王国建国に貢献した13貴族の流れを汲む家系であった。
なので、王国内でも発言力があるのだった。
前回は、明らかな陽動作戦だったので、侯爵は出てこなかった。
陽動作戦としては、成功しているように見えるが、シーサク王国の上層部では評価が低かった。
と言う事で、名門であるワルデスク侯爵が出てきたと言う事だ。
今回は、王国としての面子の問題であり、しっかりした人物に指揮を委ねた。
という形を上層部として、取りたかったのだった。
「敵、第2艦隊に動きあり。
旗艦がスワン島に向かったとの事です」
副官のスライスが、総司令官である侯爵にそう報告した。
「うむ」
侯爵は、短くそう答えたが、表情は険しくなった。
このままでは、どう見ても王国としての面子が立たない状況になるからだ。
「父上、やはり、予定通り艦隊を二つに分けて事に当たるべきでしょう」
こう進言したのは、ジル・ワルデスク伯爵、艦隊参謀長だった。
伯爵は、侯爵の息子であり、次期当主であった。
作戦計画では、艦隊を二つに分ける。
一方を侯爵が率い、もう一方をフランデブルグ伯が受け持つ。
侯爵の艦隊は、一旦南に進路を取り、バルディオン王国方向へと向かう。
伯爵の艦隊は、バルディオン艦隊に攻撃を仕掛け、帰還を妨害するというものだった。
その間に、回り込んだ侯爵の艦隊が、サラサを捕縛するという案だった。
ただ、捕縛するという目標は、現実的ではない。
が、艦隊運用としては、ごく一般的な動きだろう。
「よし、分かった。
我が艦隊は、当初の予定通りの作戦を実行する」
ワルデスク侯は直ちにそう命令を下した。
「了解いたしました」
スライスは敬礼すると、直ぐに伝令係に指示を飛ばした。
その光景を見て、作戦を立案した息子の伯爵は満足そうに頷いていた。
それは、作戦の成功を確信した表情だった。




