7.ギャップが凄い大家さん 1
結局、昼飯は白米と味噌汁だけで済ませた。
なんかこう、ツラいものがあった。
さて、どうしようか。
家にいてもやる事がないし、外出.….またさっきの女子高生に会う可能性がある、やめておこう。
あ〜…..暇だ、どうしよう、マジでどうしよう。
と、考えていると、
「ピーンポーン」
チャイム、ではなくそれを似せた声が玄関先から聞こえた。
この声は…..
ドアを開けると、そこには一人の幼女…..もとい、女性が立っていた。
「…..相変わらずチャイムのマネが得意ですね、コーコさん」
「まぁ、百ある特技の一つだけどね、後、さっき失礼な事考えてなかった?」
「ソンナコトナイデスヨ」
「….まぁいいわ」
この人の名前は真田 康子、俺の叔母であり、俺の住んでいる”たるさき荘”の大家さんである。どうにもこの人には頭が上がらない。
見た目は小学四年生位なのに、声は年相応の声だから、俺はもうなれたが、最初は違和感が消えなかった。
あ、言い忘れていたが、俺は一人暮らしである。
面倒くさがり屋の俺が一人暮らしをしている理由は時が来たら話そう。
閑話休題、
「で、何の用ですか?」
「あ、そうそう、洗濯物干すの手伝って」
「またですか…..」
この人、本当に人使いが荒いな。
「しょうがないじゃない、この身長だと時間がかかるのよ。それに、私は別に人使い荒くない」
「心を読まないで下さい…..わかりました、手伝います」
「あら、今回は諦めがいいじゃない」
「反論するのもメンドいんで」
この前、三十分位口論したもんな、負けたけど。
メンドい、このワードを聞くと決まってコーコさんはクスッと笑う。
「そういう性格、本当にお祖父ちゃんにそっくりね」
「コーコさんが言うお祖父ちゃんって、俺のひいお祖父さん?」
「えぇ、本当にそっくり」
あぁ、俺はひいお祖父さん似なのか、どうりで両親どころか、両祖父母にも似なかったのか。
「さて、与太話もこれくらいにして、さっさと干しちゃいましょう」
「はい」
―数分後―
「ありがと、手伝ってくれて」
「いえいえ」
「はい、これお礼」
そういって渡されたのは、スーパーのレジ袋だった。
「なんですか、コレ」
「中を見ればわかるわ」
中を見てみると、そこには俺がスーパーで買ったはいいが台無しにしてしまった卵等が入っていた。
「えっ、コーコさんコレ…..!」
「なんかボロボロなレジ袋があったから中を見てみたら、グシャグシャな卵とか野菜とかが入ってたから、洗濯物干している間に買ってきたのよ、多分リョー君がやっちゃったんじゃないかなぁと思ってね」
女神だ、女神がいる…..!
「ありがとうございますっ!!」
「ちょっ、そんな深々と頭下げないでよっ、良いのよ、日頃からお世話になってるし、それに、何か理由があったんでしょ?」
「うっ…………」
相変わらず鋭いな、この人。
「その反応だと、本当に何かあったみたいね、聞かせてくれる?酒の肴にするから」
「昼から飲むんですか…..」
「いいのよ、今日の分の仕事はもう終わってるし」
マジっすか、そういえば、洗濯物干してる途中、いつの間にか居なくなってたし、もしかしてその時に卵とか買ってきたのか、コーコさんマジパネェっす。
「じゃ、私の部屋にきなさい」
「わかりました…..」
俺は苦笑いをしながら思った。
全く、本当にこの人には頭が上がらないな、 と。