45話目【ウルダ祭 18 松本対女の子】
ラッテオ対クルミちゃんの試合に拍手を送るロックフォール伯爵とデフラ町長。
「素晴らしい。不利な体勢から見事な攻撃でした」
「昨日、チャンピオンと戦った子供が相手でしたので、勝つのは難しいと思いましたが…
なかなか機転の利く子供のようです」
「あと1試合勝てば賞品に手が届きます、頑張って欲しいですね」
「頑張って欲しいとは思いますが、少々難しいかもしれません。
次の対戦相手はチャンピオンに勝利した子供になりそうです」
「それはまた…」
「ロックフォール伯爵、そろそろ他のステージでも上位4名が決まりそうですよ」
「商品の掛かった一戦ですからね、子供達も白熱するでしょう」
「ふふ、どの子供が賞品を獲得するか楽しみですね」
貴族の視線の先には、南東ステージで戦う松本の姿があった。
ステージでうつ伏せに倒れ両手で首を守る松本。
無防備なお尻は女の子により滅多打ちにされていた。
パンパンと歯切れの良い音が響く。
「ヤアアアアアアアアア!」
「いたたたたたたたたたた、やめてー!」
なにこの子!? 倒れた後も執拗に尻叩いてくるんだけど!?
剣の平らな部分で的確に叩いてくるんだけどぉぉぉぉぉぉ!?
全然首狙ってこないじゃん!? もはや尻叩くことが目的になってるじゃん!?
ていうか、この子俺より年上っぽいけど、どういうことぉぉぉぉ!?
「マツモト君、首を守ってー! お尻は叩かれても負けにはならないから大丈夫だよー!」
「全然大丈夫じゃないんですけどー!? ぎゃぁぁぁぁぁ!」
試合としては的確なラッテオのアドバイスだが、松本の尻的には不的確である。
「あらーやっぱりこうなったかぁ…」
「カルニギルド長? 司会の仕事はいいんですか?」
「ちょっと気になって見に来たの、こうなる気はしてたのよ」
「? どういうことですか?」
「あの子、第四ブロックの中では大きいでしょ?
今年で11歳なんだけど、他のブロックで対戦させるには少し問題があって、ワザと分けてたのよ」
ステージ上では立ち上がった松本が、お尻を抑えながら全力で逃げている。
後を追う女の子は目を輝かせながら、木剣を振り回している。
「といいますと?」
「あの子、何故か男の子のお尻を叩くのが好きなのよ…」
「男の子だけですか?」
「そうなのよ。女の子との試合は普通に戦ってたでしょ?」
「確かに。1試合目と2試合目は僕達みたいに、対戦相手の女の子に見せ場を作ってましたね」
「今まではトネル君に任せてたんだけど、今回はどうしようもなくてね…」
「なるほど、それでマツモト君のお尻が犠牲になっていると…トネル君はどうしてたんですか?」
「トネル君は何故かお尻を叩かれても平気だったのよ。
少し息が上がる程度で、どちらかというと叩かれに行ってたわ」
「凄いなトネル君…」
元北の知将トネル君は、北の恥部でもあったのだ。
パンパンパンパンパン!
「いだだだだだだだだ!」
ステージ上では捕獲された尻が悲鳴を上げている。
女の子の目は輝きを増し、剣の速度も増している。
「マツモト君、首を守るんだよーお尻は気にしないでー!」
「首よりお尻の方が気になるんですけど!? ぎゃぁぁぁぁぁ!」
ラッテオの的確なアドバイスでは、松本の尻は救われないのだ。
「カルニさんマズいですよ! このままだとマツモト君が、マツモト君のお尻が負けちゃいますよ!」
「私達に出来ることは無いわ。マツモト君のお尻を信じましょう」
ラッテオとカルニの想いは松本の尻に託された。
ステージ上を全力で逃げる尻、追いかける女の子。
ぎゃぁぁぁぁぁ! お尻がぁぁぁぁ!
この子絶対お尻叩きたいだけだよ!
なんとかして攻撃を止めねば! このままじゃお尻無くなっちゃうぅぅぅぅ!
…っは!?
松本の尻に電流走るー!
女の子に剣で叩かれてお尻がなくなる?
逆に考えるんだ。 あげちゃってもいいさ と考えるんだ…
立ち止まり尻を付き出す松本、尻目掛けて剣を振る女の子。
松本はパンツに手を掛け下げる…
プリッ!
赤く腫れた生尻があらわになる。ソーセージはあらわになっていない。
「な!? マツモト君自殺行為だ! そんなことしたら直接叩かれるよー!」
「あら、可愛いお尻が赤くなってるわ」
生尻目掛け、女の子の目は光を放ち、剣は速度を増す。
勝機! ここだぁぁぁ、おりゃぁぁぁぁ!
パーン!
「いったー!?」
剣は生尻に直撃し、尻の割れ目に収まった。
「からの、ふんっ!」
松本が尻筋に力を込める、剣は固定され微動だにしない。
女の子は剣が動かせず焦っている。
ふふ…皮を切らせて骨を断つ、
いや、尻を叩かせ攻撃を断つ!
無駄さ、俺が本気で尻筋を固めたら、君では剣は抜けんよ。
「凄いよマツモト君! これでお尻を叩かれないで済むよー!」
「凄い…のかしら?」
カルニと観客は首を傾げた。
生尻に挟まれた剣を抜こうと両手で引っ張る女の子。
「おや? もうお尻を叩かないのかい? それなら剣は必要ないね…ふんっ!」
松本が腰を振ると女の子の両手から剣が離れる。
女の子は信じられないといった様子で両手を見ている。
剣を場外に投げ捨て、拳をポキポキと鳴らしながら松本が口を開く。
生尻はまだ風を浴びている。
「よくも俺のかわいいお尻を可愛がってくれたじゃ~ないの~」
「っひ!?」
逃げる女の子、追いかける生尻。
「まてぇぇぇぇぇぇい!」
「来ないでぇぇぇ!」
ステージを涙目で逃げる女の子、生尻の勝利が確定した。
「泣いてしまいましたー、決着でーす。 お尻をしまってくださーい」
泣きながらステージを降りる女の子。
生尻で女の子を追いかけ泣かせた松本は、勝利と引き換えに大切な物を失った気がした。
「やったねマツモト君、ひやひやしたよ」
「俺もお尻がヒリヒリしたよ、お尻無くなってないよね?」
ステージから降りた松本とお尻を労うラッテオ。
「ちゃんと可愛いお尻が付いてるわよマツモト君、赤くなってるけど」
心配する松本にお尻の安否を伝えるカルニ。
「あれ? 見てたんですかカルニさん」
「生尻で女の子を追いかけて泣かすなんて、他に方法無かったの?」
「仕方ないでしょ、お尻が限界だったんですから。もっと俺のお尻を労ってくださいよー」
「はいはい、回復魔法掛けてあげるから。でも勝ってくれてよかったわ」
カルニの回復魔法でお尻の赤みが引いていく。
「問題は次だけどね、何とかなりそう? マツモト君」
「いやーわかんない。さっきの子くらい強ければやりやすいんだけど…」
「クルミちゃんより確実にマツモト君の方が強いからね…」
ラッテオと松本は頭を抱えている。
「はい、回復終わり! お尻しまっていいわよ」
「ありがとうございます」
「そんなにマズいの? クルミちゃん」
「マズいですね、ラッテオの時なんて警戒して1回も攻撃しませんでしたから」
「それはマズいわね…なんとかお願いね~あと少しだから」
「わかってますよ、ラッテオも頑張ってくれたんだから何とかしますよ」
「私は戻らないといけないから、後は任せたわよ。頑張って・ね!」
「いったぁぁぁー!」
パーン! と、松本の右尻を叩いてカルニは去って行った。
「ぅぅ…右尻付いてる? ラッテオ…」
「付いてるけど、もう1回回復した方がいいかもね…」
集中して右尻に回復魔法を掛ける、松本は少しだけ魔法が上手くなった。




