満月
水面に顔を出した時、満月が水面に映り、幻想的な光景が広がっていた。深海の闇から抜け出した解放感と、手に入れた星影の鉄の重みに、安堵感と同時に新たな興奮が込み上げる。歴史家との約束を果たすべく、急いで地上へと戻る。
海岸に辿り着き、冷えた体を温めるため、近くの焚き火の近くで休む。まだ濡れた髪を振り払いながら、星影の鉄を手に取る。その表面は、深海で見た時の輝きを保ち、月の光を反射して美しく煌めいている。
「それにしても…あの深海生物は一体何だったのでしょうね…」と呟くと、背後から声が聞こえた。
振り返ると、そこに立っていたのは、見慣れない姿の女性だった。長い銀髪は風に靡き、深紅の瞳は鋭く輝いている。彼女の肌は、まるで月光のように白く、身にまとっている服は、深海の生物を思わせるような、複雑な模様が織り込まれている。
「あなたは…?」と問いかけると、彼女は静かに微笑んだ。
「私は、この海の守護者…と言っておきましょう」彼女はそう言って、ゆっくりと近づいてくる。「あなたは、深海の宝を手に入れたようですね。素晴らしい勇気です」
「海の守護者…ですか?」私は少し驚きを隠せない。「星影の鉄…それは、あなたにとって大切なものだったのでしょうか?」
「大切な…と言うよりは、必要不可欠なものです」彼女は答える。「この星影の鉄は、この海の、そして、この世界のバランスを保つために必要な力なのです。あなたは、その力を手に入れたことで、大きな責任を負うことになりますよ」
彼女の言葉に、私は背筋が凍る思いがした。星影の鉄は、単なる鉱石ではないのかもしれない。この世界の命運に関わる、重要な力なのかもしれない。
「責任…ですか?」
「そうです。この星影の鉄を使って作られる楽器は、世界樹の未来、そして、この世界の未来を左右するでしょう。その楽器を奏でる者は、世界を救う力も、滅ぼす力も持っています。あなたは、その力を受け入れる覚悟がありますか?」
彼女の言葉は、重く、そして、力強い。私は、この海の守護者と、これから長く関わることになるだろうことを予感している。この楽器の製作は、単なる作業ではなく、世界の運命をかけた壮大な戦いとなるだろう。
「…はい。私は、その責任を負います」私は、力強く答えた。星影の鉄の重みは、私の手のひらに、そして私の心に深く刻まれた。私の冒険は、新たな局面を迎えたのだ。




