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AIonline  作者: オズ
10/12

AIonline 10 皇帝

俺たちが戦場を歩いていると大きな狼に乗ったゴブリンが近づいて来た。


「オマエタチガ、ダイヒョウカ」


ちょっと聞き取りにくいが人語を話している。


「こいつが代表だ」


マモルが俺を指差している。

代表にこいつって言ったら駄目だろ。


「ワカッタ。コウテイガオマチダ」


俺達はゴブリンに着いて行く。

ゴブリン族のトップは皇帝なのか。

こいつら勝手に皇帝を名乗っているんじゃ・・・


「オメガ君、相手との会話は任せます」


タマコさん、それは1番損な役回りなんですよ。


「てか、なんか戦争のルールがあるっぽくね?無視して戦ったら駄目なのか?」


この3人、ただの脳筋で暴れる為に此処に来たのに、訳の分からない話し合いの場に連れて行かれそうになっている。

タマコさんは相変わらずニコニコしてるけど困っているんだろうな。


「なあオメガ、これどうすんだよ」


「流れに身を任せるしかないだろ。映画やアニメで戦う前の話し合いは見た事があるから任せとけ」


 キャパはもう一杯一杯だから考えるのを拒否している。

こんな時は開き直るといい。

相手の投げた球を打ったらいいだけだ。

会話はキャッチボールっていうだろ?

あれ?

投げた球を打ったらキャッチボールじゃないな。

頭が・・・痛い・・・



敵陣のど真ん中に案内された。

そこにはゴブリンの皇帝が大きな玉座に座っていた。

玉座の下は御輿(みこし)になっており、奴隷10人に運ばせていた。

奴隷の中には人族もいるが獣人やエルフもいた。

皆、服もボロボロで目が死んでいる。

奴隷達の周りには鞭を打つ係が何匹もいて執拗に威嚇している。


 皇帝の周りには強そうなゴブリン達が並んでいた。

将軍、騎士、魔術師、騎手、戦士、弓兵、兵士とざっと見てわかる範囲はこれくらいか。

ゴブリンの中にもホブらしき、身長2メートル近くある巨体もいる。

装備も充実しているが統一感は無く戦って奪って来たであろう物ばかりだ。




身なりの整ったゴブリンが出て来た。


「ハイ=ルプス・セバール・ジャイ・ラッテガルド・ボウ・トリストン様の御成(おなり)。御言葉を拝聴せよ」


それだけを言うと自剄(じけい)して果てた。


何だこいつら。

強い嫌悪感を感じる。

今までの人生で感じたことの無いプレッシャー。

この場に居てはいけないと直感で感じる。




皇帝は俺の顔を見るなりよく分からない言葉で話しかけて来た。

話し終わると大きな声で笑い出した。


「お前達は馬鹿だ」


流暢に人語を話している。


「朕は聖緑(せいりょく)語も人語も話せる。お前達は人語も(ろく)に喋れまい。ククク」


なんか腹立つ奴だな。

なんだよセイリョクゴって。


「お前達は低脳だが雌は子供を産む為に生かしておいてやろう。雄は一生鉱山で働かせてやろう。慈悲深い朕はこれで手を打とう」


皇帝が左手を少し上げた。

それは奴隷達に鞭を打つ合図だった。

全員2度鞭を打たれ、うめき声は聞こえるが誰も玉座を傾けさえしなかった。


「調教次第では此処まで従順になり誇りさえ失ってしまう悲しい生き物だ。朕は優しいので全てを救おう」


そして、また皇帝が左手を少し上げた。

それを何回か繰り返し笑っている。

鞭打ちを何回見せられたか分からないが俺の中の何かが弾けた。

無意識の中で体が動き皇帝に飛び掛かり剣を喉に突き刺していた。

その瞬間誰もが動けなかった。

敵も味方もスローモーションの様に飛び掛かる姿を目で追う事しかできなかった。

玉座が少し傾いた。



次に動いたのがタマコだった。

タマコは歓喜に震えながら将軍らしき人物と魔術師3人の首を瞬時に飛ばした。

この動きは誰にも見えなかった。


少し遅れたと思ったのはマモルだった。

こうなる事は奴隷がいた時点で分かっていた。

あいつは絶対に突撃する。

しかし、戦闘狂の奴らは速すぎた。

初手で爆発魔法で纏めて攻撃したかったがあいつらは前に進んでいる。

慎重に攻撃魔法を選ばないと仲間を巻き込みかねない。


気持ちを切り替えて奴隷達を守る為の立ち回りを考えよう。

呪文を言葉に出さなくても呪文を()()()()()()で唱えれば効果が発動する。

いわゆる無詠唱魔法だが、さっきこの地に降り立った魔法使いにはかなり高度な技だ。

しかしやるしかない。

戦いは既に始まっているのだから。


奴隷達の周りにいる致命傷になる武器を持っている者から攻撃しよう。

石礫(せきれき)の魔法を唱えようとすると魔法が瞬時に頭に浮かんだ。

すぐに魔法を発動できる状態になった。

まだ心の中で唱えていないのに瞬時に魔法が完成した。

10個の石礫がマモルの目の前に現れて、想像した軌道通りに刃物を持っているゴブリンの頭を貫いた。


能力(アビリティ)


マモルの初めて獲得したアビリティは魔法の才能だった。

このアビリティは魔法に関する理解力が高まるというもの。

魔法を唱えようとしただけで発現した魔法の天才。

公式(テラルーム)が把握していないこの世界の魔法に関する知識が手に入り、魔法の深淵と己の未熟さを同時に理解してしまった。

そして魔法使いの中で1番になれない事も理解してしまった。

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