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【恋人物語】 «男女比が狂った地獄みたいな世界で頑張ります»   作者: 三代目焼きそば定食


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13/13

壁の外



かつて世界には12241個の、


核兵器があった




『メッセージ発信、シスター・アサ』


『夜分にすみません、今少し、いいですか?』


『ええ、構わないわよぉ、豚♪』


『ありがとうございます』

『単刀直入にいきます』

『今夜のシロトへの処置に』

『カイの立ち会いも許可してもらいたいです』

『どうか、お願いします』


『シスター・モエに話をしてみるわ』

『少し待ちなさい』


『ありがとうございます』


『ヤマト』

『貴方は大丈夫?』


『はい』


『そう』



メッセージウィンドウを消し、息を吐く

俺は、胸に溜まっていた、黒くて、ドロドロして、重いものが、幾分か、軽くなっているのを感じた。

一人ではどうやっても、変わらなかったソレが変化したのは、間違いなくカイのおかげだ。

だけど、その代わりに、彼に俺と同じモノを、胸に抱かせてしまった事を、申し訳なく思う。


「シスター・アサはなんて?」


「シスター長に話してくれるって」


「…そう」


みんな、「そう」って言うんだな、その二文字にどれだけの言葉を込めているんだろう、と、埒もあかない事を考える。


場所は、夜の庭園、少し風が吹いてきて、その少し肌寒い感覚で、今が春の夜である事を思い出させてくれた。

そして、だからこそ、俺の腕にしがみつく様にして、抱きついているカイの体温がより一層感じられ、それが救われるくらいに温かった。


「………」


「………」


二人で無言で月を見上げる時間が、しばらく過ぎ、



『メッセージ着信 シスター・アサ』


『許可が出たわ』

『連れて来なさい』


『わかりました、ありがとうございます』



ウィンドウを消し、カイに目を向ける、


「許可が出たよ……本当にいいんだな、カイ?」


「うん、もう、ヤマトくん一人に背負わせたくないんだ、だから…大丈夫」


全然、大丈夫じゃないだろ、とは決して言えなかった。


だって、俺も、


そうだったんだから…



施設内にある「保健室」と呼ばれる医療区画を、カイと二人で歩く。

相変わらず、ここは、静かで、真っ白だ。


体内のナノマシンによって、人間はほぼ全ての病気を克服した。

医療が必要になるのは、主に、外傷と、精神的な障害がおきた時になる。

その外傷も、ナノマシンによる強化によって、過去の人間とは比べものにならない程、早く治癒する。


例としては、個人差はあれど、骨折なら一週間程度で治ってしまう。


「おっ!来たね!ヤマト様!カイ様!こんばんは!」


「シスター・エリ、ここは保健室です、お静かに」


「いや、アタシら以外、殆ど誰も居ないのに、誰に気を使ってんのよ」


「私は、一般常識の話をさせて頂いています」


「アサは相変わらずだね」


夜の医療区画に、場違いな程、明るく元気なシスターともにシスター・アサが出迎えてくれた。


「シスター・エリ、シスター・アサ、今回は、僕の立ち会いを許可してくれて、ありがとございます」


「何?何?カイ様まで、そんなに固くなちゃって、ダメダメ、ココではスマイルが1番の薬なんだから!ほーら、笑って笑って」


「ひゃ!ちょ!あは、やめ!あはは!」


「ほれほれ、ええんか、ここが、ええんか、なあ…」


ドゴッ!!


「へぶらぁ!!」


「いい加減にしなさい」


乙女としてあるまじき声を出しながら、シスター・アサに腰の入った、完璧な角度のリバーブローを叩き込まれ、ブルブルとしながら腹を押さえて蹲るシスター・エリ。

先程まで、カイを好色なオッサンそのものの顔で、くすぐっていたこの女性も、13人のシスター達の一人である。


シスター・エリ

身長は俺と同じくらい、肌は黄、髪はオレンジブラウン、目の色はブラウン、フィギュアスケートの選手の様に、スラリとした肢体をしている。

とにかく陽気で明るい雰囲気が、太陽光のように放射されているような女性だ。


「相変わらず、元気そうで良かったです。シスター・エリ」


「アレ?今の流れで、笑顔で、私にそう言うの?ヤマト様?

何かアタシの扱い雑くない?」


「いや…なんか、もう、慣れちゃって」


「やだやだ!もっともっとアタシにかまって!褒めて!優しくして!それでついでにお嫁さんにして!お妾さんでもいいよ!」


ゴッ!


「…コロスゾ…」


「…はい…調子に乗りすぎました…ごめんなさい…」


シスター・アサの肘を頭に喰らって、蹲りながら謝罪する、シスター・エリ。

今までの流れでは想像が付きにくいが、彼女は保健室専門のシスターである。

つまり、ドクターということだ。


ナノマシンによって、超健康優良児が席巻するこの世界で、彼女と関わりが深い男子は、過去ココの常連であった俺くらいなものだろう。


だが今はそれよりも、


「シスター・エリは、俺達を元気づけようとしてくれたんですよね、ありがとうございます」


彼女に感謝するのが先だろう、

実際、今は、彼女の変わらぬ明るさが、ありがたくて堪らなかった。


だから、せめてもの感謝が伝わりますようにと願いを込めて、


「大丈夫ですか?…はい、どうぞ」


まだ、頭を押さえながら、プルプルと震えるシスター・エリの頭を優しく撫でてから、笑顔で手を差し伸べ、支えながら彼女を立たせてあげる。


「アッ…ハイッ…アリガトウゴザイマス…♡」


そうすると、シスター・エリは、顔を紅く火照らせながら感謝を返してくれる


「………」


「………」


ん?なんかカイとシスター・アサの方から、すげぇ冷気が漂っているような気がする、冷房か?


「こほん………それじゃあ行きますか」


シスター・エリは居住まい治し、保健室の奥の区画へと俺達を先導していく、


シロトがいるところへと、ゆっくりと、



俺とシロトとのエクスカリバーのリンクに関して、その危険性故に、シスター達は許可する際、一つの罰則つきの誓約を求めた。


エクスカリバーを展開するのは、必ず俺であること


以上だ。


当然の要求だ、もしシロトがエクスカリバーを展開し、それに対して、もし俺以外の男子がリンクしてしまったら、その時点で暴走が発生してしまう。

だから、俺もシロトもこれを受け入れた。


受け入れた筈だった…



「脳波の安定を確認…エクスカリバーは、どうですか?ヤマト様」


「…シロトのエクスカリバーの展開が、止まりました、シロトは………完全に眠っています」


「ああっ…シロト兄さん!」


シスター達との誓約に反した際の罰則は、


違反した場合、シロトに特殊な睡眠薬を注入、強制的に意識を奪い、シスター長の許可があるまで眠らせ続ける


というものだった。


俺はシロトが入っている、目の前の大きな銀の筒を見る、本当にただの筒だ、説明されなければ、これの中に人間が入っているなど誰も思わないだろう。

この銀の筒がシロトの今の姿だった。


「シスター達に心から感謝します。俺達に…いや、俺に気持ちを整理する時間を与えてくれて…本当にありがとうございました」


俺は、銀の筒を見ながら、はらはらと泣くカイの隣で、シスター・アサとシスター・エリに深く深くお辞儀をしながら頭を下げる。


シロトのモニターをしている機器から、星力の使用が検知されたのが今朝未明、

本来であれば、その時点で問答無用で罰は下される。

だが、シスター達は俺の心情を考慮して、昼にシスター・アサを通して俺にのみ説明、箝口令を明示されたが、俺は耐えられずカイに相談、

それすらも赦し、カイの同席すら赦し、

今この時間まで刑の執行を猶予してくれた。


そんな彼女たちに対して、頭を下げる以外に何ができるというのだ。感謝以外の何を思えというのだ。


「…うん!ヤマト様も、カイ様も、もう夜も遅いから、悲しい事とか、しんどい事とかは、明日考えて、今日はもう寝よう!」


「そうですね、それがよろしいかと…エリ、アナタはカイ様を部屋へ送ってさしあげなさい、私はヤマト様を送って差し上げるわ」


「了解、さっ、カイ様、お部屋に戻りましょう?」


「…はい」


「カイ」


「?」


「また、明日な」


「…うん、また明日ね」


お互いに目を真っ赤に腫らし、涙の跡が残るぐちゃぐちゃの顔で、少しだけ笑い合いながら、俺達は明日の約束をした。


カイがシロトがいる部屋から出て、その足音が完全に消えるまで、俺は目をつむって、その笑顔を決して忘れないように心に刻んだ。


「…私達も行くわよお」


「はい」


こうして俺は、シロト・リュートと完全に決別することになった。





「………私は、反対したわぁ」


「………」


少し外の空気を吸いたいという俺の要望で、庭園を通って宿舎に戻ることになった、その途中、

シスター・アサが俺に向かって声をかける。


「…豚が、あの白の豚と繋がると聞いた時、私は強く反対したわぁ」


「………」


「…きっと、豚が傷付くことになるから、止めてと、私は何度も反対したわぁ」


「…そう、でしたね…」


「…白の豚も、黒の豚も、金の豚も、皆、皆、」


「………」


「貴方に甘えて、縋って、駄々をこねるばかり…」


風が強く吹いた、空を見れば、満月は雲に隠れようとしていた、遠くにはいつも見える壁が見える


「…シスター・アサ」


「なぁに」


「外の世界って、本当に核戦争で滅んでいるんですか?」


「そうよぉ、280年前の核戦争でねぇ」


「ここは、地上シェルターで、あの壁はドーム型のシールド発生装置…ですよね」


「ええ、あれでぇ人間に有害なモノを、全て防いでいるのぉ」


「それで、俺達男子は人類の絶滅回避を目的として、人工授精と人工子宮で生み出された子供」


「ええ、だからぁ、皆、同じ誕生日なのよぉ」


「人類の絶滅回避が絶対的な目標、だから、いずれシスター1人に対して、複数の男子達が結婚して子供をつくり、人口を増やす」


「……べっ、別にぃ、一対一の結婚だってぇ、いいのよぉ…うん、ちゃんと許可されてるしぃ、子供さえできればぁ……うん…ゴニョゴニョ」


何かゴニョゴニョ言っている、シスター・アサを見る、真っすぐと、強く、その薄いブルーの瞳を、




「…核戦争って、嘘ですよね…」





先人達の偉大さを痛感する日々です。どうしよう…とりあえず、ぼちぼちやってみます

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