地下室
ギルドの本部に到着すると、ギルドマスターは私を地下室へと導いた。重厚な鉄の扉の先には、薄暗く湿った空間が広がっていた。そこには、アトランティス文明の技術が凝縮された時間転移装置が、静かに佇んでいた。複雑な機械仕掛けが、まるで巨大な心臓のように脈打っているようにも見える。
「…これが…時間転移装置…」ギルドマスターの声は、抑えきれない驚きと畏怖を孕んでいた。
私は設計図と照らし合わせながら、装置を詳しく観察する。複雑な配線、光る水晶、そして中心部には、賢者の血を注ぐための容器が用意されていた。装置の周囲には、様々な魔法の結界が張られており、その複雑さに圧倒される。
「ミタム…準備は良いか?」ギルドマスターは、緊張した面持ちで問いかけてきた。
私は深呼吸をして、落ち着いて答える。「はい。準備は万端です。ただし…」
私は言葉を少し区切り、賢者の血が入ったガラス瓶を指さした。「この賢者の血…量が少ないため、時間転移の正確性や、転移先の時間軸の制御に影響が出かねません。短時間、かつ、ピンポイントな転移しかできない可能性が高いです。」
ギルドマスターは私の言葉を真剣に受け止めていた。「…それは…危険だ。図書館長と歴史家が、どこにいるか分からないのに、短時間の転移では、彼らを発見できない可能性が高い…もし、転移先で、何か予期せぬ事態が起こったら…?」
彼の不安は、もっともな懸念だった。時間転移は、非常に危険な行為だ。成功する保証など、どこにもない。しかし、私は迷わない。図書館長と歴史家を救うため、そしてアトランティス文明の謎を解き明かすため、このリスクを負う価値はあると信じていた。
「それでも、やります。図書館長の最後の映像から、彼らが捕らわれている可能性が高い場所を特定しました。時間転移装置で、その場所へ直接向かうのが最善策です。成功率は低いですが、他に方法はありません。」
私は、覚悟を決めたように、ギルドマスターの目を見据えた。彼の目には、私の決意と、彼の不安が入り混じって複雑な感情が渦巻いていた。
「…分かった。ミタム。私は、君を信じる。だが、もし…何かあったら…」
彼の言葉は、途中で途切れた。しかし、彼の気持ちは十分に伝わってきた。彼は、私の決断を支持しつつも、大きな不安を抱えている。
私は、ガラス瓶の賢者の血を時間転移装置の中心部に注ぎ込んだ。赤い液体が、装置内部の複雑な機構に吸い込まれていく。装置全体が、かすかな光を放ち始めた。
「…始めるぞ。」私の言葉と共に、時間転移装置は、起動を開始した。




