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終わり、そして後日談、補佐官にご挨拶(ただしオレ流)


「くそーーー!!もうどうでもいいや!腹一杯食ってやる!」


カラフルな可愛い角砂糖の袋を開けて、ひとつかみ口に入れてボリボリかじった。

激甘が体中にしみこんで、たまりにたまったストレスが解放されて行く。


「ああ、これこれ、これ〜、ああ、ボリボリボリ、気持ちいー……」


次に手元にあったピーナッツチョコレートの箱を開けて、一箱ざーっと口に流し込み、バリバリ食べる。

ボックスクッキーの箱から10枚くらい取って口に放り込んだ。

もしゅもしゅ噛むと、口の中の水分が全部吸い取られる。


「うわ〜、お前甘いものばっか、よく食えるなー。

ていうか、お前いくつ?」


「うぶへえジジイ!11だ!うぐっ」


口にいっぱい頬張って、叫んだ瞬間、喉に詰まった。


「 うーーー、」


「あっ、馬鹿!ちょ、待て!水!水!」


どんどん胸を叩いていると、ツンツンが慌てて車内から水のパック持ってくる。

ごくごく水で流し込むと、意外とツンツンは優しくて、背中をさすってくれた。


「はー、死ぬかと思った。」


「なんでお前のお目付役が俺なんだろうなー、まあ、ラクっぽいからいいけどよ。

お前逃げんなよ。」


「んー……そうだなあ、家に帰ろうかなあ。

もう人殺し嫌だし。」


空を呆然と見ながら呟くと、横に並んでしゃがんで座る。

そして、優しくサトミの肩に手を回し、ポンポンと叩いた。


「何があったか知らねえけどよ、今は戦争だ、どこいたって人殺しだらけよ。

相談あったら俺に相談しろ、他に友達作るなよ?

お前逃げると俺がヤバいから逃げんな。な?

俺の為に、絶対逃げるなよ?」


は?何だこいつ、マジクソ野郎じゃん…優しいって感じた俺に謝れ。


「お前がどうなろうと知らねえし、つか、友達作るなとか、大人が子供に言う事じゃネエだろ。

お前、マジでクソ野郎だな。」


「はあ?!このガキ、それが年長者に言う事かよクソガキ!

てめえ、絶対逃がさねえから。あーー!!便所まで付いてってやる!!」


「クソ野郎にクソしてるとこ見られたって何ともネエや!

ついでに俺のケツ拭きやがれ!」


ぴょんと立ち上がると、ケツを向けてパンパン叩いてみせるサトミの挑発に、ツンツン頭が顔を真っ赤にして、バンと立ち上がった。


「付き合ってらんねえ!このクソガキ、帰る!」


「よし、じゃあ俺も家帰る!」


お菓子をバサバサ箱に放り込むサトミに、ハッとツンツン頭が我に返り、慌てて滝汗ですがりついた。


「え、そりゃ駄目だろ、俺、有罪で処刑されちまう。

お前ボスのお気に入りだし、

ボスがこないだテスト結果満点だって、すげえいいブツ手に入れたって喜んでたのに」


はあ?やっっっっっぱり中止命令出してない!じゃん!


何だこいつ、スッゲえ口が軽い。

あの野郎、人をブツ呼ばわりしやがって。

と言うか、こいつこんなに口が軽くてあの鉄仮面と同じチームって信じらんねえ。


サトミが、箱片手にツンツン頭を指さした。


「お前、軽口野郎のギルティ(有罪)だな。ギルティって呼ぶから。

俺が上司なら、お前5回くらい殺すわ」


「はあ?!」


お菓子片手に、自分の部屋に戻り始める。


「あ、待って、待ってくれよ〜!」


あのエンプティ野郎より、今の自分には幾分マシかと思う。


そうやって彼は監視役を常に付けられ、一般の部隊で身体を慣らしていった。

2度ほどギルティの目を盗んで脱走しかけたが、妙に気弱な奴で泣きながら探すので同情して失敗した。


結局、今考えても自分はボスの手の平で踊らされたんだと思う。

あの山での出来事は、自分の心に諦めを植え付けて、軍に縛り付ける事に成功したボスの勝ちだった。




—— 後日談



後日、数ヶ月後、都市部に近い部隊にいた時のことだ。


サトミは「あの人」を通じて大統領補佐官の家に招待されて、夫人にお礼を頂くことになった。

赤ん坊の顔も見たかったし、何より優しかった夫人に会いたいと思ったので、喜んでオッケーする。

だぶだぶの軍服の正装に、武器の携帯については何も言われなかったが、一本差しの普通の鞘に雪雷だけ刺して背に背負っていった。

見たこと無いほどデカい館に案内されて、ギルティはずっとポカンと口を開けてキョロキョロしている。


夫人は変わらず優しくて、他の子供たちは庭で遊んでいた。

赤ん坊は夫人に抱っこされ、もう目が開いている。

サトミはのぞき込むと、嬉しそうにほっぺをつついた。


「おー可愛くなってる、心配だったけど、無事育ってるな〜よしよし。」


「あなたのおかげよ、ありがとう。今日はゆっくりしていってね。

今日はお食事、美味しいもの沢山用意したのよ。喜んでくれると嬉しいわ。

あなたも無事のようで良かった。」


頭を撫でてハグされると、いい匂いでなんだかほんわり心が柔らかになる。

まるでお母さんのような夫人の部屋でくつろいで楽しんでいると、昼には見たことも無いような食事がテーブルに並べられた。

が、サトミにはイマイチ豪華な食事に馴染めない。

濃い甘みも塩気も遠く、辛みも無く、風味や食感など、楽しむにはまだちょっとお子様だった。


「うーん、そうだなあ…あっ、この肉うめえ。すっげえ柔らかくて美味しいなー」


「あら、ニンジンも食べなきゃ駄目よ?」


「うーん…ニンジンは俺の生涯の敵だから……食ったら駄目なんだ。きっと死ぬから。」


「まあ!悪いお兄ちゃんね。ホホ…」


ほくほくして食べてると、急に外が騒がしくなった。


「ごめんなさい、主人だわ。」


やっぱり何故か、夫人はちょっと暗い顔で立ち上がり廊下に出て行く。

激しい叱責の声を聞いて、サトミは肉を全部食べると、ゆっくり立ち上がった。


「行くのか?やっぱ、挨拶した方がいいよなー,俺達も。」


ギルティーも、ため息付いて口元をナプキンでふく。

ドアへ歩き出すサトミを追って、二人で歩き出した。


「あ、言っとくけど、補佐官殴るなってボスが。

相手は大統領の次に偉い奴だから。」


「わかってるよ、当たり前じゃん。クソ野郎でも、挨拶しなきゃマズいだろ?」


「いや、分かってるならいいんだけどな。」


ふうと息をついて襟を正す。

廊下に出ると、SPを連れたテレビで良く見る補佐官という男が、夫人に怒鳴ったあと苦い顔をしてサトミを見て舌を打った。


サトミが、ニッコリ笑顔で返す。

グーを作って口に手を当て、わあっと声を上げた。


「あっ!テレビで良く見る偉い方ですね?!

僕…、僕!お目にかかれて光栄です!」


「えっ?僕?……」


ギルティが、怪訝な顔で嫌な予感がする。

サトミが頬を紅潮させて、キラキラした瞳で妙に可愛らしくトコトコ歩くと、補佐官の前に出てぴょこんと敬礼した。


「あ……ああ、妻が世話になったとかで……?」


「はいっ!僕、奥様のお役に立てて嬉しかったです!

いつか、お偉い方たちのお役に立てるように、もっともっと頑張ります!」


ギルティの目が死んでいる。

怖くて寒風の中、氷の海に立っているような気分だ。


「うむ、期待しているぞ。」


フッと余裕を持って補佐官が笑い、手を上げるとサトミの前を通り過ぎて、使用人の皆が頭を下げる。

どこかで小さくガンッと音がして、ギルティーが補佐官に敬礼しつつ音の方を向いた。

視線を戻すと、サトミが背に手を回して頭を掻いている。フリしてる。


「ん?」


補佐官には、特に変化が無い。SPも、下げた頭を上げ静かにあとを追い始める。

夫人がようやく息をついて、サトミに微笑みかけた。


「さあ、食事が冷めるわ、部屋に戻って続けましょう。」


何か違和感がありつつも、夫人に急かされ部屋に向かう。


「お前、………なんかした?」


「挨拶したじゃん。」


「え?ん、したな、なんか気持ち悪いほど可愛かったけど。」


「昨日寝る前、練習した。良くできただろ?キシシ……」


嫌な笑い方だ。ドアを閉める時、ふと補佐官の後ろ姿に目が行く。


「あれ??」


もう一度、ジッと見る。

ハラハラと、歩く振動で補佐官の後頭部の髪が落ちて、大きく丸く剥げて行く。


「ひいっ!」


ギルティが、息をのんで部屋に入り思わず鍵をかけた。

クルリと振り向くと、サトミがまた食卓についてのんびり食事を続ける。

ギルティが滝汗で駆け寄ると、不思議そうな夫人にニッコリ作り笑いを浮かべ、サトミに囁いた。


「お、おい!てめえ挨拶だけって言ったよな!」


「だから挨拶だけって言ったじゃん。ただし、オレ流の。」


ニイッと笑う不気味なサトミに、悲鳴が出そうで口を覆う。


「どうかなさいまして?」


「い、いいえ〜、はっはっは」


「大丈夫だよ、あめ玉でカメラ先に潰したから。他はみんなクソ野郎に頭下げて見てねえし。」


そう言えば、ガンッてなんか音したな!

あ、あの音はカメラ壊した音か!

ヒヒッと笑うサトミに、ゾオッと寒気が走る。


帰るまでに騒ぎになりませんようにと願いつつ、彼らはその日無事に部隊に帰っていった。


その後しばらく補佐官は、何故か公式の場で突然帽子を着用し始め話題となったが、ある日強風に帽子が吹っ飛び突然はげた頭の写真がスクープされた。


サトミはタナトス入隊後、部隊のトップに最短で駆け上り、そして終戦時の混乱の中で彼の部隊は、補佐官暗殺にも関わることになる。



——— と、言うわけさ、


俺の「ひどい目に遭った」って話、マジありえねえだろ?

ま、こう言うこともあるって事よ。

いつだって、ボケッとしてたらあっという間に死んじまう。

敵も味方も関係ねえ、戦争なんて、そんな物。……ああ、嫌だ嫌だ!!


てめえら、クソみたいな平和が一番だってことさ!ハハッ!!


じゃあ、またな!!



速達配達人 ポストアタッカー 3 〜外伝 大人は全部クソ野郎だ〜 


おわりだっ!!黒蜜、行けーー!!



ドンッッ!!

それは一瞬過ぎて、誰も気がつかない。

すました補佐官も風かな?ってくらいの剣さばき。


ニッコリ笑えば、11歳のまだあどけなさの残る子供で、

ニヤリと笑えば、11歳と思えない魔神のような悪らつさ。

それがサトミなのでした。


子守歌を歌いながらの戦闘シーン書きたいだけという、個人的な事だけで書いた今回の話。

いかがでしたでしょうか?

本編とちょっと離れた戦時中の外伝、ノーサンキューの方すいません。

次は、きちんした本編でお会いしましょう。

さらばっ!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 泣きながら探すギルティ可愛い、オッサンの筈なのにw [気になる点] やっぱりボスは中止命令出してない外道でしたか、補佐官みたいに頭さっぱりしましたかね?(真顔) [一言] 過去の話なので結…
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