表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青の時代 4  作者: 森 鉛
4/10

第六章 皇帝の死 第四話

 フランク内務長官はいつも以上に緊張して会議室の椅子に腰掛けていた。末席に座ろうとしたアーロンに、ヴィンセントと二人で慌てて上座を勧め、ユーストの次の席に腰掛けてもらったはいいが、自分がアーロンの隣に座する事になってしまった。かといってヴィンセントに代わってもらえば末席のレイナードに一番近い位置になってしまい、腕っぷしに全く自信の無い彼にとってそれはとんでもない事だった。いつもなら後ろに資料を携えた局長達が控えていてくれるのだがそれも居らず、ひたすら身体を小さくしていた。アルフリートはそれを見て気の毒に思ってはいたが、かといってどうする事も出来ないのであった。

 シルヴァは護衛が外された事を少し気にしていたが、将軍が三人揃っており、アルフリートもヴィンセントもそこそこ腕は立つ。アーロンは戦の先陣を切る程の武人であったから、何かあった時にこの部屋で当てにならないのはユーストとフランクの二人だけという事になる。それならばアルフリートを守りきれるだろうと彼女は考えていた。

 ユーストが顔色一つ変えずレイナードに歩み寄り、契約書を提示し確認を促す。期限はアルフリートが首都に帰還する迄であり、その間国王の護衛の任に就き、アルフリートの直接の指揮下に入る事が記されていた。書面を読み終えたレイナードは静かに頷き、ユーストの差し出したペンで同様の二通にサインを書き込む。既に国王のサインが書き込まれており、それぞれを封筒にしまい、一通をユーストが受け取り、もう一通をレイナードが胸元にしまう。アルフリートは満足げに頷くと言った。

「よし、これで契約が成立した訳だ。う~ん、傭兵王を雇うなんて気持ちいいなぁ、ちょっとの間だけだけど。ハウザーのじいさんが嬉しそうに連れ歩いていたのが分かるよ。……おっと、そんな場合じゃないか。レイナード、じゃあこっち来て。あ、剣は返すよ」

 たちまちシルヴァの表情が険しくなるが、既に契約を終えたレイナードの立場はアルフリートの部下という事になっている訳だから、異義を唱える理由が無かった。信用が極めて重要視される傭兵が、一旦契約を交わした雇い主を裏切るなどという可能性は皆無といってよかったし、ましてや彼は大陸にその名を轟かす『傭兵王』レイナード・バッカスである。頭ではそうと分かっているシルヴァであったが、この後彼が話すハウザーの伝言を聞き終えるまで、彼女は警戒を解こうとはしなかった。

 倭刀を腰に収め、レイナードは勧められるままユーストの座っていた席に腰掛ける。フランクは少しほっとして宰相の為に席を開けようと腰を浮かすが、彼の意に反しユーストはアルフリートの後ろに静かに立った。がっかりして座り直す彼の姿を、ヴィンセントは笑いを堪えて見ていた。

「さぁ、聞かせてもらおうか、ミハイルのクソ野郎が何を企んでいるのかを。やっぱり割譲?」

 アルフリートの問い掛けに、静かに話し始めるレイナード。閣僚が固唾を飲んでそれを見守る。

「…そうではない。確かにその疑いもあったが、事実はもっと胸くそ悪い物だったよ。……まず、ハウザー陛下の伝言を伝えよう。アルフリート殿、アーロン殿。そしてここには居られぬがアンドリュー殿の三人に、皇帝陛下はこう伝えてくれとおっしゃった。『プロタリアを救ってくれ』と。…伝言はそれだけだ。最低でもアルフリート陛下に、可能ならお二人にも、他国へ漏らす事は厳禁であると言われている。……閣僚のお歴々が同席しているのはこうなっては仕方が無いだろう。…シルヴァ殿が睨んでおるしな」

 そう言い終えて小さくにやりと笑うレイナードに、シルヴァはあからさまにむっとした表情を浮かべていた。アルフリートは皇帝の伝言を聞き、小さくため息をついて呟いた。

「そんな事生きてる内に言えばいいのに、まったく……頑固なじいさんだ。高すぎる代償だよ」

 アーロンが口を開く。

「ハウザー殿は口が裂けても言わぬだろうよ。他国の王に助けを求めるなど彼の人生で初めての事だろう……それすらも生きている内には明かされなかった訳だな」

「恥なんか死んじまったら掻けないんだからさぁ……やれやれ、でかい借り作っちまったなぁ。これで何が何でもやらなきゃならなくなっちまった」

「なんじゃお前やる気無かったのか、情けないのぉ。ハウザー殿が草葉の陰で泣いておるぞ」

 からかうようなアーロンの言葉に、アルフリートは言う。

「やるよ、もちろん。……じじいが二人掛かりでプレッシャーかけやがるしさ」

 アルフリートは『借り』と言った。この伝言は、トランセリアの数倍の国力を持つ大プロタリアの皇帝が、孫ほど歳下のアルフリートに頭を下げたのと同じであった。しかも彼は自らの命をもってそれをあがなったのである。レイナードが再び語り始める。

「この伝言を伝えれば俺の役目は終りだと皇帝はおっしゃった。ただし陛下が死んだ後の場合という条件だったが……。数分だが二重契約を結んだ事になってしまったな」

 傭兵王の顔に、かすかに寂しげな笑みが浮かぶ。しばらくの沈黙の後、彼はアルフリートに向き直り、はっきりと告げた。

「アルフリート陛下、たった今から貴公は我があるじとなった。プロタリアの国葬に同行し、この命に代えても陛下の御身をお守り致す。御下命を」

 一瞬虚をつかれたアルフリートだったが、小さく笑って答える。

「うん、よろしく頼む。……さぁてと、弔い合戦ってとこだね」

 閣僚達を見渡し、アルフリートはぱんぱんと自分の頬を叩いた。


 会議室に隣接する国王の執務室では、アイリーンが意識を集中し、隣室に耳をそばだてていた。室内には多くの騎士や副官達が邪魔にならぬよう息を潜めて彼女の様子を見守り、傍らにシンが静かに寄り添う。先程彼が国王と交わした会話は、アイリーンに会議を聞かせてもいいかという許可を得る物だった。アルフリートは始めからそのつもりで、彼女を会議に同席させなかった。レイナードが後で聞けば怒るかも知れないとアルフリートは思ったが、そうなったら知らん振りをしようと決めていた。

 壁際の椅子に腰掛け、じっと会議の様子を聞いていたアイリーンがふいに身体を震わせる。すぐそれに気付いたシンが、そっと彼女の肩を抱く。アイリーンはしばらく堪えていたが、やがて夫の胸に顔をうずめて涙をこぼし、声を殺して泣いた。

 二人はレイナードの話がおそらくイグナート絡みの物だろうと考えていたが、彼の報告はアイリーンの予想を越えた悲痛な物であった。


「では順を追ってお話致します陛下。まずは……」

 レイナードは上着の隠しから一束の書類と、厳重にくるまれた小さな包みを取り出す。アルフリートが目を輝かせて言う。

「それが『証拠』ってわけだ」

「左様でございます」

 先程とうって代わって丁寧な口調で話すレイナードに、アルフリートは微笑んで告げる。

「レイナード、今迄みたいに話していいんだよ、俺もこんなだし。なんか調子狂っちゃうよ」

 包みを解きながら、レイナードは意外そうな目を国王に向ける。今迄数々の王族と契約を交わして来た彼であったが、そのような事を言われたのは初めてだった。むしろもっと言葉遣いに気をつけろと言われる方が多かった。彼なりに主君に礼を尽くしていたのであるのだが、それを聞いてレイナードは小さく笑って言う。

「ハウザー皇帝から、陛下は変わり者だと聞かされていたが事実のようだな。そう言われるならお言葉に甘えよう。あまり宮廷言葉は得意でないのでな」

「俺もだよ」

 アルフリートが白々しく答える。周囲の閣僚が『可愛げが無い』と思っているのは確実であろう。レイナードが包みから取り出した茶色の小さな瓶をテーブルの上に置く。

「まずこの所大陸の噂になっている暗殺事件だが、イグナートの伯爵が毒殺されたとの噂が流れたのはご存じか?」

「知っている。…結局毒殺だったのかい?」

「そうだ。暗殺に使われた毒がこれだ。かなり弱い毒で少しずつ食事に混ぜて飲ませる物らしい。味や匂いも無く、症状もまず頭痛が現れ、続いて手足が痺れ出す。おかしいと気付いて医者に診せても原因は分からない。その内に麻痺が全身に広がり、死に至る。早くても数カ月、長ければ一年以上かけて目的を達成する為の物だ。従ってこの毒薬を使って暗殺を行う者は身内に限られる。一回や二回忍び込んで飲ませても効果は無いからな」

「なるほどね、時間をかければ暗殺なのか病気なのか判断が出来なくなるって訳だ」

「それに加え暗殺事件の噂を流す。大陸中で起こった事件がやがて事故だと分かれば、嘘の中のたった一つの真実などかき消されてしまうだろう。…トランセリアでも事件があったと聞き及ぶが」

「ああ、馬車の件ね。あれは本当に事故。でもウチだけ事件が起きないの変だと思ったんで、わざと怪しく噂を流したんだよ」

 もちろんこれはユーストの策略である。噂がトランセリアを陥れる罠かもしれないと考えたからだ。レイナードは苦笑して言う。

「抜け目が無いな、アルフリート殿」

「それ程でも……と、いうことは伯爵暗殺の犯人は」

「一年前に結婚した彼の妻。王弟ドルカスの三人目の息女オリヴィアだ」

「……やれやれ、新婚の女房にいきなり殺されちまうなんて、浮かばれないなぁ。てことは暗殺する為に結婚したってことかい?」

「そうでは無いようだ。彼女が喜んでこの役目を引き受けたのかどうかは分からないし、全ての実行犯が彼女だとも限らない。身内といっても親族である必要は無いからな。食事に細工が出来る程近くにいる人物なら良い訳だから。もっとも伯爵は食事を疑って料理番や侍女を総入れ替えしているから、結局は妻君の犯行だと考えられられるが」

「当然王弟の差し金なんだろう、目的は?」

「その通りだ。ドルカスには…いやイグナートには今独身の王女は居ない。アイリーン様がトランセリアに逃亡してしまったからな。まぁ彼女がいても国王の娘を王弟派の陰謀の為に差し出す訳は無いのだが。そこで一番歳の若い三番目を未亡人にする為に…」

「無理矢理だなぁ。よく新妻が承知したもんだ」

「新婚といっても中立派の大貴族を取り込む為の政略結婚だからな。二十歳前の女房に三十も後半になろうという亭主だから、一年間いい夢見させてもらったとでも思わねば浮かばれんな」

 レイナードのその台詞に、アルフリートとヴィンセントが吹き出しそうになる。彼等のその仕種に、レイナードは何の事か分からないようだったが、シュバルカの顔は真っ赤になっていた。ご存じの通り、五十代半ばの将軍の妻は、二十歳のマリーである。

「……いや、何でも無いよレイナード。晴れて独身となった彼女は次は何処に嫁に行く訳だい?何となく読めてきたけどさぁ…」

「お察しの通り、渦中のミハイル・ゴーズ・フレーゲル伯爵だ。どちらにせよ彼女は一年間は喪に服すだろう。第四皇女エリザベートを毒殺する時間はたっぷりある。半年後か、一年後か、再び暗殺未遂事件の噂が流れる時が、皇女の命が尽きる時だろう。繰り返された嘘など誰も本気にはしない、たとえそれが真実であってもだ。そしてお互いに新婚の連れ合いを無くした不幸な若者同士が、同病相哀れむで目出度く結ばれるという筋書きだな。イグナートは歴史上初めて、プロタリアの皇帝と姻戚関係を結ぶ訳だ」

「皇帝の地位を手に入れたら皇女は用無しという訳か、ひでぇ話だ。……でもその毒殺とミハイルの因果関係がちょっと薄いな」

 レイナードがテーブルの上の書類を指差して言う。

「これは毒殺された伯爵の診断書だ。半年に渡って彼を看た医者が克明に記録を残していた。毒を盛られて次第に弱っていく彼の症状が詳しく書いてある。……そしてこれと全く同じ症状を見せた者がプロタリアに二人居た」

「…過去形という事は皇女では無いんだね。一人は多分ミハイルの父親かな?もう一人は…まさかとは思うけど……。いや、それが一番てっとり早いか」

「鋭いな、アルフリート殿。ハウザー陛下のおっしゃった通りだ。…そのまさかだよ」

「……ミハイルは実の父親ばかりか、皇帝その人にも毒を盛ったという事か」

「…そうだ。若くして伯爵家を継いだ彼にはそんな裏事情が有ったのさ。そして次のターゲットは自分を良く思っていない皇帝陛下だ。どういう手を使ったかまでは分からんが、この半年あまり、ハウザー陛下は頭痛と手足の痺れを訴えていた。時には症状が治まる事もあったがまたぶり返す。その繰り返しだ」

「料理や飲み物に気を配ってもまた別の手段で毒を盛られる、食事を取らない訳にはいかないし、俺みたいに屋台で済ませたりする筈ないしなぁ。じいさんが『宮廷は闇』って言った訳が良く分かるよ。……ん?という事は自殺じゃないって事かい?」

「いや、おそらく陛下は自ら命を絶たれたと思う。この診断書を見る限り、死に至るほど病状が進んでいた訳では無いだろうし、今皇帝に亡くなられて一番困るのはミハイルだ。自身の婚礼を済ませ、王位継承権を得てから時間を掛けて毒殺する為の手始めだったのだろう」

 しばらく沈黙していたアルフリートが静かに口を開く。

「その毒薬は何処から?」

「王弟からミハイル伯爵へと遣わされた密使から奪った物だ。親書も手に入れたが、用心しているのか核心に触れるような事は書いておらん」

 レイナードが書類の束から無造作に手紙を取り出して見せた。名前もサインも無く、当然国璽なども押されてはいなかった。

「その密使は?」

「口を割らせようとしたが結局何も知らないようだったので斬った」

 物騒な事をさらりと口にするレイナードにアルフリートは苦笑する。

「うーん……証拠としては少し弱いかなぁ……」

「いや……これがある」

 レイナードが最後の切り札を出した。

「密使から奪った物だ。プロタリアの古い皿のようだ」

 複雑な模様が描かれた手の平に載る程の小さなその皿は、中央から二つに割れて半円形になっていた。アルフリートはそれを見てぱしんと手を叩く。

「割り符か!それだ!それの片割れがミハイルの元にあれば完璧だ。凄いやレイナード、良くやった!」

 レイナードの手を取り、ぶんぶんと振り回すアルフリートのお陰で、彼はあやうく皿を取り落とす所だった。やがてレイナードが小さく言った。

「……密使を見つけ出すのに随分と手間取ってしまった。あと十日も早く国へ戻れば、皇帝陛下は命を落とさずに済んだだろうが…、無念だ」

「だがこれが無ければおそらくミハイルを糾弾出来ないだろう。…これはこのままあなたが持っていた方がいいと思う。確かにこれを持ってプロタリアに赴くのはかなり危険だ。国葬で各国の使節が山程来るから相当混乱もするだろうしね」

「分かった。……アルフリート殿、俺の話は以上だ」

 レイナードが口を閉ざし、会議室に重苦しい沈黙が訪れる。確かに謎は解けたが、イグナートとミハイルの陰謀も、そしてこれからアルフリートが向かうプロタリア国内の情勢も、彼等にとって決して楽観視出来る物では無かった。

「……あ、しまった!アイリーン!」

 何か考えて込んでいたアルフリートは、ふいに声を上げ、席を立つと慌てて執務室に向かった。ドアの向こうではアイリーンがシンの胸で嗚咽を漏らしていた。そっとその傍らに膝を付くと、アルフリートは優しく彼女の髪に触れ、言った。

「ごめん、アイリーン。辛い話を聞かせちゃったね。…もっと早く気付けば良かった、ごめんね」

 小さく首を左右に振り、アイリーンは顔を上げると途切れ途切れに答える。

「…いいえ…いいえ、……陛下がお気に…為さる事は…ありません。……わたくしは…自分の身体に流れる…王族の血が疎ましい……。呪われた…血筋とさえ思えます……。申し訳…申し訳なく、……皇帝陛下に…申し訳なく……」

「そんな風に思うもんじゃ無いよ。誰もあなたを責めたりしないから、大丈夫だからね」

 横からシンシアがおずおずとハンカチを差し出す。震える手でそれを受け取ったアイリーンは、そっと涙をぬぐい、小さく頷いた。アルフリートがシンに言う。

「シン、今日はもういいから。アイリーンについててやって」

「お気遣いありがとうございます。しばらくすれば落ち着くかと思いますので、申し訳ありませんが少し休ませます」

 落ち着いた声でそう答え、シンはしっかりと彼女を抱きかかえて控えの間に去って行った。


 会議室に戻ったアルフリートにシルヴァがささやく。

「アイリーン…大丈夫?」

「うん、シンが付いてるからね。……あっ…とレイナード、事後承諾になっちゃって済まないけど…」

「アイリーン様の耳の良い事なら知っている。そんな事だろうと思っていたが、それ程ショックを受ける話でもなかろうに」

 表情を変えずに言うレイナードにアルフリートは苦笑して答える。

「そりゃ俺達はそうだけど、彼女にも色々事情があるんだよ。…お姫様なんだからさぁ、お手柔らかに頼むよ」

 その台詞に小さく口の端で笑うレイナード。アルフリートは閣僚に向き直り、一同に話し掛けようとしてふいに口をつぐむ。宙を見つめていた彼がやがて呟く。

「……あ、この手でいこう。レイナード、悪いけどさっきの皿を預かれるかい?じいちゃん、ちょっと頼みがあるんだけど…」

 先程からむっつりと口を閉ざしていたアーロンが不機嫌そうに返事をする。若い頃からハウザーと親交があった彼は、事実を知ってかなり怒っているようだった。

「…なんじゃい」

「俺に怒るなよ。二つばかり作ってほしい物があるんだよ。明後日の朝までに」

 アーロンとひそひそと内緒話を始めたアルフリートに閣僚の視線が集中する。

「……一つは簡単じゃがもう一つは、ふーむこれか」

「遠めに見て分からなけりゃいいんだよ。あ、割っといてね」

「仕方がないのぉ。なんとかなるじゃろう」

 そう言って席を立つアーロン。扉に向かって歩き出す祖父の後ろ姿を眺め、アルフリートはユーストに囁いた。

「さっき迄ゴネてたのにばかにあっさり引き下がったな。ボケて忘れちまったのかな」

「アイリーン様が説得をされていたようですが、後ほど確認してみましょう」

 開いた席に腰掛けながらユーストが答える。すると会議室から出て行こうとしたアーロンがふいに振り向いた。今の会話が聞こえてしまったのかと、ぎくりとする二人。

「おおそうじゃ、ユースト。お前ここんとこ顔を見せないんで、ばあさんが淋しがっとるぞ。また飯を食いに来いと言うとった。…伝えたぞ」

 アーロンはそれだけ言うと返事も聞かずにのしのしと去って行った。残されたユーストはげんなりとした表情を浮かべ、事情を知るアルフリートとシルヴァ、そしてシュバルカがにやにやと笑う。

 アーロンの妻、トランセリアの先々代の王妃であるシャーロット・リーベンバーグは、アーロンの退位から二十数年経った今でも、多くの国民から『国母』と慕われるアルフリートの祖母である。彼女は若い人に物を食べさせるのが生き甲斐であり、今でも訪ねて来た人物に、食べきれない程料理を作っては奨めるのである。シャーロットにとって若い人とはすなわち『自分より歳下の人物』であるから、アーロンより一つ下なだけの彼女にはほぼ全員が対象となってしまう。もちろんアルフリートやシルヴァも例外では無く、彼等が祖母に会いに行く時は昼食を取らずに腹を空かせて行くのだが、それでも後から後から出て来る料理を食べきれずに、結局近所に分けて配ったり、王立工匠の若い職人達を呼んでふるまったりするのである。

 ユーストが訪れようものなら、線の細く見える彼をシャーロットはいたく心配し、腹の皮が破れるのではないかという程、あれやこれやと詰め込まれるのであった。彼女の事をユーストは叔母として敬愛してもいたし、確かに料理の腕は抜群だったのだが、元々大食らいでは無い彼はその量だけはどうにも苦手であった。『料理自慢のシャーロットばあちゃん』は、ユーストが頭が上がらない数少ない人物の一人だった。


 人の悪そうな笑みを浮かべながらユーストの様子を眺めていたアルフリートは、再度一同に向き直り、口を開いた。

「お待たせ。さて、これで情報が出揃った訳だけど…なんか質問ある?」

 顔を見合わせる閣僚達の中から、シュバルカが手を上げ、発言した。

「陛下、事情が分かって尚更プロタリアでの危険が予想される事態となり申したが、それがしを同行して頂く訳には…」

「…シュバルカ、その件はもう決定した事だから。こっちには新たに『傭兵王』が加わったから、条件は行って来いだと思うよ、それに…」

 一瞬口籠る国王を皆がいぶかしむ、アルフリートは意を決して話を進める。

「俺が一番心配してるのは国の事だ。もしプロタリアでミハイルとイグナートの陰謀を止められなかった場合、奴らが最初にやるのは…リグノリアに攻め込む事だからね。まだ国力が戻っていないリグノリアはすぐに落ちるだろう。そうなったら、次はウチだよ」

 シルヴァが独り言のように呟く。

「今の内にリグノリアに軍を進めておけば……いや、駄目だ。それではイグナートを刺激するだけだし、プロタリアが挙兵したら手薄の国元に攻め込まれる。……陛下、プロタリアが動く可能性はあるとお思いですか?」

「そうだよシルヴァ、今は待つしか無いんだ。陰謀が発覚したと知った奴らはなりふり構わず手を打って来るだろう。レイナードが密使を倒してから十日以上経っている。ミハイルはもう準備を進めていると考えるのが妥当だ。それにプロタリアには今それを止める人物が居ないんだ。皇帝を失った閣僚が揉めている内に、イグナートと示し合わせて兵を動かす可能性は十分にあると見るべきだ」

 国王の話に聞き入っていた閣僚達の顔に、みるみる緊張が走る。アルフリートが続ける。

「リグノリアのウォルフ将軍には親書を送った。それから俺の居ない間の代行として親父に話を通してある。グローリンドには親父に動いてもらう手筈になっている。黙っていて済まなかった。けど全ての情報が繋がったのがついさっきだから、皆に言う訳にはいかなかったんだ。不安にさせてしまって申し訳なく思っている」

 いつになく真面目に話を進めるアルフリートに、皆が事態の深刻さを改めて噛み締める。

「俺が自分の事をあまり心配していないのは、ウチなら国王が居なくなってもあまり影響が無いだろうと思ってるからだ。親父もじいちゃんもしぶとく生きてる国だから、俺一人を消しても意味が無いのさ」

「…陛下、そのような不吉な事を口にされては…。陛下あってのトランセリアです」

 シルヴァの声にも不安が混じっている。アルフリートは彼女に微笑み掛け、言った。

「まぁ今言っている事は最悪の場合だからね。恐らくミハイルの最終目的はプロタリアの皇帝を足掛かりに、大陸に覇を唱える事だろう。とすればネックになるのはウチの十万の軍だ。イグナートにリグノリアを潰させて、その間に貴族への根回しを進める。プロタリアの全軍を掌握するのは至難の技だが、それまでにグローリンドが動かなければ対抗勢力はトランセリアだけだ。グローリンドはこういった場合の動きが鈍いし、西方諸国がこの時点で参戦するとは考えにくい。…場合によっては、リグノリアの委員会には早々に王都を捨ててもらう決断をしてもらわねばならないかもしれないな。放っておけば数年後の大陸中央にはプロタリア一国しか残らない可能性だってある。同盟国のイグナートだって例外じゃないだろう…」

 次第に呟きに近くなっていく国王のこの台詞には、さしもの重鎮達も息を飲んだ。アルフリートはそれに気付くとわざと明るい声で告げた。

「あぁ、尤も俺がプロタリアでミハイルを抑えられれば何も起きないよ。自信はあるから、みんなには国の守りに専念してもらいたい。今のはちょっと深読みし過ぎだとも思ってるし」

 閣僚は複雑な思いで自分達の若き国王を見つめる。アルフリートが果たしてどれ程迄の事態を想定しているのか、彼等には想像もつかなかった。



          ◆



 明後日、早朝。訪問団がプロタリアに向けて出立する。出発に先立ち、シルヴァは一人一人と握手を交わし、国王の警護に幾度も念を押した。彼女はレイナードにも頭を下げ、アルフリートの守護を託す。

「レイナード殿、どうか陛下をお守りしてくれ。事態の解決よりも無事の帰国を最優先してもらいたい、頼む」

 真剣な顔でそう訴えるシルヴァを、レイナードは少し意外に思って見つめる。そして彼女がトランセリアの軍務長官であると同時にアルフリートの婚約者である事を思い出し、わずかに微笑んで答えた。

「剣にかけて約束しよう、必ず陛下と共に無事にトランセリアへ戻る。……シルヴァ殿、貴殿は二年前に比べて相当に腕を上げられたな。あの睨み合いは正直胆が冷えたよ」

 傭兵王に率直に褒められ、シルヴァの頬がかすかに赤く染まる。最後に国王と向き合った彼女は、言葉を発する事も出来ず、今にも泣き出しそうな顔をしていた。アルフリートは首に下げた細いチェーンを少し持ち上げて見せ、にっこりと微笑み小さく囁いた。

「シルヴァ、そんな顔しないで。大丈夫、必ず帰って来るから。……愛してる」

 最後の一言を耳元に送り込むと、彼はそっと頬に口付けた。シルヴァの口から聞き取れない程の呟きが漏れる。

「……アルフ、……約束」

「分かってる」

 アルフリートは優しく彼女の頬を撫でると馬車に乗り込む。ゆっくりと隊列が動きだし、王宮の人々や市民の見送る中、宮廷騎士団二個小隊に守られた一行が小さくなって行く。それを見つめるシルヴァはまるで母親を失った幼い子供のように心細げに見えた。後ろに控えるセリカは抱き締めてやりたい衝動を拳を握って堪え、静かに彼女を待った。やがて振り返ったシルヴァは、もういつもの冷静な軍務長官の顔に戻っていた。彼女はきびきびと幕僚に命令を下す。

「全軍に通達。トランセリアは只今より準戦時体勢に入る!予備役を召集。陛下がお戻りになる迄、一瞬たりとも気を緩めるな。我々の手で民と国土を守り抜く!」

 黒髪をなびかせ、王宮に向かって歩き出すシルヴァに、騎士達が続く。どの顔も緊張に引き締まり、ただならぬ事態の幕開けを予感していた。



 一行は順調に旅程を消化していた。アルフリートの馬車にはアイリーンと侍女が同乗し、レイナードやシンらが馬上から周囲の警戒にあたる。朝から張り詰めた雰囲気のアイリーンに、アルフリートがリラックスするよう奨めるのだが、彼女が警戒を緩める事は無かった。もう一台の馬車にはヴィンセントとリサが分乗する。恋人同士の二人ではあったが、甘い雰囲気になる暇もなく、外務庁スタッフがプロタリアからかき集めた最新情報の分析に忙しかった。

 一泊する予定の集落まで、昼食の為のわずかな休息を取っただけで一行は先を急いだ。陽のある内に宿について安全を確保しようと、メレディスは考えていた。大陸最速を誇る第三軍を率いる彼にしてみれば、この程度のスピードはあくびが出るような物であったし、初日からそんなに気負っていては、帰国まで身が持たないであろう事を良く分かっていた。馬を走らせながらメレディスは、シルヴァが選び抜いた宮廷騎士一人一人に気さくに話し掛け、彼等との間にきちんと信頼関係を築く事も忘れなかった。部下を手足のように動かせる事こそ、司令官として最も重要な資質であると彼は思っていた。メレディスは静かに馬を走らせるレイナードにも話し掛ける。

「…レイナード殿」

「メレディス将軍か、何か?」

「いや、少し世間話でもしようかと思ってね。馬車に随行するのはどうも退屈でいかん」

 司令官とも思えぬその台詞にレイナードはかすかに苦笑するが、彼が口で言う程気を抜いている訳で無い事ははっきりと感じ取れた。将たる者が適度に落ち着いていれば、部下に余計な緊張を強いる事も無いと考えての事であろうと、レイナードは思った。傭兵としてこういった護衛任務に慣れた彼は、いかに訓練を積んだ騎士といえど、人間の緊張が長時間続かない事を良く知っていた。

「神速で名高い第三軍を率いる将軍ならば、確かに眠たくなるようなスピードではあろうな」

「そういう事だ。それにせっかく傭兵王に同行する機会を得たのだから、みやげ話の一つでも持って帰りたくなるのが人情だろう?」

「……陛下もそうだが、トランセリアの人々は皆そのように率直に言葉を発してくれて助かる。王族や貴族を相手にしていると宮廷言葉ばかりで息が詰まる。彼等にはそれが普通なのだろうが、自分は好かぬ」

「ウチは田舎者ばかりの国家でね。普段からそんな大仰な口ばかり聞いていたら肩がこって仕方がないだろう。アイリーン様が王宮に暮らすようになった時も、皆物珍しそうに遠巻きに見ていたよ。『本物の王女様だ』ってな」

 レイナードが小さく声を上げて笑い、周囲の騎士達が一様にびっくりする。彼は言った。

「アイリーン様か、…彼女は不思議な人物だな。怖がっているのかあまり近くには来てくれぬが、何か我々目の見える者とは全く違う感覚を持っているような気がする」

「ああ、言い方は悪いがあれはいい拾い物をした。あんな優れた人材を他国に嫁にやっちまおうってんだから、イグナートの国王は馬鹿だよ。人が国を作るのだという事が分かっておらんのか……おっとこれは陛下の受け売りだがな」

「違い無いな」

 笑い合う二人を眺め、宮廷騎士達も次第に緊張がほぐれてきていた。同時に彼等は、シルヴァと互角に睨み合ったレイナードとにこやかに談笑する、メレディスの胆の座り様に感心してもいた。


 日が傾き始めた頃、予定通り一行は宿泊地の小さな村落に到着する。先乗りしたロベルトら騎士と共に、年老いた村長がうやうやしく国王を出迎える。アルフリートは馬車から降りるなり大あくびと共に背伸びをする。彼は道中のほとんどを馬車の座席で熟睡していたのであった。一日馬車に揺られ、ずっと気を張り詰めていたアイリーンは対照的に疲れた表情を見せていた。後ろからヴィンセントに突つかれたアルフリートがにこやかに村長と挨拶を交わし、一同は宿に向かった。


 小さな食堂で村人の心尽くしのもてなしを受けるアルフリートらを、村長がにこにこと見つめる。村にとっても、まとまった金を落としてくれるこういった外国の使節団などはありがたいものだった。貧乏なトランセリアといえど、百人近い人数が寝食をする金額はばかにならず、横柄な振る舞いもしない彼等は村人達にも好意的に迎えられていた。

 寝てばかりいたくせにぺろりと食事を平らげたアルフリートは、さっそく村長に国内の様子を尋ねる。村長によれば、日々の暮らし事態は何も変わりは無いが、やはり皇帝の訃報は彼等年寄りにはショックが大きかったようだ。帝都での出来事はなかなか田舎のこの村までは伝わって来ず、彼は皇帝が代替わりする事で税が重くなったり、貴族が横暴になったりするのではと心配していた。

 他国の王といえど支配者層に対して村長がこれ程率直に意見を述べてくれたのは、アルフリートの人柄と国王らしからぬくだけた口調により、彼が心を開いてくれた証拠であったろう。村長は同席したアイリーンが噂のイグナートの元王女であると知り、アルフリートに対するより余程丁寧におじぎをする。さらにレイナード・バッカスが同行していると分かると、腰を抜かさんばかりに驚いていた。トランセリアの若き王が、見た目は只の少年にしか見えない事の現れでもあった。たとえ国王と分かっていてもやはり彼は貫禄が無かった。


 明日の打ち合わせの為、小さな居間に一同が集まる。アルフリートがアイリーンに話し掛ける。

「アイリーン、疲れたろう。今夜は早めに休んでくれていいよ。道中で何かあるとは思えないし」

「お気遣いありがとうございます陛下。ですがアルフリート様の警護がわたくしの職務でございますから…」

「まだ先は長いからね、そんなに気張らなくて大丈夫。シンも適当にね」

 昼間から馬車で熟睡していたアルフリートは元気いっぱいである。戸惑いの表情を浮かべるアイリーンとシンを見て、メレディスが苦笑する。ペース配分を心得た彼も全く疲れを見せてはいなかった。

「ヴィンセント、大使から何か情報は入ったかい?特にプロタリアの軍がどう動くかが気になるんだけど」

アルフリートの問い掛けに赤毛の外務長官が言う。

「今の所正規軍にこれといった動きはないようですね。皇帝騎士団のグスタフ将軍が静観していますから、彼の動向次第といった雰囲気になっている模様です。ただ、貴族諸候の持つ騎士団の動きが気になりますが……」

 ロベルトが外務長官の言葉を引継いだ。彼はシルヴァの副官と、宮廷騎士団の幕僚の長を兼任している。他国の戦力の監視と分析はロベルトの専門分野だった。

「出発ぎりぎりまで情報収集をしておりましたが、プロタリアの幾つかの領地では、いつもにない兵員の移動が見られています。ただそれが、皇帝の葬儀に対しての動きなのか、軍事行動を起こす前触れなのかは意見が別れております。何か変化があれば、伝令が走る手筈にはなっておりますので」

「分かった。……グスタフ将軍か、ウォルフの元上官だね。メレディス、彼はどんな人物か知ってる?」

「はい、二度程言葉を交わした事があります。昔気質の軍人といった風情でしたね。裏工作に長けた人間ではない印象を受けました。ウチのシュバルカの髪の毛を増やしたような…」

 将軍のその台詞にアルフリートは吹き出し、言った。

「そりゃシュバルカに悪いよメレディス。…彼は皇帝の信頼は相当厚かった筈だが、どう動くのかな。レイナード、今回の件でハウザーのじいさんはグスタフには頼らなかったのかい?」

 部屋の隅で椅子に腰掛けていたレイナードが静かに答える。

「グスタフ将軍は確かに最も皇帝陛下の信頼を得ていたが、メレディス殿の言う通り、あまりそういった裏の仕事には向いていない人物だったので、皇帝も迷っておられたようだ。結局どうなったのかは自分には分からんが、将軍は事実上のプロタリア全軍の指揮官だ。そう軽々しくは動けまいな」

「ふーん、事情は知っているが実力者ゆえ動きが取れないって感じかな?…ヴィンセント、リグノリアは誰が出るか分かった?」

「クレア王女とウォルフ将軍のようです。恐らく各国も相当の大物を差し向けると予想されます。今回の国葬は、今後の大陸の力関係を占う場になるとどの国も考えているでしょうから」

「イグナートもしゃかりきになる訳だよ。四十万の軍が宙に浮いてるようなもんだからなぁ」

「イグナートは例のごとく、国王派と王弟派がきっちり半々ずつの使節団で…」

「どうせうじゃうじゃ護衛やら侍女やら連れて来てるんだろうさ。全く無駄金ばっかり使いやがって、しょうがねぇなぁ」

 グラス片手ににやにやと人の悪い笑みを浮かべるアルフリートとヴィンセント。ロベルトが横から口を挟む。

「陛下、お酒は控え目にとシルヴァ様から言付かっておりますので」

「おっとそう来たか。……シルヴァに言われるとは思わなかったなぁ」

「とにかく御心配のようでしたよ、『唯一の取り柄である逃げ足が鈍るから飲ませるな』とおっしゃってましたから」

 さらりと言い放つロベルトの台詞に一同から笑いが起こる。アルフリートはやれやれと肩をすくめて言う。

「はいはい、これぐらいにしておこうか。…ロベルトにもすまなかったね。本当は国に残ってほしかったんだけど、シルヴァの我が儘に付き合わせちゃって」

「お気遣い頂き恐縮です。セリカが居りますから御心配には及びません。…それに、自分は独り者ですから」

「そんな事にはならないと思うけどね……。そうか、セリカには娘さんがいるもんなぁ」

「はい、彼女ほど腕は立ちませんが、いざという時は迷わず私の身を盾にお使い下さい」

 シルヴァの副官であるセリカには六歳になる娘があった。彼女は未婚の母であり、一人娘を自分の父母に預けて軍務に就いている。彼女は決して父親の名を明かさず、過去に恋人の関係であり、現在も独身を貫いているロベルトがそうではないかという噂もあったが、真相はセリカとシルヴァだけが知っている。ちなみにメレディスも独り者であるが、彼は離婚歴のあるいわゆるバツ一であった。

 アルフリートはしばらく沈黙した後、静かにこう言った。

「……全員で国に帰る、一人も欠けさせたりはしないよ。それが俺の最大の使命だ。…大丈夫、勝算はある」

 はっきりとそう口にした国王に対し、一同は大きく頷き、誰からともなくグラスを合わせた。明日の昼過ぎには帝都に着くであろう、そこから彼等の戦いが始まる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ