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シックスpieceチーズ  作者: ウィザード・T
第七章 ある結末の後に

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あくまでも真摯に

 ハラセキの誰何の声に対し吠えかかる、木のハンマーを持ったひげもじゃの男性とそれに付き従う数名の男性。


「ノージィ!よくも娘をやってくれたなぁ!!」



 ギビキの父親である、アタゼン。



「ここまでどうやって来たんだ」

「ギビキが死んだと聞き取る物もとりあえずやって来た!それだけの事だぁ!」

 アタゼンは俺をものすごい形相で見下ろしながら迫って来る。

 だが正直、冒険者である身からすると乱暴なそれだ。

「そんな乱暴なやり方で俺には勝てませんよ」

 正々堂々とか言う言葉が美辞麗句である事に気付かされる程度には俺も経験を積んで来たつもりだ。俺自身それこそ盗みこそしねえけどコソ泥みたいな戦い方をして来た以上、それなりに隙を突く事も覚えた。


「貴様……!どうしてギビキは死んだんだ!」

「オカマゴ村に火を点けて村人や牛たちを殺そうとしたからです」

「何…」

「だから、我々は彼女を捕らえた。そして村人たちの手により村の生活を破壊した罪として処刑と言う運びになった」

「はぁ」


 俺やミナレさんの言葉にも足を止める事さえせず、まっすぐ俺に向かって迫って来る。口から出る言葉は生返事と言うより呼吸のようなそれであり、正直意味などなさそうだ。


「ギビキは言ってたんです。どうして私の物にならないの?あなたは私の物、一時的に捨てちゃったけど本当は戻りたくて戻りたくてしょうがないのよね、って」

「……」

「そんな事を言いながらまるで関係ない村の皆様を襲ったのです。さらに言えばこれまでの情につけ込んで別れ際に騙し金銭を奪おうとするなど、とても真っ当な魔法使いと言うか冒険者、いや人間のやる事ではありません」

 

 そしてハラセキの言葉はもっと直截的だ。ギビキの罪を真っ正面から糾弾したそれであり、聖女様の生まれ変わりの慈愛はない。

 ハラセキ自身

「ギビキさんはすごく勝手な人です。ノージ様はいつでも自分の言う事を聞くべきお人形でしかなく、少しばかり傷つけてもいつでも戻って来るおもちゃです。おそらくはそのおもちゃが思ったよりかなり有効に、自分の目が届かない所で動いたので惜しくなっただけなんでしょう」

 とか俺らに言うほどにはギビキの事を嫌っていた。

 聖女様の生まれ変わりでさえもここまで怒り狂う程度にはギビキのやった事は凶悪なのだろう。

 


「誰か知らないが馬鹿も休み休み言え」

「残念ですけど事実です。証拠は残念ながらありませんが、死ぬ間際までどうして私に従わないのにと笑っていたという話ならばいくらでも聞けます」

「確かに、ギビキは、ノージよりずっと強かった、いや、村の誰よりもだ。だからこそ、俺とトルミは、魔法の修業を積極的にやらせていたし、時には村の柵を焼く事もあった。その度に俺達の仕事は増えた、だが別に苦でもなかった」

「ですよね!」


 その通りだ。どんなにギビキが失敗してもアタゼンもアタゼンの奥さんのトルミもすいませんと適当にこぼすだけで、その尻拭いのように平気で仕事を増やし食を減らした。


 アタゼンは大工であり、まったく教育を受けていない俺を幾度も雇ってくれた人であり、その体躯を生かして様々な物を建ててくれた人でもある。そんな訳でそれなりの地位を持っていたがそんな人でも娘には甘く、自分たちの食を削っても娘にはたらふく食わせようとした。

「そのためにお酒も減らして、ああその様子からするとまた増えたんですね、ギビキがいなくなってから!」

 またアタゼンって人は体格に比例するかのように酒飲みで、仕事中でさえも平気で飲んでいた。そのせいでかアタゼンの建物はいいが酒臭いのが唯一の欠点とか言われもしたし、俺だって子供なのに酒のにおいを覚えさせられた。ギビキが育って来てからは酒の量も減ったが、その分の金や穀物をギビキに回しているだけだと気付かない人間は一人もいなかった。




「でも、ギビキは俺達と一緒にいて一言も口にしませんでしたよ。あんなにも歓迎されたのに」




 そして、ギビキはアタゼンになつかなかった。

 別に暴力を振るう親でもなかったが、いつも魔法の使い方ばかり研究していたというかさせられていた。実際、またひとケタだった時に村に来た魔導士からギビキの魔法はかなりのポテンシャルがあると褒められていたし、俺と共に歩んだ数年間の冒険でなおパワーアップしていた。

 それでも結果的には、ギビキは一言も良心への感謝の意を示そうとしなかった。

「Aランク冒険者の家族ともなれば、それこそそれなりの恩恵を受けてしかるべきだろうに。まあ、あくまでもAランク冒険者本人の度量次第だがな」

 アックーもルワーダもそうしようとしなかったから好みと言うか方針なのかもしれないが、それでもそれなりの思いぐらいはあってしかるべきはずだ。



「うるさい!!

 お前のような、みなしごに何が分かる!何が分かる!死ねぇ!!」


 で、アタゼンの思いがギビキに伝わらなかったように、ギビキの思いもアタゼンには伝わっていない。


 衝突は、もはや不可避だった。

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