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シックスpieceチーズ  作者: ウィザード・T
第十章 チーズは何を救う? 前編 決戦

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レインボーチーズ

「まさか、分身魔法か!」



 分身魔法。


 そう言えばあの時もデーキは自分の姿と口だけを映し本人はどこに行っていたか分からなかった。


「キミハラ様!」

「その力もチーズの力か……!」

「だったらどうして!」

「まさかと思うがレインボーチーズ食べて……」



 レインボーチーズ……レインボーチーズ!



「やっぱり重要じゃないか!さすがだぞ!」

 レインボーチーズには、そんな思いもよらぬ効果があったらしい。

「一口ではダメみたいね!」

「オユキ様!」

「私が持って来たから!さあ幻覚が見えるならばこっち来て!」

 オユキ様がレインボーチーズを持って来た。なんとかして守る……いや、俺は!




「敵総大将が突っ込んで来たぞ!」




 ——————————突っ込むしかない!


 俺はタフネスチーズをオユキ様に投げ渡し、敵陣へと突っ込んだ。


「アックーを止めるためにも!」

 キミハラ様も一気に押し込んでくれる。

「レインボーチーズを食べている者はそのまま突撃!そうでないものはいったん食べてからだ!」

「やらせるかよ!」

「やらせる!」


 俺達の戦い。俺のための戦い。負ける事はできない。負けないために何ができるか。


「さあ来い!さあ来い!」

「落ち着け!あいつはアックーに任せろ!」


 自分が身に付けた技の一つ、それはハッタリ。


「そうやって相手を引き付ける事もまた俺の役目だって言ったよな!」


 俺はチーズとも違う俺なりの技で、戦っている。



「何やってんだ!早くこっち来い!」

「しかし手柄ってもんが!」

「黙れ!俺達の狙いはコトシだ!」

「逃がさねえぞ!」

「お命頂戴!」


 瞬間的に体を動かしながら進む。決して殺す気はない、逃げればいい。


「下がれ!下がれ!」

「そんな事言ってる暇があるかよ!」

「畜生、援軍だ!援軍をよこせぇ!村人たちを斬って数を減らせぇ!」

 キミハラ様がキミカッタに斬りかかる。俺が逃げている間に戦いが俺達の勝ちで終わればいい。


 だがキミカッタも案外冷静だ。


(アックーが暴れ回る事は予想の範囲内か、そうだよな…!)


 このまま俺狙いの人間たちを全部やられるわけにも行くまいときっちり数を集め、流れ弾を避けようとしている。


 アックーが騒いでいる間にこっちはレインボーチーズを村人たち全員に食べさせたい。だからこそこっちはいったん下がりたいが、そんな暇を与えまいとしてくる。




「この野郎!」


 それでも俺自身を狙ってくる奴はいる。ニセモノ……いや本物のアタゼン。


「お前のせいでぇ!」

「そうだ、お前がギビキをぉ!」

「ふざけんな!ギビキは俺達の村を焼いた大悪党だぞ!」

「村の大事の牛まで笑顔で焼いた奴だ!」

 物理的な棍棒と、ただの声援。後者の方が今はよっぽどありがたい。

「この数を越えてみろ!永遠にひとりぼっちの孤児が!」

 十名もいないのに逃げ場などないと言わんばかりに威張る姿、おそらくはイリュージョンの力を得ているのだろうが、レインボーチーズを食べている身からすると正直スカスカだ。

「何のつもりだぁ!ギビキの仇ぃ!」

 たぶん、いっせいに棍棒を振り回したつもりなんだろう。だが実際にはせいぜい三人による攻撃だけですき間だらけであり、簡単に抜ける事が出来た。

「ああ待てこの野郎!」

「そっちは騎士様の集まりじゃねえか!どっちみち同じだろ…!」


 そして、彼らに何が待っているか。




「アアアアアアアア……!」




 アックーだ。紛れもなくアックーだ。



「おい何をやっている!俺は敵じゃない!」

「ひいい!」

「あわ、あわ、あわわわ…!」


 全身刃の魔物として俺を求めるアックー。


 おそらく、その間に何があろうが無関係—————。


(参ったな、どうしてこうも良心が痛まないんだろう)




 いい思い出はない。いつの間にかいなくなっていた両親の事で孤児だ孤児だと言われ続け、村人たちからも邪険にされて来た。ある時チーズを出せるようになってからも何度もインチキと言われ続け、何百個捨てられたかわかりゃしない。

 なぜあの時村を出て行かなかったのかと思わなかった訳でもないが、正直そんな発想が思いつかなかった。ギビキの腕のほどが分かってからはそのギビキのおまけのように扱われたけど、それでも地位は向上したと言えた。

 

「ノージ様、皆様…………!」


 ハラセキの祈りの声も聞こえる。走りながらも白い光が輝くのが見え、それだ

けでも元気になれる。


「ああ、どうしてぇ!」

「そう言えばこいつが、こいつがギビキをぶっ壊した!」

 もちろん不愉快に思う存在もいる。

 もっとも村人からしてみればギビキを殺した時点で俺は反逆者であり大罪人であり、それを守る存在ってだけでこうなるんだろう。




「アックー…………!お前、に……………!!」


 そんな俺の足下に飛んで来た、棍棒。タフネスチーズのおかげか痛みはなかったが、バランスを崩して倒れそうになってしまう。


「チャ、チャンスゥゥ……!」


 それこそ命がけの一撃のせいで、足がもつれる。


 屋敷が大きくなる。


 ハラセキが育ったと言うか幽閉されていた屋敷が。




 そしてついに倒れてしまった。ああ、土の味が嫌だ!


「よし今だ!取り押さえろ!」

 その好機を逃すまいと突っ込んでくる村人。すぐさま身を起こしまた走るしかない。



「ノージ!」



 のしかかられる前にと思っていると飛び込む声。

 ミナレさんの声。


 そうだ、ミナレさんのためにも逃げる!

「邪魔すんじゃねええええ!!」

 アックーは斬っている。


 自分の邪魔をする物を全部斬っている。

 おそらくとんでもない事になってるだろうけど振り返らない、どうせいずれ容赦なく見る事になるから。


 これまでも見たから。




(ギビキ……お前も最期は…………)




 オカマゴ村にて処刑され、血の海に沈んだ幼馴染みを見たように。




 不思議と、何の感慨も湧かなかった時のように。

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