プロローグ
世界は、ひとつではない。
それぞれの世界には独自の歴史があり、文明があり、そこに暮らす人々の営みがある。高度な技術を発展させた世界もあれば、古い文化を守り続ける世界もあり、その姿は実にさまざまだ。
そうした異なる世界を調査し、遺跡や文明の痕跡を発掘する組織がある。
異界発掘機構。通称ARK。
ARKでは、異世界に残された資料や遺物、未知の素材、技術などを収集し、研究を行っている。持ち帰られた成果は自分たちの世界へと還元され、その価値が新たな研究費や職員たちの給料にもつながっている。
組織にはさまざまな仕事がある。
実際に異世界へ赴き、現地の状況を調べる者。持ち帰られた遺物を解析する者。古い文献を読み解き、失われた技術を研究する者。
所属する部署も担当する業務も異なるが、彼らはいずれもARKで働く職員である。
その中でも、特殊な任務を担当するのが特務機関だ。
特務機関に所属する調査隊は、異世界へ渡って現地を調べ、必要な資料や遺物を回収する。行き先を自分たちで選ぶことはできず、どのような世界が待っているのかも、実際に足を踏み入れるまではわからない。
美しい景色が広がっていることもあれば、すでに文明が滅び去っていることもある。未知の発見に胸を躍らせる日もあれば、目を背けたくなるような光景に出くわす日もある。
もっとも、彼らは英雄でもなければ、世界を救うために派遣される救世主でもない。
調べ、記録し、持ち帰る。
それが彼らの仕事だ。
もちろん、仕事である以上、すべてが思いどおりに進むわけではない。予想外の発見もあれば、面倒な問題に巻き込まれることもある。それでも調査を終えれば報告書を作成し、回収した資料を担当部署へ引き渡す。
そうして、また次の仕事へ向かう。
彼らにとっては、数ある業務のひとつにすぎない。
けれど、その調査記録の一件一件には、確かにそこで生きていた人々の、かけがえのない人生が残されている。
これは、そんな世界を訪れるARKの職員たちと、彼らが仕事先で出会った、さまざまな物語の記録である。




