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塵も積もれば山となるⅠ

「あれあれー?今回のダンジョン簡単じゃない?リタちゃーんっ」

ふざけた口調で男が言う。

男の発言とともに周りにいた他の4人の男女も笑いだす。

目の前にいる膝をついた女の子のことを笑う。

何も知らない人が見ればこれはイジメだ。

しかも小学生の中でのイジメみたいなものではない。大の大人5人が小さい女の子を(いじ)めているという見ていて耐えられるものではないものだ。だが…

「み、見てにゃさい!あんた達にゃんて次のダンジョンでにゃたんにゃたんにしてにゃるんだから!」

女の子は強気にそう発言する。

膝をついたまま、指を指して、目に涙を浮かべながら。

「にゃたんにゃたんってなんだよ」

「まっ、精々(せいぜい)頑張ってね〜」

女の子のことを明らかに馬鹿にしながらワープポイントへと足を踏み入れダンジョンの入口へとワープして消える。

消えたことを見た女の子は涙を拭く。

「しー!どこにいるの!出て来にゃさい!」

するとリタの真横に何も無かったはずの空間から突如として現れる。

「呼びましたか?」

現れたのは背中から大きな白い翼を右側片方だけに生やしたそれ以外は至って普通の女。

いや…少し胸がでかいかもしれない。あってDカップというところか。

「呼んだわよ!というか出てくる時におっぱいは揺らすんじゃにゃいにゃ!」

そう言うリタの胸はほぼ垂直、断崖絶壁、まな板である。

「すいません。それは無理です」

長い銀髪を指で払うとその振動でまたまた胸が揺れる。

「ムカつくにゃああああああ!それとその喋り方はにゃんにゃ!」

「この喋り方の方が忠誠を尽くしている感じがでて良いかなと思いまして…」

片膝をつくと目を閉じて頭を下げる。

「ムカついたにゃ!そんなしーはタコイカの刑にゃ!」

「えっ!待っ…」

いきなりしーと呼ばれた女がその場所から消えると大画面のモニターが表示されそこにしーとやらが映し出される。

「リタ待って!何でもするからタコイカだけは勘弁して!」

モニター越しでしーが叫んでいる。

「にゃんでもするのか?」

リタの言葉にしーが全力で頷く。

「だったら…タコイカの刑を大人しくくらえにゃ!」

その言葉でしーの四方八方からタコとイカが——普通のタコとイカではないが——大量に現れ、触手をしーに伸ばす。

白い翼で浮いていたしーは優雅に飛び回りながら光線で触手を焼き払っていたがやがて数に圧倒され足、手を拘束される。

モニターの向こうで起きていることを笑いながら見ているリタはふと思いつき言う。

「ユーリ!今すぐ大部屋へ来にゃさい!」

その声はダンジョン全体に響き渡り、ちょうどスライムの掃除をしていたユーリはその手を止めるとその場から消える。

すぐに大部屋へと移動したユーリの耳にしーの卑猥な声が聞こえてくる。

その声に気付きモニターを見て頬が赤らみそして徐々に笑みがこぼれる。

「あの…リタ?これは?」

黒髪ロングの女はその髪以外ほとんどがしーと同じ見た目だ。違うところは髪色と、そして翼が生えている側、そしてその色。

言うならばしーは天使、ユーリは堕天使と言ったところだ。

「ユーリ!よく見ておきにゃさい!私の前でおっぱい揺らしたり敬語使ったらこうにゃるにゃ!」

いつの間にか体に見合わない大きな椅子に座っている。

「ほんとリタって敬語使われるの嫌いだよね」

「敬語を使われたら気持ち悪いにゃ!あとこの喋り方を真似されたりしても怒るにゃ!これは生まれつきで自分から進んでしてる訳じゃにゃいにゃ!」

「ほんと、不思議なダンジョン創作者だよ。それよりリタ、これ、どう思う?」

そう言いながら胸を大きく強調させる。

強調させたそれは大きく上下に揺れる。

まな板のリタにはできない芸当だ。

「ユーリ!にゃにをしてるにゃあああ!ユーリもタコイカの刑にゃあ!!」

怒ったリタの言葉とともにユーリの姿が消えモニターにユーリの姿が映る。

「リタを馬鹿にしたお仕置きにゃ!」

次々と触手がユーリに向かうが華麗に躱しすぐさま触手に捕まったしーのもとへと行く。

そこでしーにくっつくとわざと自分から触手に捕まりに行く。

「あー捕まっちゃったーしー助けてー」

棒読みの発言をしながら息が荒いしーへと絡みつく。

「ちょっと…っ…ユーリ…なぁっ!に……してんのよ…」

「捕まっちゃったから助けてほしいのー」

ユーリの手がしーの胸や太ももに伸び撫で回す。

モニターに映る2人は1人は辱めを受けているが1人は確実に楽しんでいる。

「これじゃ罰ににゃらにゃいにゃあ!」

モニターが消え映っていた2人がリタの前に現れる。

白い粘り気のある粘液で体も服もベトベトになっている。

「今日はこれくらいで許しといてあげるにゃ!」

怒り気味に言うと床に何も描かれていない青い紙が現れる。

「次こそは冒険者を倒すダンジョンを作るにゃ!」

拳を握り意気揚々と作業に取り掛かろうとする。

「リタ…その前にお風呂に入ってくる」

「私も」

「早く入ってくるにゃああああああああ!」



「今回は一階層のダンジョンにしようと思うにゃ!にゃがさも短くたったの一部屋だけにゃ!そこにモンスターを一気ににゃがしこむにゃ!にゃづけて『数で押し切れにゃんにゃん作戦』にゃ!」

「いいんじゃない?」

「それくらいしか今はできないもんね」

お風呂上がりで髪が半乾きの2人は妙に色っぽい。

翼で浮いている2人は青い紙の上を漂いながら返事をする。

「んにゃ。それじゃ明日の朝にまたダンジョンの扉を開けるにゃ!次こそあいつらににゃきべそかかせてやるにゃああああ!」

その台詞とともに青い紙が光る。

2人の天使はそれぞれ指で青い紙に情報を書き込む。

書き終えると光っていた青い紙は形を変えていき1枚の石版になる。

「しー!後は頼んだにゃ!ユーリはモンスター統括としてみんにゃの士気を高めるにゃ!」

「はーい」「任しといて」

しーは石版を手に取るとその場から一瞬にして消えダンジョンの入口の扉へと石版をはめる。

すると石版に書かれた情報を元に1枚の紙が現れる。

その紙を取ると住宅地を抜け一際大きな光を放っている建物の前に降り立つ。

その建物の中に入ると次々と声をかけられる。

「おー詩慧瑠(しえる)ちゃん!今日も美人だねー!おじさん達の遊びに付き合ってよー」

「私より強くなったら遊んであげるよ」

「詩慧瑠ちゃんに勝つなんて無茶言わないでよー!」

「「「がっはっはっは!」」」

「詩慧瑠お姉ちゃん!今度また対戦しようよ!」

「今日帰って準備してくるから明日しようね」

「詩慧瑠ちゃん!もうダンジョンできたのかい?」

「うん。だからだから紙持ってきたよ」

「いつもありがとう!鎌倉の方じゃ自分達で取りに行ってるらしいから面倒くさいらしいんだ。だから助かるよ」

「いいよ。リタの命令だしね」

「リタっちは優しいよな!ほんと、奈良の創造者がリタっちで良かった良かった!」

「鎌倉の方はダンジョン側と攻略側がギスギスしてるらしいしな!」

「そうそう!だから本当に奈良で良かった!リタっち最高!!」

様々な男が次々に話すせいでどの発言がどの男の台詞かがわからない。

「じゃ私は帰るね。次のダンジョンも頑張ってねー」

「よっしゃああ!詩慧瑠ちゃんに応援されたからには頑張るぜぇ!なぁみんな!?」

「「「「おおおおおおおおおおお!!」」」」

建物からでて飛び立って去る時にも見送りが多く、詩慧瑠が本当に好かれていることが分かる。

夜空を飛ぶ詩慧瑠の翼からは光が漏れまるで流れ星から光が降り注ぐみたいだ。

ダンジョンの入口についた詩慧瑠はダンジョンへと入ると一瞬で消えリタのいる部屋に移動する。

「しーか。ちゃんと渡してきてくれたかにゃ?」

「渡したよ。リタっちは優しい、リタっちが創造者で良かった、だってさ」

「にゃっ!そんにゃの当たり前にゃ!上の者は下の者に優しさを与えるものにゃ!う、嬉しくにゃんてにゃいんだからにゃっ!もう明日にそにゃえて寝るにゃ!」

赤くなりながら焦る様子を見るに喜んでいる。

ぽてぽてと歩きながら大きな扉の方へと歩いていくリタを横目に見る。

1度ため息をつくと

「何か用?」

詩慧瑠の後方にユーリが姿を現すと縮こめていた翼を大きく開く。

「同じベッドで寝…えっ?」

一瞬のうちにユーリの翼に光の糸がまとわりつくとその場に力なく倒れる。

「そこに這い(つくば)ってる方がお似合いよ」

それだけ言うとリタが歩いていった方へ詩慧瑠も歩いていく。

大部屋には残されたユーリの嘆きだけが響いていた。



「よし!やるにゃあ!!今日こそ勝つにゃっ!」

意気揚々と腰に手をあててふんぞり返っているリタの姿はなんとも憎めないものである。

そこへ眠たそうな詩慧瑠が現れる。

「ふぁぁ〜リタおはよ」

欠伸をしながらリタによろよろと近づくとリタの猫耳に触れる。

「にゃにしてるにゃ?」

「猫耳触ってる〜」

どこか腑抜けた声で言うと耳から手を離す。

「私今日出掛けるのでそこのとこよろしくね〜」

よく見ると腰に小さなポーチをつけている。

「ど、どこに行くにゃ?」

「んー?子供達のところ。昨日ゲームするっていう約束したから。だから後はよろしく〜」

それだけ言うと詩慧瑠は姿を消す。

ダンジョンの出入口から出た詩慧瑠は少しリタのことを思いながら昨日行った場所へと飛び立った。


昨日と同じ位置に降り立つとドアを開ける。

建物の中は剣や斧、槍や盾などを装備した人で賑わっていた。

その中で1人、詩慧瑠に気付いた青年が

「詩慧瑠ちゃんじゃん!今日はどうしたの?」

その言葉で周りの人も詩慧瑠に気付く。

「子供達とねー。昨日ゲームする約束したから」

「あっ!詩慧瑠お姉ちゃん!こっちこっち!もう準備出来てるんだよ!」

3人の子供が奥の部屋から手を振っている。

「かーっ!子供の世話までできるなんてほんと詩慧瑠ちゃんは完璧だな!流石は俺の嫁さん候補だ」

「でもおじさんは詩慧瑠お姉ちゃんの恋愛対象になってないよね」

「それもそうだっ!」

建物内では笑い声がうるさい程に聞こえてくる。

それぞれが本当に幸せそうに笑う。それを見た詩慧瑠も少し笑うと奥の部屋へと入っていく。

「それじゃそろそろ俺らも出発すっか!」

「「「おぉーっ!!」」」



大部屋に1人取り残されたリタは攻略者を待っていた。

今回は勝てる。そう思い込んでいた。圧倒的な自信を胸に、今か今かと攻略者の到着を待つ。

その時、リタからの伝令が大部屋に響く。

「えーっと、しーから連絡あったよ。今出たってさ。後10分程度で到着予定だって」

「分かったにゃ。ユーリはみんにゃの士気を最高まで高めておくにゃ!」

「ほいよっさ了解!」

「にゃんにゃそのふざけた返事は…」

心配になりながらも椅子から腰を上げる。

悪者の様な笑みを浮かべると

「今日こそは勝ってやるにゃ!見ているにゃ攻略者!!」

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