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シックスpieceチーズ  作者: ウィザード・T
第八章 二本の刃が迫る時

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「隠居」(キミカッタ視点)

「病気だって」

「その通りなのよ、ねえツヌーク」

「はい……」


 あいつがくれたチーズで屋敷に逃げ帰った俺を待っていた母上とツヌークから聞かされた言葉は、本当に心を痛めつけるもんだった。


「ツヌーク…」

「お兄様…」

「顔の方はどうなんだよ」

「多少はましになったけど、正直まだまだ…」

「お前、顔も体もすっかり奪われたんだな。あの二人に」


 ツヌークの端正な顔立ちも貴婦人らしい体型も、そこにはねえ。


 まるで庶民の村娘のようにしょぼくれた顔立ちと髪の毛と、オバサンのメイド並に豊満になっちまった体型を抱えた女。俺の知ってるツヌークじゃねえ。


「だがあいつらはかなり強硬だ。騎士たちもそれに怯んじまって、俺らんとこにはせ参じた村人共々逃げるしかなくなっちまった」

「なってないわね!」

「聖女様がどうたらこうたらとか、そんなもんで何をひるんでるんだか。本当に腰抜けばっかりでやんなるぜ」

「本当なら二人でも三人でも斬り捨てたいけどね、それをやればあの腰抜けと悪女の下へ逃げ出すからね」

「逃げても斬ればいいじゃない」

 でもまあ、口ぶりだけは相変わらずだ。昔っから甘ったるいキミハラの事を兄として尊敬せず、ずっと俺の事を兄上兄上と慕って来た妹。剣の腕では互角か6:4ぐらいの差だったのに、そこまで人望に差がついちまうなんてよ。よくもまあ後継者気取りで居られるもんだ、面の皮の厚さには閉口するぜ。


「まあとにかくよ、兵の招集をかけさせてるんだろ?相当な数の兵たちが集まるんだからそうすりゃ鎧袖一触だよな!」

「それはもちろんよ」

「リンモウ村もオカマゴ村も滅ぼしてやる。あんなのをかくまった罪で」

「しかしキミカッタ、もう一か所従わなそうな村があるわ…」

「そうそう、ファイチ村。あそこ調べてたら税金ケチってたらナウセン団って盗賊団が暴れててざまあみろって思ってたけど、どうやらあのノージがそのナウセン団を全滅させたらしくて」

 それからノージだ。ずいぶんと勝手な事をする。

「頼んでもないのに治安維持か、本当にいいご身分だよな、もちろん報酬なんかゼロだろ?」

「ええ!」

「おそらく今回の招集には応じないか、下手すればこっちに向かって来る。ったく嫌らしい男だ」


 ファイチ村の村長だってあいつと同じだ。

 普段から村長とは思えねえようなしょぼい家に住み、村人第一とか言って自分が得るべきそれを配るような奴だった。本当お為ごかしの達人と言うか、俺らへのおべんちゃらも忘れねえ。そんなんが嫌だから少しは苦労しろって思ってボーっとしてたのによ、これでまた図に乗るじゃねえか。


「知ってるだろ、ツヌーク。貴族に必要な条件ってのは」

「誰よりも気高く、強く、そして美しくなければならぬ……」

「そうだよな。御家の当主ってのは御家の代表だ。その代表が庶民にヘコヘコするのをよしとするような奴じゃ他の家から見下されるし、庶民からもなめられる。なめられた果てにあるのは下剋上だ、こんな奴なら取って代われるかもしれねえって変な夢を抱かせる」

「その先にあるのは反乱と言う名の戦い……」


 お袋の言う通り、俺達は戦いを避けるために動いてるんだ。圧倒的な力を見せて反抗する意思を奪うために。それなのに、それなのに……!

「結局、やるしかねえんだな。本当に、もう……」

「何をここまで来てひるんでるの」

「ひるんじゃいねえよ。ただ分からず屋たちにがっくり来てるだけだよ」

 ったく。

 どうしてだよ、どうして誰もこの気持ちが分からねえんだよ。

 同じ血を受けて育ったはずのキミハラさえもあのザマで、本当に悲しい。


「あ、兄上……!」

「すまん。本当に、な……」


 あまりにも悲しくて、つい泣けて来た。


「覚えておきなさい、キミカッタ。こんな事になったのは全てあのノージと、ハラセキって言う女のせい。ハラセキはいつも他の人の前では愛想よくしていたけど、内心では今日の日を待っていた、私たちへの逆恨みを成就させる」

「あの女、そう言えば途中から浮かび上がってなんだかブツブツつぶやいていた。まるで誰か別人のような声で、エゼ……」

「そうよ。自分の身を守るためならばそこまで装うことができるとんでもない女よ。

 いい事、人間ってのは筋の通った話よりもむしろ恨みのための恨みの方が力が強いの。その事をよく覚えておきなさい」



 そんな情けない俺を守ってくれるお袋。


 親孝行の一体何が悪いのか。


 あんな庶民と小娘を優先して親たちをないがしろにするような奴など、俺はもう知らない。


「閃光の英傑も仲間に加わるんだろ」

「ああ、アックーと言う腕利きの冒険者がね」

「なあお袋、もし成功したらそいつを俺の部下の騎士団長に」

「当然です、そこまで良くしてくれるのですから。あと、私の師匠を是非」

「無論だ!」



 俺は違う!あんな奴とは違う!


 その事を、この世界の全員に教えてやる!!


「師匠と申しますと」

「おうナオムン!」

「来たのですか」

「ええ、先ほど宙に浮かんでいた、まさか、」

「そうだよ!」




 俺と、騎士たちと、アックーと、そのお袋の師匠とやらで!!

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