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蜜珠の禁書  作者: mutuminn
2部
94/360

賢者

賢者の血を手に入れた。ギルドマスターは、その輝きに息を呑んだ。「…これが、賢者の血…か…」


彼の言葉に、私も頷く。緑色の光が消え去った聖域は、静寂に包まれていた。マンドラゴラの王が消え去った跡には、小さな芽だけが静かに残されていた。その芽の傍らに、滴るように光る赤い液体が、まるで生命の鼓動のように脈打っていた。


慎重に、賢者の血を採取する。小さなガラス瓶に、一滴ずつ丁寧に注ぎ込んでいく。その作業中も、ギルドマスターは私を警戒するような目で見ている。信頼は回復したとは言え、彼の目は、まだ疑念を秘めているように感じる。


採取が終わると、ギルドマスターは口を開いた。「ミタム…これで、時間転移装置の起動に必要なものは全て揃ったわけだ…だが…本当にこれで良いのか?」


彼の言葉は、私の心に重くのしかかる。時間転移装置…アトランティス文明の遺物。その起動は、未知の危険を孕んでいる。図書館長と歴史家の失踪事件…それら全てが、この装置と深く関わっている可能性が高い。


私はガラス瓶に収められた賢者の血を眺めながら、ゆっくりと答える。「…そう思います。図書館長と歴史家を救うためには、この装置を使うしか方法がない。リスクは承知の上です。」


「…分かった。だが、気をつけろ。ミタム。この装置は、時間そのものを操る力を持つ。その力は、制御不能になる可能性だってある。」ギルドマスターは、真剣な表情で警告する。


彼の言葉に、私は改めて決意を固める。時間転移装置の設計図は、既に解読済みだ。複雑な機構だが、アトランティス文明の技術は、私の知識と経験を駆使すれば、解明できるだろう。


しかし、一つだけ不安が残る。この装置の起動に際して、何が起こるのか…全く予測できないのだ。時間軸の歪み?パラレルワールドへの転移?あるいは、想像を絶する危険が潜んでいる可能性もある。


それでも、私は躊躇しない。図書館長と歴史家を救い、アトランティス文明の謎を解き明かすため。そして、「創世の言葉」の全貌を解き明かすため。私の旅は、まだ終わらない。


私はギルドマスターに告げる。「準備が整いましたら、すぐに装置の起動を始めましょう。」


彼の視線は、私の決意を確かめるように、私の瞳に深く突き刺さってきた。そして、静かに頷いた。「…頼むぞ、ミタム。」


聖域から、私たちはゆっくりと下山を始める。時間転移装置は、ギルドの本部に隠された、秘密の地下室にある。その道中、ギルドマスターは沈黙を貫き、ただ私の行動を見守っている。彼の無言の重圧が、私の心に静かに響く。だが、私はその重圧に屈することなく、前へと歩みを進める。

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