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月子さんが普通じゃないと


 生徒会長は初っ端からケンカ腰のカオルに申し訳なさそうな顔をして、少しばかり上目使いで見つめた。

 そんな顔を見た女生徒たちが「きゃー」と騒いでいるのが聞こえてくる。

「意地悪や困らせるつもりじゃなかったんだ。ただ、」

「ただ?」

 冷たい声で生徒会長に詰め寄るカオルを、男子生徒たちが茶化す声がする。

 とにかく、そんな女生徒の声も、男子生徒の声も、カオルには聞こえなかった。

「君に、その」

 しどろもどろの生徒会長を「君などと呼ばれる筋合いはない」と言う顔でカオルが睨んでいる。

「ヒントを」

「ヒント?」

 やっと答えた生徒会長の口から出た言葉は「ヒント」だった。カオルにはさっぱり意味が分からない。どういうことかと訝しんで考えている姿を、先生たちがニヤニヤして見ている。

「月子さんが普通じゃないというヒントですか?」

 カオルが低い声でそう言ったので、そこにいた先生も生徒も生徒会長もみんなが、ハッと息を吸った。

 やはりわかっていたのか。

 それとも、今わかったのか。

 とにかく、カオルは、月子さんが“普通ではない”と言ったのだ。

 正解だ。


 生徒会長は落ち着きを取り戻して、頷いた。そして、種明かしをしようと口を開きかけたところで、カオルが先に喋り出した。

「みなさん、月子さんが普通じゃないというのは気付かれているかもしれませんが、それをこんな、全校生徒の前で暴露してしまうのは、酷いことだと思いませんか?」


 はあ!?


 学校全体が“はあ!?”となった。

 しかしカオルは気にせずに続けた。

「実はこういう団体があると言うのを知っている方も多いと思います。それは、ロボット派遣団体です」

 生徒会長はあっけにとられてカオルを見ている。しかし“ロボット”という単語を聞いて、少しばかり反応した。

「ロボット派遣団体の主な目的は、不登校児への支援です。不登校の理由の半数以上はイジメがからんでいます。しかし、いじめに合ったことを正しく理解し第三者に伝えることは、子どもにはほとんど不可能です。そこで、開発されたのがこの月子さんのような、精巧なロボットです。ロボット派遣団体は、不登校児の代わりにロボットを登校させ、色々なデータを集めてきます。どうして学校に行けないのか、イジメやそれに準ずるデータがないかを数日から数か月を要して学校で集めるのです。

 イジメの場合でなくても、どのような場合に、学校でまたは登下校時に不都合を覚えるのか、ヒトとの付き合いのどんなところが上手くいかずにストレスを溜めるのか、そういったことも分析できます。

 そういった立場である月子さんを、このようにさらしものにするのは、どうかと思います。そっと見守ってあげなければならないのではないでしょうか。

 みなさん!月子さんは、今、本人がここに来ていませんが、同じ学校の生徒です。本人が来ることができるようになったら、どうぞ暖かく迎えてあげてほしいのです!こんな風に、人前に引っ張り出して尋問するなんていけないことだと思いませんか?」

 カオルの演説に学校中の人間があっけにとられていた。

 こぶしを握って熱弁をふるったカオルが下を見ると、壇上を見上げている顔にハテナがくっついているのが見えた。


 変な・・・

 とらえどころのない、行きどころのない空気が漂った。

「えー・・・コホン。あれ?」

 カオルは咳払いをして、それから生徒会長と月子さんを交互に見やった。


 月子さんは今までと一ミリも変わらない姿で立っているものの、生徒会長はやっとカオルの言葉を理解したらしく、深呼吸を繰り返していた。




次回ガッツリ種明かしです。

明日投稿します。よろしくお願いします。

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