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First story~始まりの冬~[3]

その夜。『仕事』のために訪れたルミネスハウスの前で、怜と冬は月下にそびえ立つ、その白く壮大な建物を見つめていた。


「今日の仕事は把握してる?」


後ろを振り向き、怜は先程からキョロキョロと辺りを見回す挙動不審な少年───冬に声をかける。


「あ、はい。えっと、雷吟さんに聞きました。」

「そう。」


冬の答えに素っ気なく答えてルミネスハウスに向き直り、冬に合図を送る。


「じゃあ、ミッションスタート。行って。」

「了解です。」


冬は一気に駆け出し、瞬く間に姿が見えなくなる。


「さて、僕も行こうかな…」


ボソリと呟きながら、ルミネスハウスに侵入し、大統領執務室に向かって走っていき、気づかれないように部屋の中へと入り、机の下に隠れる。


「そっちはどう?冬。」

『はい、ルミネスハウス裏の森は特に問題はありません。伏兵は居ないようです。』

「わかった。引き続きお願い。」

『了解です。』


トランシーバーを使って小声で連絡を取りながら、怜はそっと大統領の様子を見る。


「いやぁ、ははは。民の為なんて、とんでもない。人間は皆自分のために動くものですよ。」


大統領は、窓の外を眺めながら何者かと電話をしていて怜の存在には気付かない。


「では、また。」


電話を切り、大統領は音を立てて椅子に座った。


(そろそろか……)


怜は机の下から飛び出し机の上に飛び乗って、大統領にナイフを突きつける。


「Good evening,Bad president. 」


驚き、表情が固まる大統領を見てニヤリと笑い、怜は英語を使って挨拶をする。


「な・・・何者だ!」

「おっと。人を呼ぼうとしてるなら、悪いけど僕が殺しに来たのはあんたじゃない。」

「何・・・? 」

「僕が殺しに来たのは・・・こいつだよ。」


天井に僅かに空いた隙間に向かってナイフを投擲する。すると天井の上から苦しげな声が聞こえ、黒づくめの大男が落ちて来て、右肩を抑えながら怜を憎ましげに睨みつける。

どうやらナイフは右肩に当たったようだ。


「そ、そいつは?」


落下してきた男に驚き、怜の後ろに隠れた大統領が恐る恐る問いかけ、怜はその様子を見て大統領から離れる。



「あんたを殺しに来たバカな殺し屋だよ。そうでしょ?侵入者さん?」

「くっ・・・」


男は怪我をした右肩を庇うようにしてなんとか立ち上がり、窓から飛び出し逃げていく。


「あ、逃げた。」

「お、おい!追わなくて良いのか!」

「あー、もう。うるさいなぁ。今から追いかけるよ。See you, bad president. 」


大統領に命令され、少し面倒くさそうな表情をしながら立ち上がり、男を追うため窓から部屋を出て男が逃げたであろう森へと向かう。


「・・・そうだ。早く終わらせて雷吟の夕飯を作らなきゃ・・・・・」


我が家で自分の帰りを待つ養父のことを考えてはポツリとつぶやき、近くにいるはずの冬を探す。


「怜さん!」


森の方から怜を呼ぶ声が聞こえ、振り向くと、木の影から冬が現れる。


「冬。アイツは?」

「森に逃げました。」

「・・・そう。じゃあ、行くよ。」

「はい。」


冬と合流した怜は、再び二手に分かれて男を追う。


『怜さん、この先です。男の気配があります』

「わかった。」


トランシーバーで連絡を取り、一気に走る速度をあげ、森を突き抜ける。


「っ!?なっ、崖・・・?」

『どうしました?怜さん。』


冬がトランシーバー越しに不安げに聞いてくる。


「大丈夫だ。森を抜けた先が崖だっただけだ。」

『・・・・・・』

「おそらく男は、この下だ。崖だと知らずに森を突っ切って落ちてしまったんだろう。」

『・・・・・・』

「冬?どうしたんだ?」

「・・・・・そんなわけないでしょう?」


不意に冬の声が近くで聞こえる。


「え・・・?」


ドンっ───


突然視界が揺れ、崖下が視界に入る。


(なん・・・・?)

「ごめんね、怜さん。俺、そこまであんたのこと嫌いじゃなかったよ。」


後ろを振り向くと、冬が嗤っていた。


「な・・・んで・・・・・?」

「じゃ、さようなら。ⅹⅹⅹ。」

(なんで・・・どうして・・・冬が・・・・・雷吟っ!助け──────)


怜はスローモーションのように遠ざかっていく冬の表情を見つめながら、遠い崖の下へと落ちて行った。


「・・・・・大丈夫。雷吟さんにはちゃんと、事故で死んだって伝えておくから。安心しなよ。」


そして冬は、冷たい眼差しで崖下を見つめながら呟いて、その場をあとにした。

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