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5.働かざる者食うべからず。ということで、メイドになった

「サクラ、何をしている」

魔王様が、城の廊下の清掃中に声をかけてきた。

「というわけで、メイドになった」

「何が、というわけだー!」

「とりあえず、居候なので仕事をしている」

「なるほど」

「暇つぶしになるし、ボーっとしているわけにもいかぬ」

「感心、感心」

「足手まといになるので、簡単なとこだけをさせてもらっている」

「それも、そうだな」

「メイドとしてメインの仕事は、城の真ん中にある広場に時々来るらしい害虫の駆除だ」

「それは、騎士たちの仕事だろう」

「ラフレとローズちゃんに誘われた」

「ローズちゃんー!?」

「年下の女の子は、ちゃん付けが基本だと言ったら、それがいいと言ったので」

「母上...」

「じゃあ、仕事に戻る」

魔王様と別れて、廊下の清掃の続きをした。

魔王様はまだ何かブツブツと呟いていた。


メイド仲間との昼食を食べ終えると、ラフレとローズちゃんに害虫駆除をするぞと誘われた。

城は円形になっており、その中心に広場がある。

害虫が侵入する時以外は、街の子どもたちが遊ぶよう開放しているそうだ。

城には警備兵もいるし、城付近の子どもたちは基本的にここで遊ぶ。

急いで、城に来ている子どもたちを城の中に避難させたので、これから素早く害虫駆除を行うようだ。

今日来ているのは、龍国からの龍人だ。龍化して、ここに飛んできたようだ。

私は箒を持ち、窓の外を飛び出した。ちなみに、ここは三階です。

ラフレとローズちゃんも同様だ。

私は思いきり力を込めて、箒を龍の首に叩きつけた。まっすぐに地面に叩きつけられる龍。叩いた時の反動を利用し、宙に浮く時間を確保し次の獲物に狙いを定めた__。


*****************************************


その頃の魔王城(魔王様視点)


執務室に戻ると、宴会場になってた。みんなで、外を見て酒盛りをしている。

真面目なメイド長や執事も交じっていた。

何がどうしてこうなってるんだ?

「サクラ姐さん、いっけー!」

「ローズちゃん、カワイイー」

「ラフレ様、相変わらず口から出す炎が絶好調だな」

「ラフレ様、相手が龍人だから嫌がらせに口から炎を出してるよな!」

外を見ると、サクラと父上と母上が龍人相手に、圧倒的な力の暴力でねじ伏せていた。

数だけでいうと、龍人が有利だ。だがしかし、力だけでいえばこちらが絶対的に勝っている。おかしいな。なぜか数が少ない魔人側が、弱い者いじめをしているように見える。もう一度目をさすって、外を見ても状況は変わらない。


「メイドの仕事は、城のお掃除ー!」

サクラさん!?奴らをゴミ扱いですか?

「この程度で儂に勝てると思うてか。小童ども!」

と言いながら、父上は口から炎を吐きだした。龍人相手にどんなイヤミー!

「......」

母上、無言で笑顔を振りまきながら、目玉に傘の先を突き刺すなんてなんて恐ろしい。怖すぎる。

俺が心の中で突っ込んでいる間に、宴会場は絶好調。執務室なのに。メイドが、酒のつまみを持ってきて、宴会に混じる。確かに執務室は外がよく見えるよう、ガラス張りだから、絶好のポジションだ。


近くにいた騎士団長に訊いてみた。

「すごいな、サクラは。人族なのに、宙に浮いたままを維持している」

「サクラ姐さんは、あの程度は元の世界でできないと死活問題と言っていましたよ」

「異世界とは、恐ろしいところだな。だからこそ、この世界にすぐに馴染んだのか。ん?サクラ姐さん?」

「私たちより強いので、そう呼んでいます。ご本人の許可済みです」

「そうか...ひょっとしたら、サクラが本物の異世界の魔女なのかもな」

そう俺が言うと、宴会場と化した執務室が急に沈黙した。えっ?間違ったこと言った?

「魔王様、サクラ姐さんが本物の異世界の魔女だって気が付いていなかったのですか?」

「マジでか?」

「はい。マジです」

「坊ちゃま」

執事のセバスチャンがどこか憐れむように俺を見てきた。

「坊ちゃまの幼少のころよりお仕えし、教育係も務めてまいりましたが、私の話をちゃんと聞いてなかったのですか?」

「そんなことは」



・・・異世界の少女が二人同時に召喚された時、

   それは、召喚を行った国が間違いを起こした時だ。

   一人は、異世界の魔女。もう一人は、国に混乱をもたらす傾国の美女。

   傾国の美女は、間違った国を心行くまで弄んで破壊する。

   異世界の魔女は、自由気ままに異世界生活を送る___


           「異世界召喚とは拉致  著:アリッサ・エイムズ」より



「というわけです、坊ちゃま」

「魔王様、忘れていても魔国に関係ありませんので仕方ありません。サクラ姐さんによると、著者は異世界の者ではないかと」

「そうなのか?」

「おそらく。この世界には、エイムズという名字は存在しませんし」

「セバスチャンがそういうなら、そうかもな」


窓の外を見ると、害虫駆除が終わったようだ。にしても、あの三人は、何者だ?

あれだけ激しい戦闘をしても、返り血一滴も浴びていない。

あの三人は、俺には理解できない生き物なのだろう。


*****************************************


害虫駆除も終り、ラフレとローズちゃんと魔王様の執務室に行くことにした。

見ているだろうが、見ていない時のための結果報告のためだ。

ラフレは扉のノックもせずに、「息子よ、入るぞ」と言って執務室に入っていった。

「父上、せめて扉のノックぐらい」

「堅い奴じゃな」

「常識です。ところで、奴らを撃退するためになぜ魔法を使わなかったです?」

「「「えっ?」」」

「いや、魔法を使われなかったなと」

「それはな。サクラが、『戦闘能力を同じ条件にしたほうが、相手に精神的ダメージをよりよく与えられますよ』と言ったからじゃ」

「エグッ! なんてエグすぎる方法をとってるんですか!」

「この方法をとれば、すぐにまた来ることはないと思う」

「なるほど。そういう狙いがあったのか」

魔王様は、納得いったように何度も頷いています。

納得したのを見て、理由の95%が相手の精神を抉るというのを言えなくなった。

それに、ラフレとローズちゃんの目が言うなと言っている。言わないことにした。


私は執務室を出て、汗を流すために温泉に向かった。

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