これって修行なの?
幽霊さんの決意から7年、
幽霊さんと身長130もない立派で肩まで伸ばした緑髪の可愛らしい少女は屋敷の周りを全速力で走っている、
(シルフィ、
後10週、
そのままのペースで行くぞ、
そこから氷龍と虎炎の妨害が入るが全て避けて行くんだ、)
「はい!師匠!」
少女、シルフィード・エアリアル・ウィンディアは走りながら幽霊さんに返事をする、真っ直ぐ走りほぼ真四角の屋敷の角を曲がろうとすると
「きた」
突然火球がシルフィードの右足あたりへ飛んでくる、
シルフィードは速度そのまま走り幅跳びの要領で前へ跳んで避ける、
火球がシルフィードの下を通り過ぎて行き消滅する、
再び地面に足をつけたシルフィードは止まる事なく走る、
次に来たのはシルフィードの前の地面から一本の氷槍が襲いかかる、
シルフィードは前へ飛び込むように飛び氷槍を避ける、
氷槍はシルフィードが避けた途端溶けるように消える、
そのように走り続けて残り5週になった途端、
(?)
幽霊さんは屋敷の窓に目を向けた、
そこにはシルフィードを狙う弓矢があった、
幽霊さんはあえて口にはせず警戒をした、
(シルフィ、
氷龍と虎炎が調子に乗り始めた、
ここからさっきより激しくなるぞ、
いいな?)
幽霊さんはシルフィードにより激しくなることを宣言して狙っている弓矢を修行の一つのように言う、
そう言わないとシルフィードが家族の一人に怪我をさせられると言う事実から遠ざけられないから、
シルフィードは幽霊さんの方を向いて笑顔で
「出来ます!やらせてください!」
そう言う、
その笑顔に幽霊さんも微笑む、
速度そのままにシルフィードはさらなる妨害に怯むこともなく走り続ける、
残り1週の最後の直線でその時がきた、
幽霊さんはこの直線で向こうが勝負してくると思っていた、
シルフィードを狙っていた弓矢がシルフィードの足が来ると思われる位置に放たれる、
シルフィードにそのことに気付かれない様に幽霊さんは氷龍に頼み矢が飛んでくる位置にシルフィードの身長の2倍程の分厚い氷の壁が現れた、
矢は氷の壁に当たり弾かれる、
シルフィードは矢にも気付かず氷の壁を壁走りで一気に駆け上る、
天辺まで登りそのまま前へ大きく飛ぶ、
もともと幽霊さんの修行の最後にこういった事をしているためシルフィードもいきなり高い壁が出てきてもシルフィードは驚かない、
その上シルフィードは高いところから見る景色が好きだからだ、
自分を産んでくれて、
育ててくれた街の景色や人々を高いところから見るのが好きなのだ、
決して人を見下すような目をしているのではなく純粋に街と人がシルフィードは好きなのだ、
幽霊さんはそんなシルフィードの思いを知って修行のご褒美のようにしている、
地面に降りたシルフィードは汗をかきながらも呼吸を荒げる事もなく笑顔で幽霊さんの方を向いて言う、
「師匠!ありがとうございます!」
幽霊さんはシルフィードに向けて拳を作りシルフィードに向けて親指を立てる、
(よく頑張ったな、
スピードも維持できているし妨害にも怯まず冷静に避けている、
終わった後の呼吸も特に上がっていない、
正直もう少し走って貰おうかと思ったな、)
幽霊さんはそう言う、
あの決意から7年、
幽霊さんはシルフィードを鍛えた、
初めはシルフィードに慣れてもらうためにシルフィードと遊んでいた、
子供と遊ぶのが好きな幽霊さんは直ぐにシルフィードが懐いてくれた、
シルフィードが立ち上がり言葉を発するようになると次は遊びながら単語を教えていった、
そうすれば直ぐに言葉を覚えていくからだと考えた、その頃からだろうか、
一番上の姉のカリンがシルフィードに悪意をぶつけてきた、
あの時の弓矢はカリンによる妨害であった、
それまでは特に何もしてこなく、
時々シルフィードが遊んでいたおもちゃを取り上げるくらいだった、
このように危ない事は今回が初めてだ、
4歳の時にシルフィードは走り込みと瞑想の両方を重点的に行った、
走り込みはシルフィードの体力をつけるため、
また、体力がつくと次はスピードを上げるために全速力で走り込みをさせる、
ただ、短距離選手と長距離選手では足の筋肉のつき方が違う、
そのため短距離選手が長距離、長距離選手が短距離を走ると走り方を間違えて良い走りが出来なくなる、
幽霊さんは基本的に体力をつけさせた、
だが、幽霊さんはシルフィードに拳による戦い方を教えるためスピードもつけさせなければいけない、
幽霊さんは破壊力のある拳で戦う、
しかし、幽霊さんは拳を大きく上げるため殴る前に少し隙ができる、
しかし、幽霊さんはシルフィードに自分の戦い方を教えないでシルフィードにあった戦い方を教えるつもりだ、
そのために体力とスピードの両方が必要である、
スピードと手数による戦い方、
幽霊さんはシルフィードをそのように育てるつもりだ、
シルフィードに幽霊さんのような破壊力のある拳を振るう事ができない、
自分とは正反対の育て方だができない事ではない、
瞑想は集中力を高めてくれる、
集中する事によって小さな物音や微かな臭い、
地面から伝わる微かな振動全てがわかる、
5歳からは格闘技の構え方を教える、
幽霊さんはこれに苦労した、
自分とは正反対の育て方のため自分の修行方では育たないのだ、
この世界の字は平仮名と漢字で構成されていたため幽霊さんは難なく文字を教える事ができた、
シルフィードに頼み屋敷の書物に入り本で武術の知識を取り入れようとするもこの世界には格闘技がないのだった、
剣術や槍術、斧術はあるのに何故か格闘技がない、
(格闘技から各武術が広がるものじゃないのか!、)
と幽霊さんはその時叫んでしまった、
参考書などなかったため考えに考えまくって今の修行方ができた、
6歳からは勉学も教えていった、
歴史は教えることはできないが漢字や計算法を教えることができる、
この世界では漢字より計算法が一番必要だった、
計算の出来ない人を騙して金を取る人や安いものを1割増やして売りつける輩もいる、
10歳までに独り立ちさせないとシルフィードは売られてしまうため計算法はかなりスパルタに教えてしまった、
教えられた本人は気にしてないが教えた幽霊さんは心の中で謝ってばかりだった、
今では割り算までできる様になった、
さすがにサイン、コサイン、タンジェントなどの特殊な計算法はこの世界では使わないと思い教えなかった、
ちなみにこの世界の通貨はジェムと言う、現代でりんご1つは100円だとするとこの世界では1つ100ジェム、
ついでに1ジェムは鉄、
10ジェムは銅、
100ジェムは銀、
1000ジェムは金、
10000ジェムは白金となっていてそれから上はない、
勉強以外にも対人用の戦闘術を教えた、ただ、
人を無力化するだけで殺さない戦い方を教えている、
まだ殺し方を教えてはいけない、
そう幽霊さんは思っている、
更にもう一つ、
幽霊さんは実験をしている、
それはシルフィードに憑依できるか、
幽霊さんがマンガや映画のように取り付く事ができるか試していた、
別に身体を乗っ取る訳ではない、
いざシルフィードが対応できない事があったら代わりに対処するためである(主に戦闘での事や対人での事)
その結果、
部分的な憑依、腕や足の憑依ができるようになった、
だが、幽霊さんの元の身体とシルフィードの小さな身体ではかなり違和感がある事がわかった(当たり前だが)
時折身体を借りてシルフィードの身体に慣れるようにしている、
走り込みを終えたシルフィードは水を飲み一息つく、
幽霊さんは次の修行のメニューを考えている、
(シルフィードは次に何がしたいですか?)
不意に氷龍がシルフィードにそうたずねる、
シルフィードは驚くことなく可愛らしく腕を組み考えて、
「次は打ち込みをしたいです、
師匠に私の構えと打ち込みを見てもらって直せるところを直したいです、」
構え方の修正を希望する、
赤子の頃から氷龍と虎炎が意志を持って話しているためシルフィードは驚かない、
ただ、このことや修行のことは家族には内緒にしているがカリンにはどこかでばれていた、
弟子の要望に応えない師匠はいない、
(わかった、
それじゃ氷龍の氷を出してもらおう、)
幽霊さんが言い終わると氷龍をシルフィードの目の前にシルフィードより少し大きめの氷の柱を出す、
(シルフィ、打ち込んでみろ、)
幽霊さんのその言葉を合図にシルフィードは打ち込みを始めた、
初めは人の体の部分で言う腹と鳩尾辺りをを重点的に打ち込み、
そのスピードは1秒に5発以上打ち込む、
その後反時計回りで右側に回転しながら氷の柱の背後に回る、
その際回転の勢いを利用して首筋にあたるところに左手の甲で裏拳を当てる、
直ぐに右手で殴ってから左足で膝裏にあたるところを蹴りつける、
その時、人ならばバランスを崩して地面に膝をつく、
そのことを想像しながらシルフィードは右足膝で首筋を蹴る、
人ならば倒れる、
氷の柱は横倒れした、
シルフィードは軽く跳びその際脚を曲げて氷の柱の上に落ちる、
人ならば背骨か肋骨が砕ける、
シルフィードは直ぐに氷の柱からどいて幽霊さんを見て言う、
「どうですか?」
幽霊さんは氷の柱を消すよう言うと少し考える素振りをして、
(そうだな、
まず一言、
構えてから打ち込んでくれ!
無の構えから行くのはいいがこれは構え方と打ち込みを見るためだろ?
無の構えは構えじゃないんだよ、
でも打ち込みは合格だ、
ただ、今のアレを人にすると間違いなくその人死ぬから人相手には別の方法を考えよう、)
無の構え、
自然体の型とも言う、
日常生活をしていると突然襲われた場合即座に対応できない場合がある、
無の構えは危機や危険が襲い掛かってきてもその危険に対して立ち向かい先制を取る、
襲われ傷を負ったらパニックになり適切な判断ができなきなる、
逆に自然体の状態で一度でも相手に拳を入れることができれば相手は混乱するかもしれない、
そう幽霊さんの師匠は言っていた、
(シルフィ、もう一度するか?)
幽霊さんはそう言うと氷龍は再び氷の柱を出す
「はい!」
シルフィードは返事をしてゆっくり構える、
「始め!」
幽霊さんの声にシルフィードは動き出す、
氷龍と虎炎はそんな2人の様子を微笑ましく思いながら見ていた。




