七色の光
旋律は最高潮に達し、楽園の空には七色の光が渦巻いた。 私の竪琴からは、もはや人間の耳には届かない、宇宙の言語が奏でられているかのようだった。 水晶玉から放たれる不協和音は、私の旋律に押され、徐々に弱まっていき、影の姿も薄れ始めていた。 しかし、それは消滅ではなく、変容の始まりだった。
影は、曖昧な光の塊から、巨大な、しかし美しい翼を持つ鳥の姿へと変わり始めた。その羽は、宇宙の星雲のように輝き、瞳からは無数の銀河が覗いていた。 もはや冷徹な威圧感はなく、その存在からは、深い悲しみと絶望が感じられた。
「……私は…間違っていたのか…?」 影、いや、鳥の姿をした存在は、弱々しく、しかし力強く問いかけた。その声は、宇宙の広がりを思わせるような、深く響き渡るものであった。
私は、演奏を止めた。 竪琴から手を離し、その鳥を見つめた。 その姿は、かつてアトランティス文明が目指した理想郷、そしてその文明が滅びた原因、全てを象徴しているようだった。 それは、宇宙の法則に抗うことの悲劇、そしてその法則を受け入れることの苦悩を体現しているかのようだった。
図書館長と歴史家は、息を呑んでその光景を見つめていた。 図書館長は、杖をゆっくりと地面に置いた。 歴史家は、メモ帳を閉じ、私の顔を見た。彼の目には、理解と共感が宿っていた。
この鳥、かつてのアトランティス文明の影は、単なる敵ではなく、宇宙の法則と戦う、悲劇的な存在だったのだろうか。 私は、彼、いや、彼女を理解しなければならないと感じた。 宇宙の調和を乱すものと戦うのではなく、その原因、その悲しみを理解し、解決しなければならない。
沈黙が、楽園に広がる。 鳥の姿をした存在は、私の反応を待っているようだった。 その大きな瞳は、希望と絶望が入り混じった複雑な感情で満たされていた。 そして、私は、その鳥に問いかけようとしている自分に気づいた。 しかし、どんな言葉を選べばいいのか、まだ分からなかった。 静寂だけが、楽園に広がり、次の言葉が生まれるのを待っていた。




