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シックスpieceチーズ  作者: ウィザード・T
第七章 ある結末の後に

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ホンモノの恐怖

「うおおおおおおおお!」


 アタゼンの声が森の木の葉を揺らし、木々の同類項が俺の頭目掛けて振り下ろされる。

 だが、あまりにも遅い。


「はいよ」

 いや、攻撃そのものは速いが、動作があまりにも遅い。

「この野郎!」

「あっと!」


 俺はアタゼンの腹に蹴りを入れた。筋肉質ではあるが年相応には脂肪も増えて来たその肉体に向かって放ったその蹴りは確かに命中し、アタゼンは大きくよろめいてくれた。

 だが、どうも違和感を覚えてしまう。


「どうした!」

「どうも当たりが悪いんです」


 思った所よりも、少し後になってから命中している。まるで、インチキな筋肉を付けているようだ。

「お前は誰だ」

「アタゼンはアタゼンだ!」

 俺が適当に誰何してやると、アタゼン…と名乗る存在は体勢を立て直して次の一撃を放って来た。もちろんその攻撃は俺から見ても低レベルだからあっさりかわせたが、それでも二発目を打つ気になれない。と言うか、あまりにもマヌケすぎて哀れみさえ覚える。

「正体が分からないと言うのですか」

「その通りだ、もう一回言うがお前は誰だ!」

「アタゼンだと言ってるだろうがこのマヌケ!」

「マヌケはお前だ、このマヌケ!」

「ここからあんたの村まで強行突破でも十日はかかるんだよ、ギビキが死んだのは数日前だ!どうやったらそんな情報が届くんだよ!」


 鳥でもいるのか。それとも情報伝達用の魔法でも使ったのか。いずれにしても非現実的だし、まずただの大工がどうやったらここまで来られるのか。


「うるせえ、お前らやっちまえ!」

「ギビキ様の仇ぃ!」

「ギビキ様の仇ぃ!」

「ノージに手出しはさせん!」


 全く見覚えのない男たちが、次々と俺達に襲い掛かって来る。ミナレさんが先頭に立って奴らの相手を引き受けてくれたが、その間に俺はアタゼンを何とかしなければならない。


「チーズを使いますか?」

「そうだな!」

 俺はハラセキの言葉に従い二つのチーズを作り出し、アタゼンを名乗る存在に投げ付けた。


 そうだ、俺にはこれがある。なぜ閃かなかったんだろう。


 ミナレさんの頭痛を治したり、体力を付けたり、体を温めたりするやつ以外の二つを。

 ああ、一番おいしい奴もやらない。そんなために食べさせるんじゃないから。


「フン、何だそんなもん!」

「この野郎!」

 当然避けようとするが、それでも俺は数撃ちゃ当たるのつもりで投げまくる。

 ついでに剣をナイフのように使い、チーズを切りまくって投げる。切れ味のない剣でもこんな使い方はあるのだと言わんばかりに切り分け、スライスにして投げる。俺の体験上、大きさと効果はあまり関係ない。有効時間はともかく、少しでも口に入ってしまえばこっちの物だ。


「あなたにはわかってないでしょう、チーズの力なんか!」


 山道に響くハラセキの声。優しい聖女様のそれと同じなのに、ミナレさんよりも鋭い。


「私もミナレ様も、ノージ様のチーズにより救われて来た!出会って数日の私でさえそう感じているのですから、あなた方はもっとたくさん恩恵を受けていてしかるべきでしょう!もちろん恩着せがましい事を言う気はありません、しかし!私がオカマゴ村で聞いた聖女エゼトーナ様は、村人の皆さんを決しておごらせない立派な物でした!」

「しょせんエゼトーナ様の力も一時的である、と。素晴らしい話だ」

「うるせえ!ごちゃごちゃベラベラと!ギビキのむえ、うん……!」


 その鋭い声とミナレさんの後押しにも全くひるむ事のないアタゼンの口に、ついにチーズを突っ込んだ。

「こんな、も…!」

「毒じゃないんだよ!」

 必死に吐き出そうとするもんだからその隙を突いて俺はアタゼンの足を払い、強引にチーズを押し込む。甘いのと、牛乳の味が濃いのを。

「ぶん殴る、ぞぉ…!」

「さっきから言葉が少ないです」

「あげ、あげげ……!」

 ハラセキの言葉にも必死に吐き出そうとするがそれでも強引に呑み込ませ、消化させる。


「うぐ、うぐ…!」


 二つのチーズを嚥下したことを確認した俺が飛びのく。ハラセキやあのお嬢様に食わせた時のように体が光り出し、心なしか小さくなって行く。



 そこにいたのは、確かに筋肉は付いているがさっきまでの「アタゼン」とは違う若い男。

 ギビキの父親と言うにはあまりにも無理のある、俺と二・三歳しか違わねえような男。


「ったく、せっかくの変装も台無しだな!」

「変装?」

「ああ、ギルドであった兄ちゃんからもらったシロモノで変装して、それでお前らを殺せば金貨一万枚って言われてたのにな!」


 金貨一万枚!

 まったく桁外れの報酬だ。それこそAランク冒険者を通り越したSランク冒険者のするようなレベルのそれであり、真に受ける方も真に受ける方だ。


「そんな金銭がどこにある!」

「ありませんよ、ヅケース家にも!」

「ねえ訳ねえだろ、この賞金首!そうだろ!」


 何をムキになっているのかと、少しばかり余裕こいていた。




 だがそこに出た、賞金首と言う単語。


 そしてその単語と共に、一本の光線が飛んだ!


「ええい!」

「うわっと!」

 ハラセキを狙った光線は雑魚たちを倒して手空きになっていたミナレさんが蹴飛ばしてくれたおかげで回避できたものの、それでも今まで気づけなかった新たなる敵の登場は俺達の肝を冷やした。




「フフフフ……」


 ローブを目深にかぶる、見るからの魔法使いと言うべき男。




「ノージ、ハラセキ。あなた方はヅケース家からお尋ね者とされています」

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