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「連行しろ」


聞くのもバカらしいとアラン王子は剣を収めて、メリッサを取り押さえている騎士達に命じた。

両腕をそれぞれ騎士に抑えられてメリッサは恨めしそうにアラン王子を睨みつけながら教会から出て行った。

メリッサの姿が見えなくなると、エマーリエは息を大きく吐いた。


「こ、怖かった」


騎士と話しているアラン王子はどこも怪我をしている様子が無い。

エマーリエが視たアラン王子が怪我をする未来が無くなり安心する。


「メリッサさんは一体なにがしたかったのでしょうね」


オズワルドはマドリーヌの手を握ってエマーリエに問いかけた。


「さぁ・・・?」


エマーリエが首を傾げるとアラン王子が割って入ってきた。


「男好きの女だったということだろう。帰るぞ」


エマーリエの肩を抱いて歩き出したアラン王子にオズワルド達も慌てて付いてくる。


「帰るって、兄上!予定では明日ですが」


「予定変更だ。荷物は後からでも構わない。俺達だけでも先に帰ることにした」


後ろを付いてくるオズワルドとマドリーヌをちらりと見てアラン王子は宣言した。

メリッサの事もあり、騎士達が急いで周りを囲んで護衛をする。


「うぁぁ、僕の足が、ナイフが刺さっているんだ!」


アラン王子に肩を抱かれて教会から出る寸前にサンディーの泣き声が聞こえエマーリエは振り返る。

泣きながら足から血を出しているサンディーに人が集まっているのが見えた。


「サンディーも可愛そうに」


エマーリエが呟くと、アラン王子は鼻で笑った。


「知っていたと思うぞ。あの女は町で有名だったらしい。顔だけで町の有力者と結婚できたらしいな」


「アラン兄さまはナイフをわざとサンディーの足に刺さるように剣で弾きましたよね」


オズワルドの言葉にアラン王子は微かに唇の端をあげた。


「さぁな」


「うわっ、やっぱりわざとだ。でも、メリッサ嬢に斬りつけなくて良かった、アラン兄さまの評判がますます悪くなるところでした」


「評判がますます悪くなるって・・・」


エマーリエが呟くとオズワルドは頷いた。


「女性には冷たいし、雰囲気は怖いって言われているんですよ。それに加えて女性を斬ったらなんて言われるか」


「言わせたい奴には言わせておけ。さっさと帰る準備をしろ」


急いで馬車で館に帰り、必要なものだけを鞄に詰める。

ドレスは窮屈なので、動きやすい洋服へと着替え終わるとアラン王子がドアをノックした。


「準備はできたか」


「なんとかできました。ランドルさんに挨拶はしなくていいんですかね」


サンディーも含め、館の関係者は誰も帰ってきてはいない。

流石に挨拶もなしに帰るのは気が引けるエマーリエにアラン王子は眉間に皺を寄せた。


「しなくていい」


アラン王子がそう言うなら仕方ないとエマーリエは部屋を後にした。

廊下に出るとオズワルドとマドリーヌの部屋のドアは開いており荷物を運んでいるところだった。


「大変ですね」


「荷物は後から持ってこさせる、オズワルドたちすでに馬車に乗っている。急いでこんな館からはさっさと出るぞ」


「はい」


よっぽどメリッサの件が嫌だったのだろう、アラン王子はさっさと歩いて行ってしまうので慌ててついて行く。

館の外に出るとアラン王子が言った通りオズワルドとマドリーヌはすでに馬車に乗って待っていた。

マドリーヌが可愛らしく馬車の窓から手を振っているのでエマーリエも振り返す。


「可愛いですねぇ、マドリーヌさん」


手を振りながら言うエマーリエにアラン王子は興味がなさそうだ。

馬車に乗るエマーリエに手を貸して、自らも乗り込んでくる。

直ぐに馬車は動き出し、エマーリエは窓から外を見た。

ブロッグ家の屋敷からエマーリエ達の荷物の運び出しは終わっておらず侍女たちが馬車に積んでいるのが見える。


その後ろに巨体を揺らしながらランドルとサマンサ夫婦が走ってくるのが見えた。


エマーリエとアラン王子が乗っている馬車を追いかけるように手を伸ばして何かを叫んでいる姿を見てエマーリエは思わず身を乗り出して見ているとアラン王子が肩を押して席に戻した。


「必死に追いかけてきますよ」


「放っておけ」


「でもお父様がお世話になった人なんですよね、いいんですか?」


心配になる思うエマーリエにアラン王子は肩をすくめた。


「王家にナイフを向けるような女を嫁にしようとしたんだ。重罪だろう」


アラン王子が死んでしまうかもしれないという事だけを考えていたエマーリエはそこまで頭が回っていなかった。

確かに、王子にナイフを向けたとなれば大きな罪になり、下手したらお家取りつぶしだろう。


「俺に謝罪したところで状況は変わらない。判断するのは俺ではない」


「でも口は出しますよね」


エマーリエが言うと、アラン王子は微かに笑った。


「下手したら俺が死んでいたんだ、罪を軽くするなどしない」




馬車は町を出て森の中へと入った。

赤く色づく木々が馬車の窓から見える。

ガタガタと揺れる馬車に揺られながらエマーリエは前に座るアラン王子をじっくりと見つめた。


「なんだ?」


視線を感じてアラン王子もエマーリエを見つめる。


「怪我が無くてよかったです」


「素人に殺されるほどやわではない」


「でも、私が視た映像では死んでいましたよ」


エマーリエの言葉にアラン王子は視線を外した。


「事故みたいなものだろう」


「事故でも、凄い血を流して死んでいました。本当に心配しました」


首から血を流して倒れているアラン王子の姿を思い出して泣きそうな顔をするエマーリエにアラン王子は両手を広げた。


「なんですか?」


意味が分からないと首を傾げるエマーリエにアラン王子はいつもと変わりない無表情だ。


「俺が生きていることを確認したいかと思って」


「抱き着けって言うんですか?そんな恥ずかしことできるはずが無いじゃないですか」


顔を赤くするエマーリエにアラン王子は微笑して両手を降ろした。


「なんだ、つまらないな」


アラン王子に抱き着くチャンスだったのに。

少し後悔したエマーリエは息を吸い込んで決心して目の前に座っているアラン王子の胸に飛び込んだ。

勢いよく飛び込美込んできたエマーリエに驚いたもののアラン王子は両手で受け止めギュッと抱きしめた。


「本当に無事でよかった」


エマーリエも体温を感じようと腕に力を込めた。


「あっ」


指先に痺れが走り脳裏に映像が流れる。

あの感覚だ。

エマーリエはとっさに視える映像をよく見ようと目を瞑った。




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