チーズ、闇を消す
翌日からスーパーマリオRPGプレイ予定「あと実質3話なんだから気合を抜くな!」
「こんなもんで、俺を、っつーか、お前……!」
「まだ間に合うって言ってるだろ、戦いをやめろ!」
「戦いをやめたら何が残るんだよ!」
体中に生えた刃が、アックーにとって肉体の一部なのかどうかはわからない。
でももしそうでないとしたら、その刃を全部折られたとしても肉体は無傷って事になる。それならそれでいいじゃないか。
「この光は、この場にいる存在全てを癒す光なんだよ!お前と俺にこれ以上戦う理由なんかどこにもねえだろ!」
「あるっつーの!」
「自分一人で何ができるんだよ、閃光の英傑だって四人一組だろうが!」
アックー、ルワーダ、ギビキ、俺。
それぞれにそれぞれなりの役目があったはずだ。
「聞いたぞ、お前俺の代わりを雇う時に報酬最大四割出すって。相当な大盤振る舞いじゃないか!」
「何を言ってるんだ、お前の価値なんか認めてねえんだよ、お前と同じ役目がうまくできるんならもっと価値があるってだけだ!」
「俺は自分がそれほどまでに役に立つ存在だって思った事は一度もねえよ、あくまでも俺はミナレさんやハラセキのついでだ、ちっとも変わってねえ!でもその上で、今俺は俺の力だけで何とかしようとしている、できてねえけどな!」
俺は弱い。
アックーに言われるまでもなく弱い。
ミナレさんみたいな剣術もなければ、ハラセキのような聖女の力もない。
ただそれでもそれなりに役目はある。
「俺はこのチーズで、みんなを守り、そして助けたい!それが大それた欲望だって言うんなら一向に構わねえ!一人でもできるんだって!」
「もういい加減、黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
今の俺を支えるのは、ハラセキの力とチーズの力。
「うつっ……えええい!」
「何でだよ、何でだ!何で腕を斬ってるはずなのに!」
「アックー、俺の答えが聞こえないのか!」
ハラセキのおかげでいくら斬られてもすぐに傷が治り、チーズのおかげで傷は深くならない。
そして俺は、このチーズをもって戦う。
「お前は常に格好よく、自信満々だった!初めて会った時、俺とは違うって思った、だから!」
「てめえ……」
「あの時のアックーはどこに行ったんだよ!」
ルワーダと共に、あのトウミヤのギルドにいた、既に「閃光の英傑」を結成していたアックー。「勇者」とか言う言葉の意味は今でもよくわからないけど、とにかく俺とほぼ変わらない年齢なのに自信に見合った実力を持つその存在はどこまでも格好よく、どこまでも素晴らしかった。
そのアックーを取り戻すべく、俺は投げた。
たくさんのニュートラルチーズと少しのビューティーチーズを。
「ふざけんな、こんなもん……」
そして—————。
「ついに来たか!」
真っ黒なアックーの体が、少しだけ灰色になった。
チーズの白さが溶け込んだそれとは違う、まだ黒めの灰色。
「お前……!!」
アックーの刃が俺に迫る。今度の狙いは頭だ。
だが、俺は逃げない、
逃げずにチーズを投げ付ける。攻撃に気を取られ隙が出来た口に目掛けて。
「てめ、ゴボッ、ガバッ…!」
溶けたチーズがあるのかわからない鼻の穴にでも入ったのか、えらくむせている。
「なんでだよ、何で俺の刃が、ああ……!!」
そして、俺の頭を狙った刃が、なくなっていた。
「てめえ、俺から、これ、まで…!」
「元々お前のもんじゃない、あのデーキに押し付けられた力だって事なんだよ!」
「許さ、ねえ……お前、は、ただ……!」
呼吸が荒くなり、同時に刃がなくなって行く。
すでに折れていた刃も、まだ健在だった刃も。
「こんな、こんなぁ!」
「アックー、もういいだろ!」
「よくない!よくないぃぃぃぃ!」
体を丸め、回転しながらぶつかろうとする。俺はなおもチーズを投げる。
自分の限界がどうとかそんな事はもう忘れた。ただ、何とかしたかった。その間にもアックーの体はどんどん灰色になって行く。
「そちらも先が見えたようだな!」
「ミナレさん!」
「見ておけキミカッタ、ツヌーク。アックーが無力化されて行く様を」
俺は振り返らない。振り返らないまま、アックーの口目掛けてチーズを投げる。
もう三ケタに達したかもしれねえ。途中から、いや最初から数なんか覚えてない。地面はもう斬り落とされたチーズでぐしゃぐしゃだ。
「ふざけるな、どうして、アックーが、アックーが……!」
「アックーに依存した戦い方しかできないからだ!」
「同じチーズを食ってたくせに…!ガキん時はそれこそパパだパパだとほざいてた甘ったれが!」
「お前はガキんちょ通り越してジジイじゃねえか!」
—————ジジイ。
キミハラ様の口から出た言葉は、オユキ様には悪いけどずっとオユキ様のそれより面白いジョークだった。
「俺らはお互いどうあがいてもただの人間だ、その事を忘れちまったのかお前は」
「ただの人間…!」
「お前はついさっきまでずいぶんと盛大に火を噴いてたがよ、そんな事ができるのか」
「何を……何を…………!」
さっきのような音はしない。おそらく噴けなくなっているか、それともしょうもない火の玉しか出ないんだろう。
「これが兄上の限界だと言う事だ。憎しみをどんなに振り絞ったとしてもその結果がこれでは、バカバカしくてしょうがないだろう」
「何よ……何よ……こんな、こんな、私が、私は、母上様に騙されてたって…!」
「そういう事だ。あの人は自分の事しか見えていない。お前もその犠牲者だ。みんな、彼女はもう無害だ。俺に任せてくれ」
どうやら、決着が付いたらしい。
後はもう、俺の番だ。




