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40 様々な可能性が存在している

 聞き間違いの可能性もあるので、三つ目の目的についてもう一度聞いてみた。


「『天の怒りジャッジメント・サンダー』を放った者を捜しに来ました」


 水色の髪の女性は真剣な表情だ。つまり、冗談でもなんでもないということだ。となると、ジャッジメント・サンダーとは一体なんだ? ジャッジメント……サンダー……サンダ―……サンダ―? つまり、雷……あれ? なんか引っかかるな。こう、喉まで出かかっているのに出てこないというか……スッキリしない。


 だから、もう少し情報が欲しい。なので、「|ジャッジメント・サンダー《それ》」について聞いてみた。決して「ジャッジメント・サンダー」と言いたい訳ではない。本当だ。ポーズも取っていないし、頭の中で描いても……まあ、それはいいじゃないか。


 水色の髪の女性は「わかっている範囲ですが」と前置きをして、何が起こったのかを教えてくれた。


 ………………。

 ………………。

 それ、俺じゃね? 俺がこの世界で目覚めて魔法が使えることがわかり、どれくらいの魔法が使えるのかな? と試した時に、雨のように雷を降らせた魔法のことだよね?


 ということは……放った者を捜す理由は……損害賠償請求か? ……俺、金持っていないんだけど。


 いや、待て。水色の髪の女性はなんて言った? 確か、どっかの侵略者たちを倒して、フロンとかいう町を救った、ではなかったか? つまり、損害賠償請求ではなく、感謝状の方か? 金一封は出ますか?


 それならそれで、名乗るのも吝かではない。


 というか、もう隠そうとしても遅い。今更になった。顔や態度にでも出ていたのか、俺が「ジャッジメント・サ」……「JUDGEMENT THUNDER」について俺が何か知っていると、女性たちが気付いて確信していることに気付いたからである。


 水色の髪の女性から、話してくれますよね? という圧を感じる。


 まあ、圧を感じはしたが、そこまで気にならない。(ラオル)登場時の怒りを経験しているからだろうか。アレと比べたら……ちょっと……。さらっと流せるが……別に隠すようなことでもない気がする。というか、それで目の前の女性たちが襲ってくるような事態になったとしても、どうにかできそうな気がするからだ。


 なので――。


「あっ、それ、俺が前に放った魔法だな」


 と、なんでもないように口にした。


「………………少々お待ちください」


「え? あっ、はい」


 水色の髪の女性が待ったをかけてきたので了承すると、水色の髪の女性を含めて女性たちは俺に背を向けてこそこそ話し始めた。少しばかり距離があるし、小声なので普通は聞こえる訳がないのだが、何故か俺の耳はそれを拾う。内容は……疑い、かな。といっても、悪い意味ではないというか、いきなり当たりを引き当てたことが信じられない感じの戸惑いの方が強い。あとは真っ向から信じないではなく、信じる要素が欲しい感じである。


 まあ、どうなろうが知ったことではないというか、俺は真実を話したし、あとは女性たちが信じるかどうかだ。それよりも、俺は別のことが気になっていた。


 女性たちは全員騎士である。動きやすさ優先だろう。ズボンだ。森の中で人を捜していたのだから当然だ。スカートはさすがに不適切な恰好だろう。まあ、それはいい。俺が気になっているのはそれではない。気になっているのは、女性たちのズボンの尻部分である。


 ……下着のラインが透けてもいないし、浮いてもいない。


 いや、見たいとかそういうことではなくて……まあ、そりゃ、本音を言えば、見えたらエロいな、て思うけれど、そうではなく、もちろん、ズボンが厚いからという可能性もあるが、別の可能性もあると思ったからだ。


 ……Tバックの可能性が。


 ……いやいや、もしかして履いていないという可能性も。


 もちろん、答えはわからないのだが……ふっ。世の中、見ただけでは解明できない不思議に満ちているぜ。


 そう結論を出したところで女性たちがこちらに振り向きそうになったので、視線を上げる。大丈夫。バレていない……はずだ。最初から視線はここですよ~。


「申し訳ありません。失礼な話なのは重々承知なのですが、その言葉を信じるために何かしらの根拠が欲しいのです。たとえばですが、同じことができますか?」


 水色の髪の女性がそう尋ねてくる。……セーフ。俺の視線が下がっていたことに気付いてはいないようだ。他の女性たちも……多分大丈夫。おっと、ここで戸惑ってはいけない。自然体。自然体。えっと……なんだっけ? そうそう。前と同じ魔法を使えばいいんだっけ? 


 確か、前は詠唱して……しなくていいか。なくても放てる。それに、そもそもどんな詠唱したか憶えていないし、人前で詠唱するのは……ちょっと……ねえ。あとは、前回と同じ場所だと見づらいかもしれない。別の場所……森の中だと燃え広がる可能性がある。近くの大きな湖でいいか。


「まあ、アレくらいなら」


 そう答えながら、指をパチンと鳴らす。無詠唱で魔法を発動。近くの大きな湖の上空に黒雲が現われ、そこから雨のように雷が降り注いだ。


 少しの間降らせたあと、魔法を解除。黒雲を散らせて……これでいい? と女性たちを見る。


 女性たちは呆気に取られて固まっていた。近かったし、刺激が強かったのかもしれない。正気に戻るまで待つことにした。

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