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3.とりあえず、魔国に行ってみた

城の脱出は、思った以上に簡単すぎた。

私ぐらいになると、あの程度の警備ではざるです。これなら、元の世界のデンジャー・フットの友人たちは楽勝でしょう。中には、ねこけながらも脱出できる人もいます。正直、あの人なら絶対確実にやりそう。相手を馬鹿にするために。


移動手段は、商品を販売する馬車の中に忍び込んで縮こまっていること。これを繰り返して、魔国に移動する船の中に忍び込みます。忍び込む方法は、どこぞで有名な『魔法・透明マント』を着ることです。これなら、バレない。

この移動中に、図書館で複製した本『エバーサンタ創世記』を読んでいたのだが、この本を読むと、どうやら異世界の魔女は私だったようだ。メンたちの私への態度を見ると、私が本物の異世界の魔女だと名乗る気はない。私は素敵な夢を魅せるべく、メンたちには毎日悪夢を見る呪いをかけた。私以上の魔術の使い手でないと呪いを解くのは不可能です。


魔国へ行くための馬車での移動中、馬車の外からの会話で魔王城に向かっていることが分かった。

私は、魔王城に入る前にその馬車からそっと降りた。

これから居候する予定のとこに、はじめから侵入するつもりはない。

初対面は礼儀が大事だ。私はその礼儀にのっとって、魔王城の門を叩いた。

そうすると、門番が出てきたので、「人間国で召喚された異世界の少女です。魔王様に会えます?」と訊いた。

門番は、「ちょっと、待ってろ」と言って、城の中に入っていった。

しばらくすると、その門番は戻ってきて「ついてこい」と言った。

その門番についていき、とある広間まで案内された。門番は扉をノックして、中に声をかけた。

「魔王様、異世界の少女を連れてまいりました」

「御苦労、入れ」

「失礼します」

広間に入ると、玉座に座っている魔王様に声をかけられた。

「お前が異世界の少女か?」

「はい」

「それなら、なぜここにいる?」

メンたちに、殺されそうになったからです」

「ほぅ。あの国では、巻込まれて召喚された者を手厚く保護する法律があったはずだが。なぜだ?」

「人間国で異世界の魔女のご機嫌取りたちに、なぜか睨まれまして。殺される前に、とりあえず魔国に逃げればいいかなと」

「軽っ!」

メンたちを潰してもよかったのですが、それだと地位の高い奴らに目を付けられますし」

「イケメンとはなんだ?」

「美形の人のことです」

「なるほど」

「異世界の魔女のご機嫌取りたちは、顔だけしか取り柄のない無能だったんですけどね。ところで、魔王様に質問があります」

「なんだ?」

「人間国やその他の国を滅ぼすって本当ですか?」

「ストレートに訊くやつだな。そんなつもりはない。自国のことで手一杯だ」

「なるほど。魔国を乗っ取るための方便なんですね」

「おそらくな。奴らは、今でもこの国を支配しようと虎視眈々と狙っている」

「もう一つ質問です」

「ん?」

「なぜ、人型?」

「魔人を何だと思っているんだ。人型なのは、当り前だろう」

魔王様は、何を言ってるんだ?と呆れていました。

「この世界に異世界から召喚されて、この世界の常識は知らないもので」

「それもそうか。ところで、お前は魔法を使えるのか?」

と言われたので、どこからともなく元の世界で拾った『魔術書』を取出しました。

魔王様は驚いたようで、

「その本どこから出した!?」

私は、上に手を伸ばして宙を彷徨わせると、

「ここからです」

と言うと同時に、元の世界から持ってきたお菓子を取出した。

「おかしいだろー!」

とツッコンだ。

せっかくだから、魔術を披露してみようかと思い、魔術書を持って魔力を発動させると、魔術書は美少年に変化へんげした。

「父上!?」

「久しぶりだな、息子よ」

「死んだのではなかったのですか!」

「愚か者。あの程度で儂が死ぬわけなかろう。人間どもの悪辣卑劣な罠により、隙を突かれてな。何とか逃げて、この娘に拾われたわけだ」

「その悪辣卑劣な罠とは?」

「そこに美味しそうなお菓子があったからだ。そのお菓子を食べたら体が動かせなくなり、命からがら逃げたわけだ」

「あんたはアホか!」

「いや、あのお菓子は実に出来が良くてな」

「あの時、心配した俺の心を返せー!」

「スマン、スマン」

とのらりくらりかわしていた。するとその時、美幼女が広間にはいってきた。

美幼女は、全力で美少年に向かって走ってくるとバックドロップを食らわせた。そして、美少年が倒れて痛さに悶えていると、脇腹を容赦なく何度も蹴りつけた。

「母上、もうおやめ下さい。これ以上すると、父上が本当に死んでしまいます」

「仕方ないですね」

最後に、脇腹に今まで以上に全力の蹴りをして、不満な顔をしてやめた。

美幼女が蹴りをめると、美少年はすぐに復活した。

「ところで、息子よ。この娘には世話になった。残念ながら、元の世界に帰ることができない。この国で暮らしてもらう」

「しかしこの娘は、人間ですよ」

「儂は、本にされてこの娘の住む異世界に飛ばされた。この娘がいなければ、儂はこの世界に戻れてないし、一生本のままだ。それにな、この娘は私に悪辣卑劣な罠を仕掛けた馬鹿どもに、一矢報いてくれた。」

「それは、あんたのは自業自得だろ...分かりました。その娘をこの国で保護しましょう。娘、お前の名はなんという?」

「サクラ・カンザキです」


こうして、私は魔国に保護されることになった。

今度、メンたちに遭った時には、彼らの大好きな愛野愛美さんに情けない姿を晒させようと思った。

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