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親の町工場を立て直そうとしていたが、志半ばで他界。転生した先も零細の貴族家だったので立て直します  作者: 工程能力1.33
外伝6

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第231話 国産車誕生秘話

 マイケルはメルダ自動車に勤務する設計者である。メルダ自動車はメルダ王国の自動車製造メーカーであり、その規模は世界でも有数の大きさであった。

 彼は仕事に行き詰まり、休暇を取って国立自動車博物館に来ていた。

 そこにあるのは一台の古い車。国産第一号車であり、その名前を『シェリー』といった。

 マイケルは仕事で行き詰まるたびに、およそ百年間に作られた、この車を見に来ることが習慣となっていた。

 展示される車の横に、小さな部屋がある。そこでは、この車を開発した当時のエピソードをまとめたビデオが繰り返し上映されていた。

 その部屋に入り、椅子に腰かけると、丁度ビデオの冒頭が流れ始めた。


「排気量3.0L、出力40馬力、最大速度60km/h。今では考えられないほど低いスペックであるが、当時としては革新的な技術であると称えられた車がある。『シェリー』、王妃の名前を与えられた純国産第一号車である。これは今から100年近く前に国産第一号車開発に関わった若者たちの物語である――――」


 ナレーションが始まると、マイケルはスクリーンに集中した。



――――


 メルダ王国はカスケード王国に敗北した。国土の多くを割譲され、軍を持つことが禁じられた。そして、国王は退位し、新たに即位した王の妃はカスケード王国からの輿入れだった。

 国民の誰もが、この国は植民地になるという絶望の中にあった。

 しかし、王妃は良い意味で期待を裏切る。

 戦争により多くの貴族がその地位を失ったことで、封建的な社会を改革するチャンスが訪れた。

 王妃はすぐさま役人の採用を縁故主義から、試験による実力制度に変えた。これにより、平民にも役人の道が開かれる。

 しかし、そもそも平民は教育を受けていないため、役人になったのは優秀であるが、家格の低い貴族の出が多かった。それでも、教育の無償化を段階的に進め、平民にも機会を与えることになる。

 また、職を失った軍人が大量にいたが、彼らには公共事業により職を与えた。

 国は急速に活気を取り戻していった。

 そして、その活気に比例して、王妃の人気は上昇していった。

 ところが、ある時王妃が外国訪問中に襲撃され、監禁されるという事態が発生した。神の奇跡により、王妃は無事に帰国。健在ぶりを示すパレードが執り行われることになった。

 その時、王妃の弟から送られた車両があった。当時としては画期的なショックアブソーバー付きサスペンションの馬車である。

 王妃はその乗り心地に感激すると、すぐに一計を案じた。

 予備として、もう一台を要求したのである。

 実は、これが分解のための追加の一台であった。予備の馬車が送られると、王妃はすぐさま産業大臣を呼んだ。


「10年以内に同じものを作れるようにしなさい」


 王妃の命令が出た。

 王妃は直感で、将来的にこれが爆発的に広まると考えたのである。

 産業大臣は首肯するが、内心では戸惑っていた。カスケード王国の技術の粋を集めた馬車である。それと同じものを10年で作るのは難しいからである。

 10年といえば長いようではあるが、研究開発とは一朝一夕では出来ぬものである。

 すぐさま予算が組まれ、王立研究所で開発チームが組織された。

 出身のしがらみにとらわれず、実力で集められた若者たちであった。

 しかし、開発は難航した。


 直ぐに折れるばね。

 薄くならない鋼板。

 収まらない揺れ。


 分解し、採寸したものがありながら、中々同じものは出来なかった。

 こうして時間が過ぎ、5年もしたころには、国内でも予算に疑問の声が上がるようになった。


「公共事業の予算に回すべきだ」

「低所得者向けの診療所の予算を優先すべきだ」


 成果の出ない研究への風当たりは厳しかった。

 それを抑えたのは王妃であった。


「この研究は種です。空腹を満たすため、来年の作付けのための種を、今の空腹を満たすために使えば、来年もっと窮することになるでしょう。しかし、ここで我慢をすれば、来年にはもっと多くの食糧を得ることが出来るのです」


 王妃のこの言葉で研究予算は継続したが、研究チームが要求していた増額は出来なかった。

 そして、この年研究チームに転機が訪れる。

 カスケード王国に留学していたジム・クライマーが帰国し、研究チームに加わったのである。

 研究者として優秀であり、留学先のカスケード王国からは、主任研究者待遇で残ってほしいと言われた人物であった。

 彼の参入で研究は前に進んだ。

 しかし、やはり予算が足りなかった。

 車両に使用されている数種類の鋼の成分が正確にわからず、何度も試作を重ねることで、予算の多くを消費していた。

 翌年、ジムは財務官のペーター・タッカーと衝突した。


「もっと予算をつけてくれ」

「駄目だ。王立研究所を優先するわけにはいかない。他にも重要な案件がある」

「王妃陛下肝いりの研究なんだ」

「その王妃陛下が、この研究のせいで苦しい立場にあるんだ」


 二人ともシェリーを心から敬愛しており、立場の違いから研究を成功させたい、予算編成で苦しい立場にしたくないという対立があった。


「この分からず屋!お前は研究をしたことないから、どれだけ金がかかるかわかってないんだ!」


 ジムはそう言うと、休暇を申請した。

 怒りの感情に支配されていては、研究に差し障りがあると判断したからである。

 そして、初めての休日。

 彼が街に出ると、街頭に立つペーターを見かけた。

 遠くから何をしているのかと眺めると。寄付を募っていたのである。


「王立研究所の研究予算が足りません。余裕のある方は寄付をお願い致します」


 頭を下げて、そうお願いをしていた。

 気がつけば、少し離れたところでも同じことをしている男たちがいた。

 ジムは慌ててペーターに駆け寄る。


「何をしているんだ?」


 ジムはそう問いかけた。


「国家予算はどうにもできないが、寄付金ならそちらに回せる。財務官たちに声をかけて、休日にこうして街頭に立っているんだ。それと、寄付をした者たちについては、税を優遇する法律も策定中だからな」


 ペーターは照れくさそうに笑った。

 すると、そこに少年がやってくる。


「お父さんにもらったお金、少しだけど」

「ありがとう」

「これで国が良くなるの?」


 少年がそう訊くと、ペーターは頷いた。


「勿論だよ」


 そう言って、ジムに向かってウインクした。

 その光景を見たジムは、胸にこみあげてくるものがあった。金がないことを理由に考えることを止めていた自分を恥じ、休暇を取りやめて研究所へと戻る。

 ほどなくして、魔法使い管理局から、計測の魔法使いを発見したとの連絡を受けた。

 この時代の計測機器はアナログであり、また、正確に測定できているかの検証も不十分であり、計測の魔法使いは各国とも、喉から手が出るほど欲しかったのである。

 これによって研究は加速した。

 そして、王妃の命令から9年と5か月。ついに馬車は完成した。

 王妃の前でのプレゼンテーション。王妃は非常に満足したが、それと同時に新たな課題を提示した。


「カスケード王国では、馬の代わりにエンジンで車を動かすといいます。それを完成させなさい」


 こうして次の研究が始まった。

 そして、最初の研究開始から22年が過ぎ、ついに自動車が完成した。

 王室から許可を得て、尊敬する王妃の名前を関した自動車である。

 その披露の場で、王妃は誇らしそうに語った言葉がある。


「この成功は研究者のみのものではありません。成功するかどうかわからないうちから予算をつけることで、我慢してくれた国民。足りない研究費をねん出するために、無償で街頭に立った役人、寄付をしてくれた人々。その全ての人たちのお陰で、こうして国産第一号車が完成しました。この成功こそが、メルダ国民の力なのです」


 その日のジムの日記にはこう記してあった。


『誰よりもメルダ国民を信じてくれていたのは、外国から来た王妃であった。私たちはこれからも、その信頼を裏切ってはならない』


 それから、自動車は量産されて、今ではメルダ王国の主要産業となった。また、この時の研究から、素材、工作機械、測定機器、工作油などの分野も発展し、今では多くの雇用を生んでいる。

 あの時、翌年の種を食べなかったことで、大きな実がなったのである。


 ビデオ上映が終わると、マイケルは立ち上がる。

 そして、博物館を出たところで、後輩のジェームズの顔を発見した。


「ここだと思いましたよ」

「何故分かった?」

「仕事で行き詰まったら、自動車博物館に行けっていつも言っているじゃないですか」

「そうだったな」


 その後、ランチを近くのカフェで採りながら、ジェームズの相談にのると、午後は休暇を返上して会社へと向かった。



こういうのを書きたかったのに、いつの間にか先物相場や株式相場で戦う話になっていました。


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― 新着の感想 ―
先物取引が確かに多かったし仲間が出来るのも戦争を除けばそれがメインバトルで仲間が出来るのもその時だったなぁとか 何より天才バトルっぽいのがオーロラとの仕手戦だったのでワクワクしてたけど 完結になってい…
どちらが受けるかはわかりませんが いい話だと思います。
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