教育と言う名の・・・
シルフィードは地面に突き立てた斧を片手で軽々と抜き、
肩に担ぐ、
両刃斧、
シルフィードが担いでいる斧はその種類に入る、
「が、学園長、
シルフィード殿の雰囲気が変わったのですが・・・」
アレクはマクスウェルに尋ねる、
マクスウェルも変わった空気に息を飲む、
「さて、
行くぞ、」
シルフィードは斧を引きずりながらバーボルトに近づく、
その速さは重たい斧を持ちながらのはずなのに先ほどの戦いと変わらない速さで走ってくる、
シルフィードはある程度の距離に来ると斧をバーボルトに向かって横一閃する、
バーボルトは鈍い体に喝を入れて自分の斧で横一閃を防ぐが、
「ぐはっ!?」
あまりにも強い衝撃にバーボルトは壁まで吹き飛ぶ、
バーボルトが飛んで来る壁の周りの冒険者達が慌てて移動する、
壁に衝突したバーボルトは床に転がり呻く、
シルフィードは瞬間的にバーボルトの前まで移動して耳と尻尾を出して治癒魔法を唱える、
バーボルトは一気に傷が治っていく、
疲労も少しなくなる、
シルフィードは距離を離す、
冒険者達がどよめく、
目の前の少女に耳と尻尾が生えたからだ、
バーボルトはゆっくり立ち上がる、
「・・・どういうつもりだ?」
バーボルトはシルフィードを睨みつける、
「言ったはずだ、
教育すると、」
シルフィードはバーボルトに再び指を指す、
「斧の使い方がなってない、
なんだ、
あの力任せの使い方は?
あんな戦い方はトロイ敵にしろ!
こっちにしてみたらあんたの攻撃ひとつひとつが攻撃してくださいと言っているみたいだ!」
シルフィードが怒鳴る、
バーボルトは目が点になった、
「俺の戦い方がなってない?」
「そうだ、
今から教えてやる、
時間がないんでな、」
シルフィードは斧を構えてバーボルトに近づく、
バーボルトは咄嗟に斧を構えて攻撃に入ろうとしたが、
突然バーボルトの腹に衝撃が走る、
バーボルトは自分の腹に視線を向ける、
シルフィードの持っている斧の柄がバーボルトの腹部に当たっている、
更に柄を上へ上げてバーボルトの顎にあたりバーボルトはひるむ、
シルフィードは刃をバーボルトに向けて突く、
バーボルトは後方に下がり避ける、
シルフィードはバーボルトに近づき、
両手で斧を持ち斧の側面でバーボルトを思いっきり叩く、
バーボルトは斧で防ぐも少し吹き飛ぶ、
シルフィードはすぐに構え直して足を動かしてバーボルトの横腹に回転しながら柄を当てる、
防ぐことのできなかったバーボルトは脇腹を抑えてよろめく、
シルフィードは一度距離をとる、
「柄の長い斧は長い分斧を振るう速さは遅い、
あんたは柄の端を持つためそれがよく目立つ、
更に振るう前と後に隙ができる、
その間に攻め込まれるんだ、
柄の端を持つんじゃなくて柄の中央部分を持つんだ、
そうすることで多少動きが変わる、
また柄の中央部分を持つことにより柄で攻撃できる、
相手を怯ませることぐらいならできる、
後は刃の方だけじゃなくて側面も使え、
側面は防御だけじゃなく攻撃にも使える、
斧全体を使ってやれば色々と戦いが有利になる、
それに蹴りのひとつぐらい放てよ、
間合いに入られたら斧以外の何かで怯ませなきゃいけないんだ、」
シルフィードはそう言って走り出す、
バーボルトは防御の姿勢に入る、
シルフィードは走りながら斧を前方の地面に突き立てて跳ぶ、
棒高跳びのように跳びバーボルトに向かって蹴りを入れる、
斧で防いだバーボルトは少し後方に下がる、
シルフィードは斧を構え直してバーボルトに向かって走る、
バーボルトも斧を構え直してシルフィードを迎え撃つ、
シルフィードがバーボルトの間合いに入るとバーボルトが斧を横に振るう、
シルフィードは斧でそれを弾き柄の部分でバーボルトの脇腹とひざ裏と鳩尾の順に叩く、
バーボルトは体制を崩して床に倒れる、
シルフィードはその場で高く跳び斧を倒れたバーボルトに向かって振り下ろす、
バーボルトがやった技、
倒れているバーボルトは迫ってくる斧に目を瞑る、
そして、
大きな音が響いた、
バーボルトは何もないためゆっくりと目を開ける、
天井が見えた、
よく見ると氷のようなものも見える、
バーボルトはゆっくり視線を彷徨わせると左上に氷の斧が突き刺さっていた、
「あんたの大技は今のあんたのようになったらすればいい、
後は、
あんたがさっきの言葉を信じるか信じないかはあんた次第だ、
その時までそいつは突き刺しておく、」
シルフィードが足元側から話すと空気が元に戻った、
バーボルトが体を起こすと耳と尻尾の生えたシルフィードがいた、
シルフィードはバーボルトに近づいてしゃがみこむ、
「大丈夫ですか?」
バーボルトはあっけにとられる、
先程までとは違う少女らしい表情を見せるシルフィード、
バーボルトはどうすればいいかわからなくなっていた、
シルフィードはバーボルトに手を向けて治癒魔法を発動する、
バーボルトの傷と疲れが消えた、
「その・・・ごめんなさい、」
シルフィードが謝る、
バーボルトは混乱する、
先程までの少女とは違うからだ、
「あ、あぁ、」
バーボルトは頷くとシルフィードはニコリと笑顔になり、
「よかった、」
そう言うのだった、
(マスター、
あまり激しくしないでください、
あの男が死にますよ?)
(あれくらいがちょうどいい、
あれくらいしないとダメだろ?)
(教育という名のストレス発散に見えたで、)
(最近動いてなかったから動きたくなったの、)
遠くからそのような会話が聞こえたがシルフィードは聞こえてなかった、




