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33話目【ウルダ祭 6 子供達の決着】

最初の反撃を皮切りにカイとラッテオは数の利を活かして戦いだした。

常に対角線上にゴンタを置き、同時に攻撃する。

片方が防がれても、もう片方の剣がゴンタに命中する。

カイの次はラッテオが、その次はカイが…5回目の攻撃がゴンタに命中する。


「いいぞー坊主達! チャンピオンが痛がってるぞー!」

「今が攻め時だぞー! 妹のお菓子は目の前だぞーはははは!」

「うるさいぞ、オッサン! ゴンダ様がこれくらいでやられるわけないだろ!」

「そうだぞオッサン! 黙って見てろよ!」

「そうだそうだ! ゴンタ様がんばってー!」

「なんだとクソガキ共! 俺はまだ30だ!」


攻撃が続き、カイとラッテオに傾きだす歓声。

西側の観客席前では、ゴンタの取巻き達が観客へ野次を飛ばしている。


ゴンタがラッテオへを剣を振ると同時に、ゴンタの背後からカイが飛び掛かる。

攻撃を防いだラッテオは体制を崩し倒れる。

左向きに振り返るゴンタ、飛び掛かったカイの剣が頭を目掛けて振り下ろされる


「おらぁ!」

「ぐっ、うわぁっ!?」


飛び掛かったカイを見て、ゴンタは左手の盾を力任せに振り払う。

命中するかと思われた剣は、ゴンタの左肩をかすめ、飛ばされたカイはステージに倒れる。



「いっよーし! 流石ゴンタ様!」

「思い知らせてやってください! ゴンタ様ー!」

「凄いぞー、チャンピオン!」

「相手は倒れてるぞ、追撃しろー!」



チャンピオンのパワープレーを見て取巻きと観客がが歓声を上げる。




「カイ、大丈夫!? 早く立って!」

「いたたた、うわ!?」


ゴンタの追撃を間一髪避けるカイ、急いで盾を構える。


「無理に頭を狙っても駄目だよ、ゴンタの方が大きいんだ。さっきみたいに足を狙うんだ!」

「わかったよ、行くよラッテオ!」

「いつまでも調子に乗るなよ! カイ、ラッテオ!」


体制を立て直し、再度ゴンタを挟み攻撃する2人。

決定的ではないが、ゴンタの足にダメージを重ねていく。




「数を活かして戦ってますけど、イケますかね?」

「私じゃなくて、そういうのはバトーとミーシャに聞きなさいよ」


松本の質問に悩むバトーとミーシャ


「どうかな、うまく立ち回ってるとは思うけどなぁ…まぁ、まだわからないな!」

「あれが真剣だったら勝ちなんだがなぁ…所詮は木剣だからよ。

 チャンピオンが覚悟を決めたら無理だろうな」


松本は素人ではない、幼年期から高校まで柔道を経験している。

対戦において体格差がどのように影響するか、ある程度の予測はしていた。

しかし、松本の予想以上に反応が悪い。

バトーの言葉からは松本を思いやる嘘が感じ取れた。




「おぉーっと強烈な一撃! 間一髪で防ぎましたが、ダメージが伺えます!」


松本が目を離した僅かの間にステージ上の形勢が逆転していた。

ゴンタの全力の一撃を受け止めたカイが、腕を押さえ蹲っている。

ゴンタの足に木剣を振り下ろしたままラッテオが驚いている。


「そんな…」

「お前の攻撃は弱過ぎる! 来ると分かっていれば防がなくても耐えられるからな。

 これで厄介だったカイは暫く動けないだろう…」


カイに背中を向けゴンダが宣言する。


「ラッテオ! まずはお前からだ!」


盾を捨て両手で振りかぶるゴンタ、必死に防ぐが一撃毎に弾かれていくラッテオ。

どんどん後退し、先ほどまで中央にいた2人はステージ端で睨み合っている。


「どうしたラッテオ、俺様に逆らったんだ、もっと抵抗してみせろ!」

「僕はまだ諦めてないよ」


場外を背にしたラッテオは、必死に現状を打破する策をめぐらせている。


「諦めろ! これで終いだ!」


木剣を振り下ろされる瞬間にゴンタの右脇をすり抜け、体を入れ替えようとするラッテオ。


「(抜けろ! 抜けてゴンタを押し出すんだ! 今はそれしか…) うっ!?」




右脇をすり抜けたラッテオの腹にゴンタの右腕が当てられていた。


「惜しかったなラッテオ、俺様の勝ちだ」


ゴンタの声と共に場外へと落とされるラッテオ。


「くそっ! くそっ! なんで僕はこんなに弱いだ!」


地面を叩き、悔しさを吐き出すラッテオ。




「リングアウトー! 助っ人がリングアウトしました! これで1対1、挑戦者絶体絶命ー!」


沸き立つ会場、チャンピオンへの歓声と挑戦者への声援が飛ぶ。


「へへーさまみろラッテオ!」

「ゴンタ様に敵うわけないだろ!」

「2度と逆らうんじゃねぇぞ!」


西側の観客席前で取巻き達が声を上げている。



「ラッテオ、お前は俺様に逆らって負けたんだ、明日から覚悟するんだんな!」

「僕は確かに負けたけど、勝負はまだ終わってないよ」

「2人掛かりで精一杯だったのに強がってんじゃねぇ! 残ったカイに何が出来るってんだ!

 直ぐに終わる、そこで大人しく見てるんだな!」


カイの元に引き返すゴンタ。

ようやく立ち上がったカイは盾を捨て木剣を両手で支えている。


「ごめんねカイ、僕は変えられなかったよ…後は君次第だ」



ステージ中央ではゴンタが剣を振り下ろしている。

必死に受けうるカイは限界を超えており、息も荒く反撃出来る状態ではない。


「チャンピオンの猛攻が続くー! 挑戦者、ギブアップかー?」




バトー達の予想通りになったな…

ラッテオは頑張った、あんなに感情を剥き出しにするタイプじゃないだろうに…悔しかったんだろうな。

カイも頑張っているが…正直言って勝ち目はない、1対1では勝負にすらならないだろう。

あの子達の決着は着いた。 

しっかりと見届けたよ、いやぁ若者は眩しいねぇ、

…あとはオジサンの仕事だな。 




「どこに行くんだマツモト? 芋友の決着を見届けないのか?」

「見届けましたよ、しっかりとね。 でもまだ勝負はわからないですよ~」

「なんだ、行くのかマツモト。 しっかりやれよ!」

「眩しい物見ちゃいましたからね、行ってきます!」


バトーが付き出した大きな拳に、小さな拳を合わせる。


「なんで今頃行くのよ?」

「その辺はバトーさんとミーシャさんに聞いてください」

「どういうことよ?」


不思議がるルドルフに手を振りステージに向かう松本。

会場では勝負の終わりが近づき、一段と歓声が増している。



「生意気なカイをやっつけて下さいよ、ゴンタ様ー!」

「いい加減諦めろ、往生際が悪いぞー!」


取巻き達も最高潮である。




ゴンタの攻撃を受け、ステージに倒れるカイ、木剣を放そうとしない。


「いい加減にしやがれ、お前達はもう負けたんだよ! 俺様の勝ちだ!」

「はぁ…はぁ…僕はまだ…負けてない…」


フラフラと立ち上がり剣を構えるカイ。

カルニが魔法を掛けるタイミングを伺っている。



「(チャンピオンの次の攻撃は防げそうにないわね、そろそろかしら?)」



カルニの予想を裏切り、カイが剣を振る。

見るからに力は無く、ゴンタは防ぎもせず腕に受ける。 


「…なんだこの攻撃は、こんなんで俺様が倒せるはずないだろうが!」


カイと突き飛ばすゴンタ、それでも諦めず起き上がろうとする。

ゴンタを睨むカイの目は死んではいない。


「なんだその目は! やる気だけあっても意味がねぇ!

 必要なのは力だ、強い者が偉いんだ! その強い俺様にお前は負けたんだよ!

 これで終いだ、明日から約束通りパン2個持ってこいよ!」


ゴンタが剣を構える、カイは腕を上げる力もなく睨みつけることしかできない。

カルニが杖をカイに向ける…


そしてフランスパンがステージに置かれたのだ。

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