39 それが事前にどこにあったかって重要だと思う
突然現れた女性たちと一定の距離を保ちつつ、声をかける。
「お待たせしました……えっと、それで、なんでしたっけ? いや、まだ用件を聞いていませんでしたよね? 確か、聞きたいことがあるとか?」
「………………」
「あの」
「え、あっ、はい。すみません。まさか、こんなところで人と出会えるとは思っておらず、戸惑っていました」
水色の髪の女性が慌ててそう答えた。別に気にしていないが、雰囲気的に、この水色の髪の女性が女性たちの代表者と思われる。水色の髪の女性たちは一度身だしなみを軽く整えたあと、水色の髪の女性がぴしっと背筋を伸ばして口を開く。
「失礼しました。私たちはセブナナン王国、第三騎士団の者です。鎧のここに紋章と、印章を持ち合わせていますので、確認して頂いて構いません」
……え? 今、なんて? セブナ……騎士団? もう一回お願いできる? と期待したのだが、水色の髪の女性は鎧の肩部分の片方に描かれている紋章と指し示したあと、胸元からドッグタグのような金属製の小さな板が付いた紐のネックレスを取り出し、金属製の小さな板を手に取る。水色の髪の女性の魔力がそれに流れるのを感じた。すると、水色の髪の女性はその金属製の小さな板付き紐のネックレスを俺に向けて放り投げてきたので受け取る。
これが先ほどまで水色の髪の女性の胸元……あるいは挟まれていた可能性も……ではなく、まずは確認だ。金属製の小さな板はドッグタグに見えるので、もうこれはドッグタグでいいだろう。そのドッグタグには鎧の肩にあるのと同じ紋章と、小さな文字で「セブナナン王国・第三騎士団所属 団長 マニカ・セブナナン」と書かれていた。
……あれ? 何故読める? いや、読めて不都合はないが不思議だ。記憶にあるのとは違う気がしないでもない。気のせいか? まあ、いいか。というか、これが証明になるのか? いや、待てよ。事前に魔力を流したのは、魔力を流すことで紋章と文字が表示されるようになっている、とか? それで本人の証明? あとは、俺が知らないだけで、この世界ではこれが証明になるのかもしれない。少なくとも、一切の信用はこれで保証される、という感じだろうか。
まあ、俺はここしか知らないので、こんなのを見せられても困るというか、もう見た目とか雰囲気とかで判断するしか………………ん? あれ? これ、よく見ると、国の名前と当人の苗字っぽいのが同じ、だね……ねえ。うん。念のため、もう一度確認したが、間違いない。ということは……この水色の髪の女性は……姫騎士? 王女騎士? それとも女王騎士? いや、第三ってことは第一、第二があるはずで、女王なんて立場にあれば普通は第一になるはずだ。なら、姫騎士でいいのか?
……どうしよう。俺の中の水色の髪の女性の魅力度がアップした。もう「姫騎士」て言葉だけでドキドキする。……ん? 姫騎士? つまり、姫? 跪いた方がいいだろうか?
膝をつこうとする前に、水色の髪の女性が声をかけてくる。
「確認して頂けましたか?」
「あ、はい」
普通に返事してしまった。水色の髪の女性が手のひらを見せたので、返して欲しいのだろうとドッグタグ付き紐のネックレスを投げ返す。水色の髪の女性は受け取り、胸元へと仕舞う。……まあ、今更だから膝をつくのはいいか。
「それで、聞きたいこととは?」
そのまま水色の髪の女性が尋ねてくる。
「はい。三つほどお聞きしたいことがあります」
「三つ?」
「はい。もちろん、答えたくないものに答える必要はありません。もちろん、それで私たちがどうこうということはありません。よろしいですか?」
「はあ。わかりました。それで聞きたいこととは?」
「まず、ここが竜の森の中のどの辺りに位置しているのか、教えてもらうことは可能ですか?」
………………。
………………。
竜の、森? ここの名称か? ……ああ、なるほど。ラオルの畑があるし、ここに向かって飛んでくる姿が見られているのなら、そう呼ばれてもおかしくないか。でも、問いの答えにはならない。俺が周囲を確認できたのは、ラオルの背に乗った時だけだ。まあ、ラオルならわかるだろうが。
「すまない。それは無理だ。俺も把握していない。森の中の奥深くというのはわかるが」
俺の答えに女性たちの一人が少し気を荒立たせて「ではどうやってこの森に来た」と口にしたところで、水色の髪の女性がそれを止めた。答えたくない、と捉えられたのかな。
「では、二つ目に聞きたいことですが、この付近に魔物の気配を感じることはできません。この場で少し休ませてもらうことはできますか?」
「ああ、まあ、それは別に構いません」
女性用下着を隠しておいて良かった。話を聞く前に隠した俺、ナイス。
「ありがとうございます。それと、三つ目は最も重要なことです。私たちがここに居る目的。それは、凡そ二か月前にこの森の近くにあるフロンの町を救った『天の怒り』を放った者を捜しに来ました」
………………え? は? ん? ジャッジ、メン……え? 何その、なんか恥ずかしくなる名称は……。ちょっと意味がわからず、何それ? と首を傾げた。




