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だい
一.
「これにて祓いは終了しましたぞ」
道満≪どうまん≫は、ふう、と小さく息を吐くと、後ろに向きなおった。
「おお、本当か」
狩衣に身を包んだ中年の男がほっとした表情で床に足を崩した。
「いやはや助かった。感謝しますぞ道満殿」
「恐れ入ります。それにしても」
道満は手に持った壺を持ち上げ、眉根を寄せた。先ほどまで妖が取付いていた壺である。
「大変な妖が憑いておりましたが、どこでこの壺を」
「さあ……。何せこどもの頃から家にあるもので」
「そうでございますか」
道満は壺を抱え、ゆっくりと立ち上がった。
「ひとまず、この壺は賀茂家でお預かりしましょう」
「それは頼もしい。何せ賀茂家は