おくりびと
どうも『億り人』です。カイトです。
プラスちゃんが絶命してすぐ、プラスちゃんの友達だという、
別の女神がオレの前に現れた。
彼女曰く、今回のことは色々とイレギュラーなので
「なかったことにしたい」とのことだった。
つまり、オレを元の世界に戻すので、帰ってほしいとのこと。
プラスちゃんのいなくなった異世界に、テンションのさがっていたオレは、その申し出を快く了承した。
ただ、ひとつ条件を付けることをオレは忘れなかった。それが「異世界で得た所有物をそのまま持ち帰る」ということ。
「異世界での活動分がパーになるのは了承できない」と、もっともらしい理由を付けて……。
おっさんなので、こういうところは、したたかなのだ。
本来はまずいとのことだが……イレギュラーだということで、女神も目をつぶってくれた。
オレは急いでプラスちゃんの所持品をすべて道具屋に売り払って、『金』に換えた。オレはそれを日本に持ち込んだのだ。
異世界から持ち込んだ『金』は、こちらで売却すると、消費税分も上乗せされて2000万近くなった。
オレはそのうち1000万円を、流行っている『仮想通貨』に換えた。よく解らないので『エーサリアム』『ジャイアント』『ラップル』などに適当にバラして買っておいたら、すると、あら不思議。時期がよかったせいで、なぜか資産が30倍になってしまった。
かくしてオレは、資産が億を超えたヤツ――『億り人』となった。
液晶画面にうつる仮想通貨資産のポートフォリオは、大幅なプラスとなった。
プラスちゃんのおかげで……。
プラスちゃんなだけに……。
……はは……ちっとも、うまくないか。
でも、なにもかも空しい。
仕事はさすがに……とりあえず辞めたけど、住んでいるところは以前のままだし、金があるからといって特にやりたいこともない。飯も酒もなんか美味しくないし、ゲームもする気がおきない。あれだけ読みたかった本も、買いためていた戦艦のプラモも手つかずだ。
この世のすべてが、なにもかも色褪せている。
オレがやりたかったことって……こうじゃなかった気がする。
あの、たった一日でおわってしまった。日帰り異世界の記憶が鮮明すぎて忘れられない。
あの異世界の空の青さが……忘れられないんだ。
プラスちゃん……。




